2019年8月12日、介護施設において人手不足や職員の高齢化が深刻な課題となっているのを受け、厚生労働省が「介護支援ロボット」を公的保険制度の適用対象とするための検討に入ると報じられました。そこで今回は、「介護ロボット」関連銘柄を取り上げます。
2015年には24.4億円だった「介護ロボット」の市場規模を、
2020年までに500億円まで成長させる方針
現在、ロボットの導入により介護報酬が加算されるのは、「見守りセンサー」を導入する特別養護老人ホームなど一部に限られています。そこで厚生労働省は、2020年度に「パワーアシストスーツ」などの介護ロボットの効果を見極め、2021年度の介護報酬改定で適用対象に加えるかどうかを判断する、とのことです。
なお政府は、昨年2月、約5年ぶりにまとめた新たな「高齢社会対策大綱」を閣議決定し、今後の関連施策の指針にすることを決めました。「高齢社会対策大綱」では、2015年の時点で24.4億円だった「介護ロボット」の市場規模を、2020年までに約500億円まで大幅に成長させる目標を打ち出しています。安倍首相も、「技術革新の成果が可能にする新しい高齢社会対策を志向する」と宣言しています。
厚生労働省によると、「ロボット」とは、
1)情報を感知(センサー系)
2)判断し(知能・制御系)
3)動作する(駆動系)
という3つの要素技術を有する知能化した機械システムのことです。そして、このロボット技術が応用され、利用者の自立支援や介護者の負担の軽減に役立つ介護機器を「介護ロボット」と定義しています。
厚生労働省は、経済産業省とともに、以下のように「ロボット技術の介護利用における重点分野」を6分野13項目定め、その開発・導入を支援しています。
(1)移乗介助
○ロボット技術を用いて介助者のパワーアシストを行う装着型の機器
○ロボット技術を用いて介助者による抱え上げ動作のパワーアシストを行う非装着型の機器
(2)移動支援
○高齢者等の外出をサポートし、荷物等を安全に運搬できるロボット技術を用いた歩行支援機器
○高齢者等の屋内移動や立ち座りをサポートし、特にトイレへの往復やトイレ内での姿勢保持を支援するロボット技術を用いた歩行支援機器
○高齢者等の外出等をサポートし、転倒予防や歩行等を補助するロボット技術を用いた装着型の移動支援機器
(3)排泄支援
○排泄物の処理にロボット技術を用いた設置位置の調整可能なトイレ
○ロボット技術を用いて排泄を予測し、的確なタイミングでトイレへ誘導する機器
○ロボット技術を用いてトイレ内での下衣の着脱等の排泄の一連の動作を支援する機器
(4)見守り・コミュニケーション
○介護施設において使用する、センサーや外部通信機能を備えたロボット技術を用いた機器のプラットフォーム
○在宅介護において使用する、転倒検知センサーや外部通信機能を備えたロボット技術を用いた機器のプラットフォーム
○高齢者等とのコミュニケーションにロボット技術を用いた生活支援機器
(5)入浴支援
○ロボット技術を用いて浴槽に出入りする際の一連の動作を支援する機器
(6)介護業務支援
○ロボット技術を用いて、見守り、移動支援、排泄支援をはじめとする介護業務に伴う情報を収集・蓄積し、それを基に、高齢者等の必要な支援に活用することを可能とする機器
厚生労働省「ロボット技術の介護利用における重点分野」より
ひと口に「介護ロボット」といっても、上記のように幅広い分野での活躍が期待されているのです。
「福祉用具・介護ロボット実用化支援事業」に関わる企業から、
今後成長が期待できる「介護ロボット」関連銘柄を発掘!
