引き続き、8月相場は冴えない動きになっています。
7月31日の日経平均株価の終値は、2万1521.53円でした。それが8月6日には、一時2万110.76円まで下落。その後、9日に2万782.06円まで戻す場面がありましたが、13日前引けは前週末比244.31円安の2万440.51円と、軟調に推移しています。
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トランプ大統領の発言や香港問題の深刻化により、
米中貿易戦争はますます激化
このような調整相場になっている主因は、やはり米中貿易戦争の激化です。
トランプ米大統領は8月9日、「中国と合意する準備ができていない」として、9月上旬に開く予定の貿易協議を中止する可能性を示唆しました。また、政府調達を13日から禁じるほか、米国製品の販売を事実上禁じる措置を取っているファーウェイに関しては、中国と貿易問題で合意するまで制裁を続ける考えを示しており、米中の対立が再び激化しつつあります。
このため、投資家のリスク回避的な傾向が強まり、世界的に株式は売られ、外国為替市場では安全通貨の円が買われ、対ドルでの円高が急激に進行しています。8月12日には、一時1ドル=105円05銭と7カ月ぶりの高値を付ける場面がありました。対ドルの円相場に関しては、1月3日の「フラッシュ・クラッシュ」で付けた104円10銭の年初来高値の更新も視野に入っています。
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一方、トランプ米政権が「通貨安誘導を強めている」として8月5日に「為替操作国」に指定した中国では、中国人民銀行(中央銀行)が13日、人民元の売買の基準値を対米ドルで1ドル=7.0326元に設定したと発表しました。9日連続での元安設定で、基準値としては2008年3月以来、約11年5カ月ぶりの元安水準です。
中国政府は、「資本流出リスクを意識させるような急速な元売りは阻止する。その一方で、景気下支えのための緩やかな元安を容認する」という姿勢を、明確に打ち出しています。
このような状況下、香港の航空当局は8月12日午後、香港国際空港で大規模デモが行われた影響で、同空港を同日中に発着するすべての便の欠航を決めました。抗議活動を擁護する立場の米国に対し、中国政府は「過激なデモ参加者が警官を攻撃した。重大な犯罪であり、テロリズムの兆候が出始めている」と指摘し、過激になる抗議活動を抑え込む姿勢を強調しています。
こうなると、香港問題の深刻化が、米中の対立をさらに激化させるリスクが高まっているのです。
日経平均株価が再び上昇するには、
米中貿易戦争が鎮静化するか円高が一服することが必要
一方、国内では、8月9日に発表された4~4月期の実質GDPが、個人消費と設備投資の寄与で、前期比年率1.8%増と市場予想の0.4%増を大きく上回りました。
しかしながら、外需はマイナス寄与でした。とりわけ、輸出は0.1%減でした。米中貿易摩擦の激化で、中国など海外需要の減速が鮮明になっていることが主因でしょう。
これに加えて、足元で円高が加速しています。このため、東京株式市場では、輸出関連の企業業績に対する懸念が強まっているのです。これが日経平均株価の足を引っ張っています。
ところで、8月9日の日経平均株価のPBRは1.03倍でした。終値は2万684.82円でしたから、PBR1倍の水準は2万082.35円です。このPBR1倍水準は、一応、下値メドとして意識されるとみています。
なお、日経平均株価が戻りに入るには、米中貿易戦争が沈静化したり、円高が一服したりしない限り、難しいでしょう。調整期間中の上値メドは、8月2日と5日とで空けた窓(2万941.83円~2万960.09円)埋めです。
日銀短観6月調査での想定レートは1ドル=109円35銭でした。私はこの水準を超えた円安にならない限り、今月に関しては、8月1日につけた月間高値2万1556.69円を超えることは難しいとみています。
また、ドル建て日経平均株価でも200ドルを超えることは難しいと考えています。そして、足元で1ドル=105円台まで円高が進んだため、ドル建て日経平均株価の妥当レンジは、従来の195ドル~200ドルから、190ドル~195ドル程度に切り下がってしまったと考えています。
投資主体別では、このままでは今月も海外投資家は日本株を売り越すとみています。
ちなみに、対外及び対内証券売買契約などの状況によれば、海外投資家は7月まで日本株を3カ月連続で売り越しています。外部環境に大きな変化がなく、というかむしろ悪化しているため、売り越し額が増加するかもしれません。要警戒です。
ソフトバンクの上昇や月初の相場急落により、
一部の個人投資家に市場回帰の兆しが!
ただし、明るい話題はあります。8月9日に、昨年12月に新規上場したソフトバンク(9434)がようやく公開価格の1500円上回ったことをきっかけに、個人投資家の市場回帰の兆しが出始めたことです。
また、月初の相場急落を受け、8月2日時点の信用買い残は2兆3144億円と、7月26日時点比で1193億円増加しました。逆張り大好きな個人の買いが入った結果でしょう。7月まで凍り付いていて微動だにしなかった個人の一角が動き出したことは、やはりグッドニュースだと思います。
依然として元気のない個人投資家が多いため、
引き続き、機関投資家向けの大型株中心の運用を
そうはいっても、大部分の個人は相当痛んだままでしょう。彼らが元気を取り戻すには、日経平均株価が4月24日の2万2362.92円を上回ってくるくらい相場水準が上がってこないと厳しいとみています。
現状のように2万1000円を下回るような水準でもたもたしている間は、「持ち株の株価なんてみないよ。俺の前で株の話はしないでくれる? 気分が悪くなるから……」という感じの人が多そうです。実際、私の知り合いの証券マンに聞いても、投資に関しては完全に興味を失ってしまったお客さんが多数とのことです。
したがって、8月に入って一部の個人が市場に帰ってきたことは非常に喜ばしいことなのですが、個人の関与率の高い市場や銘柄群に対しては、依然として強気に転じることは難しいですね。よって、引き続き、国内外の機関投資家の買いが見込める好業績の大型株中心の運用を心掛けましょう。
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