闇株新聞[2018年]

米FRBが9年半ぶり利上げで、常識は円安ドル高だが闇株新聞が「円安終了」を予想する理由とは!?

2015年12月25日公開(2022年3月29日更新)
闇株新聞編集部
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ついに米国が利上げ―常識では「円安加速」だが

 12月16日、ついに米FRB(連邦準備制度理事会)が9年半ぶりの利上げを決定しました。

 従来の常識で言えば「円安加速」となるはずです。実際、12月9日までの1週間のFX取引で、日本の個人投資家は米ドルを24億8000万ドルも買い越しています。これは週間ベースで6月3~10日の25億8000万ドルに次ぐ、今年2番目の買い越し額でした。

 今回の円安トレンドが始まったのは2014年10月15日(1ドル=105.18円)、日銀が追加量的緩和に踏み切った10月31日の少し前からでした。その前の円安トレンドは最初の"異次元"量的緩和が始まった2013年4月4日(その前日は1ドル=93円)から始まっています。

 大ざっぱに言えば、最初の"異次元の"量的緩和で93円→105円、追加量的緩和で105円→125円と2段階で円安が加速したのでした。

米ドル/円の月足チャート。量的緩和のタイミングと比べてみると…(ザイFXより)

資金の流出・流入額から見えてくること

 異次元の量的緩和が行われていた2013年度、国内投資家は海外株式を3.1兆円、海外の中・長期債を2.6兆円売り越していました(資金流入)。また、本邦企業の対外直接投資が13.9兆円(資金流出)、海外投資家は日本株を11.8兆円買い越し(資金流入)ていました。

 2013年度の経常収支は8000億円の黒字に過ぎませんでしたが、差し引きすると日本から資金が流出していたわけではなかったことになります。

 ところが、追加量的緩和が行われている2014年10月~2015年9月、国内投資家は海外株式を19.3兆円買い越し、中・長期債を9.3兆円買い越していました(資金流出)。

 この1年間の経常収支は14.4兆円の黒字(資金流入)ですが、本邦企業の海外直接投資(資金流出)が15.7兆円、海外投資家の日本株買い越しが3.8兆円、中・長期債投資が9.6兆円の買い越し(それぞれ資金流入)で、差し引きでも日本から巨額資金が流出していたことがわかります。

 追加量的緩和が行われている2014年10月から2015年9月までの「円安加速」が、これによって裏付けられます。日本から資金が流入しているか流出しているかだけで円相場が決まるわけではありませんが、ある程度は「その通り」になっています。

海外投資家は「円は底値に近い」と見ている?

 そうするとFOMCの利上げを受けて国内投資家が今までのように「狂ったように」海外の株式や中・長期債を買い越さない限り、これ以上の円安はないだろうと考えられます。

 それだけでなく「少しでも」海外の株式や中・長期債を売り越すとか、売り越さなくても為替のヘッジ売りを積み上げたら、逆に「円高」になってしまいます。

 ここのところの円相場が「どんどん円安」という雰囲気でもなく、海外株式や海外債券(とくに格付けの低い債券)への投資環境が「良好」というわけでもなく、ここから国内投資家がどんどん海外投資を加速させることは考えにくいでしょう。

 円を外貨に換える需要が少なくなれば円安にはなりません。FX取引は必ず反対決済するので、最近のようにドル買い越し残高が大きいということは「必ず」ドル売り需要があるということになります。

 それから本誌が前から気になっていることは、海外投資家による日本の中・長期債買い越しが「思いがけない」高水準であることです。2014年10月~2015年9月も、低利回り(ほとんど利回りゼロに近い)の日本国債を9.6兆円も買い越しています。

 海外投資家が日本国債の利回りや値上がり益を期待しているはずもなく「為替益」が目的のような気がします。まだ確証はありませんが、海外投資家は「円は底値に近い」と考えているのではないでしょうか。どこかのタイミングで一気に「円買い」を仕掛けてくるかもしれません。

 この辺を考え合わせると円安はそろそろ終了?となるような気がしています。

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