<今回のまとめ>
1.FRBは予想通り利上げした
2.FRBメンバーは2016年に1.6%のインフレを予想している
3.インフレになるシナリオでは通貨は売られやすい
4.ドル安なら米国の企業収益は改善する
5.ドル安はコモディティにとってプラスだ
6.ドル安は新興国にも恩恵をもたらす
利上げが行われた
12月16日の連邦公開市場委員会(FOMC)で米国連邦準備鮮度理事会(FRB)はアメリカの政策金利であるフェデラルファンズ・レートを0.25%引上げ、0.50%とすることを決定しました。これで2008年から続いている、実質ゼロ金利(0~0.25%のレンジ)が終了しました。
今後の政策金利のシナリオ
FRBメンバーは今後のフェデラルファンズ・レートのシナリオ(=これを俗に「ドットプロット」といいます)について、下のようなコンセンサス予想を示しています。
これを見ると2016年末は1.4%という予想になっています。
この1.4%というフェデラルファンズ・レートは、高いのでしょうか? それとも低いのでしょうか?
長期でのフェデラルファンズ・レートは下のグラフのようになっています。
つまり2016年末にそれが1.4%に達したところで、歴史的に見ればまだ極めて低い水準であることに変わりは無いのです。
政策金利は累積的に効いてきます。これはボクシングに例えるなら、一回のボディーブローではKOできないけれど、何回も繰り返し打撃を受け続けると、それがじわじわこたえるわけです。
すくなくとも来年1年間の利上げ(=上記のドットプロットから逆算すると、3回~4回程度)で、米国経済がノックアウトされる心配は無いと言えるでしょう。
◎為替
イエレン議長は、かねてから「インフレがFRBのターゲットである2%へ向けて、着実にその方向へ歩み始めたという見極めがつき次第、利上げする」と語ってきました。
すると、今回、利上げしたということは、その見極めがついたということに他ならないと思います。つまり次に心配すべきはデフレではなくインフレなのです。実際、FRBメンバーはコンセンサス予想として下のようなインフレ率を想定しています。
2016年末で、1.6%というわけです。
ある国がインフレに向かうとき、その国の通貨は弱含むことが知られています。すると2016年の米ドルは、弱含むと考えるべきです。
◎企業業績
米国の企業は過去2年間のドル高にたいへん苦しめられてきました。すると2016年はドル安になるのであれば、ドル安による企業業績の底上げ効果が期待できるというわけです。
このためアメリカ株については楽観的で良いと思います。
◎コモディティ
もしドル安ということになれば、原油やゴールドなどのコモディティはドル建てで取引されているため、ドルとは逆相関の動きをしやすいことが知られています。
すると原油やゴールドは、底入れから反転すると考えるのが自然です。
◎新興国
2015年は中国経済の減速がしばしば話題にのぼりました。中国の輸出不振は、人民元が米ドルに緩くリンクしており、ドル高が中国製品の輸出競争力を殺いできたことが一因です。
もし2016年にドル安になるのであれば、中国の輸出企業は、ホッと一息つくことが出来ます。そのことは中国とつながりの深いその他の新興国も中国とのビジネスで明るい展望が開け始めることを意味します。
経験則的にアメリカの投資家はドル高局面では新興国投資を絞り込むことが知られてきました。すると2016年はドル安が見込まれるわけですから、久しぶりにアメリカの投資家が新興国投資をステップアップすることが予想されるわけです。
アメリカにとっていちばん近い新興国はメキシコです。メキシコに投資するETFとしては、アイシェアーズMSCIメキシコETF(ティッカーシンボル:EWW)というのがあります。
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