日経平均株価は、2万1000円を挟んで“こう着感”の強い相場展開が続いています。米中貿易摩擦の長期化が警戒される中、来週末に迫ったG20大阪サミット(主要20カ国・地域首脳会議)における米中首脳会談の行方を見極めたいという模様眺めムードが強いようです。
また、米連邦公開市場委員会(FOMC)が6月18日、19日に行われており、FOMC後に公開される声明文とパウエルFRB議長の記者会見に市場の関心が集まっています。
こういった市場環境の中では、国内外の機関投資家などの積極的な売買は期待しづらく、薄商いの中でのリバランスが取引の中心になります。しかし、上にも下にも動きづらい相場であっても、個別に見ると売買が盛んな銘柄も少なくありません。個別で材料のある銘柄には、個人投資家主体の資金が集中する動きが見られます。
来週は、昨年12月25日の急落から6カ月が経過するので、
売り方の買い戻しが一斉に出てくる可能性が高い
こういった相場環境の中、今回は信用取引の「期日」に着目しました。
信用取引は、大きく分けて、証券取引所が制度を定めている「制度信用取引」と証券会社が独自に制度を定めている「一般信用取引」の2種類がありますが、通常、信用取引というと制度信用取引のほうが一般的です。一般信用取引については、決済期限が無期限のものもありますが、制度信用取引の場合、決済期限は6カ月となります。
以前の記事でも書きましたが、来週、多くの銘柄が安値をつけた昨年12月25日から6カ月が経過します。
株が安値をつけると、さらなる下落を予想した投資家による「信用売り」が積み上がりやすくなりますが、その後に株価が持ち直すと、それらの「信用売り」は買い戻しのタイミングを失って“塩漬け状態”のまま持ち続けられます。そうして大量に残った「信用売り」は、6カ月の信用期限を目前にして、一気に処分(買い戻し)されることが予想できます。
この売り方の買い戻しによって期待できるのが、株価の「踏み上げ」です。「踏み上げ」というのは、信用取引の売り方が損失覚悟で買い戻すことで株価が上がることを言います。また、売り方の買い戻しにともなう上昇だけでなく、「踏み上げ」を狙った新規の買いも参入することで、さらに株価は押し上げられます。
特に昨年12月25日前後の急落は強烈でしたので、その決済期限を迎えるのは心理的なインパクトが大きいでしょう。
つまり、12月25日の安値から6カ月が経過する来週に向けて、「踏み上げ」で株価が上昇する銘柄が出てくることが期待できます。そこで今回は、売り方の買い戻しで「踏み上げ」が起こりそうな銘柄をスクリーニングによって抽出してみました。
信用売り残高の想定金額や信用倍率の推移、株価推移など、
6つの条件で銘柄をスクリーニング!
銘柄の選定条件は、以下のように設定しました。
(1)信用売り残高の想定金額(売り残高×6月14日終値)が1億円以上
(2)信用倍率が前週比で低下
(3)信用倍率1倍以下(信用売り残が信用買い残より多い)
(4)25日移動平均線を上回っている(プラス乖離)
(5)13週移動平均線を上回っている(プラス乖離)
(6)昨年12月末終値を10%以上上回っている
まず、(1)信用売り残高の想定金額が1億円以上(売り残高×6月14日終値)については、基本的に信用売り残高が多い銘柄を選ぶためですが、信用売り残高が多くても金額が小さいとインパクトが限られると考え、「想定金額が1億円以上」という条件にしました。この条件により、銘柄数は1000銘柄程度に絞られました。
(2)信用倍率が前週比で低下については、信用買い残の整理が進む一方で信用売り残の整理が進んでいない銘柄を選ぶためで、前の週と比べて信用倍率が低下している銘柄としました。これによって、680銘柄程度に絞られました。
(3)信用倍率1倍以下(信用売り残が信用買い残より多い)についてですが、売り買いが拮抗している銘柄も悪くはありませんが、今回はより売り方の買い戻しが強くなる1倍以下にしました。これにより、350銘柄程度に絞られました。
(4)25日移動平均線を上回っている(プラス乖離)と(5)13週移動平均線を上回っている(プラス乖離)、(6)12月月末終値を10%以上上回っているの3つは、現在の株価の状態を判別するための条件です。(4)で95銘柄、(5)で85銘柄、(6)で29銘柄まで絞られました。
(4)25日移動平均線と(5)13週移動平均線は、株価がそれぞれの線の上に抜けていないと上値抵抗線として意識されやすいため、両線を突破していること(乖離率がプラス)を条件にしました。
(6)で「12月25日終値」ではなく「12月末日」を基準にしたのは、昨年12月半ば辺りから、株価が出来高をともなって急落した後、大納会に向けて若干のリバウンドをみせたため、この間にも残高が積み上がっていると想定したためです。安値圏から10%以上上昇している銘柄であれば、順調なリバウンド基調であり、売り方も買い戻しを迫られると考えました。
「順調なリバウンド基調であること」を条件に入れたのは、信用売りの買い戻しが起きても、株価が横ばいならば「踏み上げ」が起こらないからです。実際、信用売りの期日が迫っていても、買い戻しと同時に新規売りを出す形でのクロス取引をすれば、実質的に期日が6カ月延長できます。
しかし、上昇トレンドにある銘柄の場合、過熱感や割高感が意識されて新規の信用売りが積み上がりやすいのですが、それでも上昇することで損失覚悟の買い戻しを余儀なくされ、結果として「踏み上げ」が起こりやすくなります。
