先週は、米中貿易交渉や英国の総選挙など
懸念事項が次々に片付いた
先週は、大きなニュースが次々にもたらされました。
まず、米国の下院が米国メキシコカナダ貿易協定(USMCA)に賛成する態度を表明しました。USMCAは北米自由貿易協定(NAFTA)に代わる三国間協定であり、三国の首脳レベルでは1年も前に合意に到達していたのですが、各国の議会の承認を得るという段階で米下院民主党の協力が得られず、これまで宙ぶらりんになっていました。
USMCAは今週にも下院で投票に付された後、来年早々には上院でも投票に付され、大統領の署名を得るというスケジュールが予想されます。
また、英総選挙では保守党が圧勝しました。 これにより、英国の欧州連合(EU)離脱、いわゆる「ブレグジット」では、「秩序ある離脱」が実現する公算が大きく高まりました。
さらに、米中貿易交渉の第1ラウンド合意に関しては、先週金曜日に「とりあえず12月15日から開始される新しい関税は回避する」ということが合意されました。今回の関税は主に消費財に対して課されるので、実体経済への悪影響を心配する声があったわけですが、もうその心配をする必要はなくなったのです。
FOMCとECBが定例記者会見を開催。
FRBのパウエル議長の発言は、株式市場にとって好材料
先週は、米連邦公開市場委員会(FOMC)と欧州中央銀行(ECB)の定例記者会見も開催されました。
まず12月11日(水)のFOMCでは、満場一致で現行の政策金利1.75%が維持されました。声明文の変更点としては、「引き続き不確実性が存在する」という文言が削除されました。
今回の記者会見でも、再びパウエル議長は、1995年の金利政策と現在の手綱さばきが似ている点に言及しました。
一方、これまでのFOMCの記者会見と今回の相違点として「なるほど現在の政策金利の手綱さばきは95年と似ている。しかし、政策金利を現行のままで維持する期間は、ひょっとすると今回の方が長いかもしれない」と語りました。つまり、95年と98年の利下げの際は、その後利上げをしましたが、今回はそれとは違うシナリオになるかもしれない可能性を示唆したわけです。
これは今までより一歩踏み込んだ発言であり、株式市場にとって好材料です。
パウエル議長は、インフレが低い理由として(1)経営資源の稼働状況と失業率との間の関係性がどんどん薄れていること、(2)経済の弛みとインフレの関係もどんどん薄れていること、の2点を挙げました。
一方、ECBの政策金利会合では、変更は発表されませんでした。つまり、政策金利(主要リファイナンス・オペ金利)は0.00%、限界貸付ファシリティー金利(オーバーナイト貸し出し)は0.25%、預金ファシリティー金利は−0.50%のままだということです。
フォワード・ガイダンス(将来的な金融政策の指針)としては、「物価上昇率が2%未満かそれに近い水準に十分に近づき、物価上昇基調に持続的に反映されるまで」という目安が示されました。
また、11月1日から債券国債の購入プログラム(APP)が月額200億ユーロの規模で再開されていますが、これは「必要な限り」継続することが強調されました。
むしろ今回の定例記者会見で注目されたのは、マリオ・ドラギ総裁の後を受けて着任したクリスティーヌ・ラガルド元IMF専務理事が初めての記者会見に臨んだ点でした。ラガルド総裁は、さすがに公の場でのスピーチには慣れており、終始余裕に満ちた答弁だったと思います。
「買い疲れ感」が漂う株式市場では、
投資家の慢心が広がりつつある!?
私はこのところずっと一貫して米国株には強気であり、来年に関しても基本楽観的な見通しを持っています。しかし、先週の米国株式市場は、上に述べたような「これでもか!これでもか!」という良いニュースが連発したにもかかわらず、S&P500指数の上昇幅は+0.7%に過ぎず、「買い疲れ」を感じさせました。
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「理想買い、現実売り!」ということわざがある通り、目先は利食いが先行する展開になるのかもしれません。
インベスターズ・ビジネス・デイリー(IBD)紙によると、12月13日のプット・コール・ボリューム・レシオは0.6であり、2019年6月20日に記録した過去1年の最低水準まで下がりました。一般的に、相場が過熱して強気な投資家が増えるとプット・コール・ボリューム・レシオは下落すると言われます。
プット・コール・ボリューム・レシオは主に「買い場」を知るインジケーターであり、「売りシグナル」としての利用価値は限られています。しかし、プット・コール・ボリューム・レシオの低さをわかった上で多くの投資家がダウンサイド(下振れリスク)の「保険」を取り払う行動に出ているのは、やや慢心を感じずには居られません。
【今週のまとめ】
ホームラン狙いの大ぶりを止め、
シングルヒット狙いに徹しよう!
先週は怒涛のように良いニュースが出ました。その割には株式市場の反応は鈍かったです。これは、投資家に慢心が広がりつつあるのだと考えます。
ここは、野球に例えればホームラン狙いで大振りになることを慎み、「スイングを小さく、シングルヒット狙いに徹する」という心構えで臨むべきでしょう。
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