今回は、「介護ロボット」の関連銘柄を発掘するにあたり、厚生労働省が公益財団法人テクノエイド協会に委託した「福祉用具・介護ロボット実用化支援事業」の一環としてまとめられた以下のレポートに注目しました。これらのレポートには、介護ロボット普及モデル事業や介護ロボット試用貸出事業の状況が掲載されています。
・「福祉用具・介護ロボットの開発と普及 2018」厚生労働省
・「介護ロボット導入活用事例集 2018」厚生労働省
上記の調査や事例集を見ると、数多くの企業が「介護ロボット」関連銘柄として挙げられています。以下に、その一部を抜粋してみました。
■「福祉用具・介護ロボット実用化支援事業」に関わる主な関連銘柄 | ||
銘柄名(コード) | 関連事業 | 最新株価 |
フランスベッドホールディングス(7840) | 見守りベッドとナースコールのデータ連携システム | |
TOTO(5332) | 排泄支援ロボットの普及に向けたベッドサイド水洗トイレ | |
パラマウントベッドホールディングス(7817) | 排泄モニタリングシステム Helppad(ヘルプパッド)、見守り支援ベッド「エスパシアシリーズ(ベッドナビ搭載)」 | |
凸版印刷(7911) | 非接触型センサーを用いた介護見守りシステム | |
NISSHA(7915) | 見守りシステム「ケアワン」 | |
パナソニック(6752) | データ分析型ケアマネジメント支援ツール「みまもり安心サービス」 | |
NTTデータ(9613) | 介護施設向け見守りロボットサービス「エルミーゴ」 | |
リコー(7752) | みまもりベッドセンサーシステム |
掲載されている上記以外の上場企業の中から、「介護ロボット」関連の中核的な企業と、意外と知られていない企業を5つ、今週の注目銘柄としてピックアップしました。
【CYBERDYNE(7779)】
ロボットスーツにより、介護職員の業務効率が向上
CYBERDYNE(7779)は、筑波大学の教授・山海嘉之さんが設立したロボットスーツ開発ベンチャーです。
CYBERDYNEの開発する「HAL(R)腰タイプ 介護・自立支援用」は、介護支援用途では、職員の介護動作における腰部の筋肉、椎間板にかかる負荷を低減し、腰痛による離職対策に役立っています。また、自立支援用途では、体幹動作や立ち座りなどの簡単な基本動作を繰り返し行って介護される人の自立を促進することで、介助者の負担を低減することができます。
株価は7月以降、調整が続き、6月の安値水準まで下がっていましたが、ボトム形成からのリバウンドの兆しがみえています。
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【幸和製作所(7807)】
歩行車「リトルキーパスS」が、坂道の登り降りをサポート
幸和製作所(7807)は、「テイコブ」ブランドを展開する福祉用具メーカーです。
幸和製作所の開発する歩行車「リトルキーパスS」は、センサーを活用し、坂道での登り降りをサポートする器具です。角速度センサーと駆動ユニットで、上り坂はアシスト、下り坂は自動でブレーキをかけることが可能。また、静電センサーにより利用者がハンドルに触れているときのみ作動するため、坂道でふとした拍子にハンドルから手を話すと自動的に停止するので安全です。
株価は2000円が上値抵抗線となる格好で、現在、調整をみせていますが、3月につけた安値の1000円近辺が押し目拾いのポイントになりそうです。
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【プラッツ(7813)】
AI搭載見守りセンサーを手掛ける
プラッツ(7813)は、介護用電動ベッドの専業メーカーで、AI搭載見守りセンサーを手掛けています。
主な機能としては、音声でベッドのリクライニングを操作し、マットレスに内蔵したセンサーにより心拍数、呼吸数、背圧などの各種データの計測が可能。また、自動で睡眠の分析や異常時の通報を行うことができます。そのほか、在宅時のトイレの使用、キッチンの水使用量や冷蔵庫のドアの開閉といった日常生活情報を収集し、別居の家族に知らせることも可能です。
株価は低迷が続いていましたが、今期業績見通しが好材料視され、先週末からストップ高を交えて急騰しています。
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【テクノスジャパン(3666)】
見守り介護ロボット「ケアロボ」を手掛ける
テクノスジャパン(3666)は、ERP(基幹業務システム)の導入支援やビッグデータ事業に注力する独立系のICTシステムサービス企業です。
介護事業としては、見守り介護ロボット「ケアロボ」を手掛けています。「ケアロボ」は、各種徘徊・離床センサー、呼出スイッチ、見守センサーなど、高齢者の見守りに必要な機器の作動信号を受信すると、適切な声がけをするとともに、携帯電話で介護者へ通報します。
株価は、年初来安値圏での推移をみせていますが、500円割れ目前でリバウンドの動きをみせています。
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【東亞合成(4045)】
子会社のアロン化成が、介護用品「安寿」を手掛ける
東亞合成(4045)は、瞬間接着剤「アロンアルフア」で有名な化学メーカーで、その他にも光硬化型樹脂「アロニックス」、無機系消臭剤「ケスモン」などの高付加価値製品をはじめ、カセイソーダ、アクリルモノマー、塩化ビニル製管工機材などを手掛けています。
介護事業としては、子会社のアロン化成が介護用品「安寿」を手掛けており、その中で、家庭用電源で動かせる介護ロボット(排泄支援)水洗ポータブルトイレ「キューレット」を販売しています。
東亞合成の株価は、8月上旬に989円まで調整する局面もみられましたが、足元ではややリバウンドの動きをみせてきており、4ケタの株価を回復してきました。ここからのさらなる上昇に期待したいところです。
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厚生労働省では、開発前の着想段階から開発企業と介護現場が「介護ロボット」の方向性について協議するなど、介護現場のニーズを反映した「介護ロボット」の開発を目的とした「介護ロボット開発等加速化事業」を進めています。政府が介護現場への導入、実証、普及まで総合的に支援することによって、今後、急速に「介護ロボット」の開発が進むと考えられます。
「介護ロボット」の市場規模を2020年までに約500億円まで成長させるとした政府目標に対し、現状はまだまだ及ばない状況なので、今後、各社の開発が加速するとともに、普及拡大による市場の成長が期待されるので、ぜひ注目しておきましょう。
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