これらの条件でスクリーニングした結果、残ったのが以下の29銘柄です。
■不安定な相場環境により“割安”になった成長銘柄(2019年6月18日時点) |
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銘柄名(コード) |
信用倍率 (倍) |
25日線 乖離率(%) |
13週線 乖離率 (%) |
12月末 終値からの上昇率(%) |
最新株価 |
バリューHR(6078) | 0.93 | 9.85 | 22.90 | 106.37 | |
インフォマート(2492) | 0.92 | 13.19 | 18.35 | 85.37 | |
丸和運輸機関(9090) | 0.43 | 17.52 | 20.48 | 82.85 | |
ユーグレナ(2931) | 0.44 | 12.99 | 21.84 | 65.92 | |
マニー(7730) | 0.56 | 0.01 | 5.48 | 61.67 | |
エラン(6099) | 0.52 | 6.81 | 12.77 | 48.03 | |
日新電機(6641) | 0.62 | 4.04 | 7.30 | 42.09 | |
ぴあ(4337) | 0.18 | 2.09 | 4.53 | 28.75 | |
ソニーフィナンシャルホールディングス(8729) | 0.31 | 7.33 | 11.83 | 26.81 | |
新生銀行(8303) | 0.63 | 4.16 | 5.01 | 26.43 | |
銘柄名(コード) |
信用倍率 (倍) |
25日線 乖離率(%) |
13週線 乖離率 (%) |
12月末終値 からの上昇率 (%) |
最新株価 |
富士フイルムホールディングス(4901) | 0.97 | 1.75 | 2.79 | 26.08 | |
ホットランド(3196) | 0.55 | 0.63 | 0.90 | 25.83 | |
エフ・ジェー・ネクスト(8935) | 0.45 | 12.81 | 16.27 | 25.58 | |
インフォコム(4348) | 0.71 | 9.33 | 19.93 | 25.55 | |
東宝(9602) | 0.24 | 3.30 | 6.83 | 22.48 | |
キヤノンマーケティングジャパン(8060) | 0.14 | 2.78 | 4.84 | 22.24 | |
クリエイト・レストランツ・ホールディングス(3387) | 0.36 | 0.77 | 3.76 | 20.97 | |
ディー・エヌ・エー(2432) | 0.92 | 1.78 | 14.61 | 19.46 | |
丸善CHIホールディングス(3159) | 0.19 | 1.07 | 2.00 | 17.08 | |
野村不動産ホールディングス(3231) | 0.71 | 2.97 | 5.27 | 16.52 | |
銘柄名(コード) |
信用倍率 (倍) |
25日線 乖離率(%) |
13週線 乖離率 (%) |
12月末終値 からの上昇率(%) |
最新株価 |
東映(9605) | 0.27 | 2.58 | 2.19 | 16.12 | |
グンゼ(3002) | 0.22 | 2.48 | 2.62 | 15.64 | |
イビデン(4062) | 0.60 | 1.21 | 0.31 | 15.05 | |
ヨンドシーホールディングス(8008) | 0.51 | 2.10 | 5.92 | 15.03 | |
富士通ゼネラル(6755) | 0.48 | 6.35 | 4.34 | 14.41 | |
すかいらーくホールディングス(3197) | 0.09 | 0.71 | 3.87 | 12.91 | |
大垣共立銀行(8361) | 0.18 | 1.64 | 1.95 | 12.74 | |
東京応化工業(4186) | 0.29 | 3.88 | 0.67 | 12.59 | |
ムゲンエステート(3299) | 0.62 | 3.22 | 0.58 | 11.06 |
買い残・売り残は日々変化していくので、
信用倍率が上昇してきたら利益確定か撤退を
ただし、信用取引の新規売買や反対売買は常に行われています。スクリーニングに利用した信用残高のデータは約1週間前のものなので、直近の売買によってすでに需給状況が大きく変化している、あるいはこれから大きく変化することも十分にありえます。
スクリーニングでは、「信用倍率が1倍割れ」かつ「信用倍率が前週からさらに低下」という条件を入れましたが、もし株価上昇が続く中で買い残増加・売り残減少といった形で信用倍率が上昇してきたら、目先のピークが近いシグナルです。売り方による買い戻しの効果が薄れ、反対に将来的な売り圧力が膨らむことが意識されるので、こういった傾向が見られたら、いったん利益確定、もしくは撤退をしましょう。
なお、個別銘柄の信用残高は、「信用取引推移 ○○○○(※銘柄名)」などのキーワードでネット検索すれば確認できます。実際の売買の前には、自分の手でもきちんと最新データをチェックするようにしてください。
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