日本株や為替、世界経済について、明快かつ独特な視点で切り込む刺激的な金融メルマガ「闇株新聞プレミアム」。今回は任期末期で完全に「レームダック」(死に体)に陥っているオバマ大統領と、次期大統領にまつわる懸念について。
米国債ショックが再び世界経済を襲う!?
オバマ大統領の任期満了があと1年余り(2017年1月まで)と迫っています。すでに内政では全く指導力を失っており、任期中は何も決められないでしょう。そのため外交で実績(レガシー)を残したいと焦っていますが、そこでも迷走が続いて世界のあちこちで混乱を引き起こしています。
例えば、先日なんとか合意に持ち込んだTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)では、薬品業界などへの根回しが明らかに不足していたようで、議会の承認が得られず棚ざらしになってしまいそうです(それでも日本が妥協してしまったところだけは、しっかり実行させられるはずです)。
10月に始まった2016年会計年度の予算も、成立のメドが立ちません。既に辞任を発表しているベイナー下院議長が12月11日までの暫定予算を成立させましたが、オバマ大統領は「これ以上の暫定予算には署名しない」など見当はずれに息巻いています。
このままでは近いうちに、政府機関の窓口が閉鎖に追い込まれてしまうでしょう。オバマ大統領と議会の関係が一時的にも修復される可能性がまったくないばかりか、野党・共和党もベイナー下院議員の後任を絞れず混乱が収まりそうもないからです。
2013年の秋にも一部の政府窓口が閉鎖に追い込まれ、大騒ぎになったことがありました。この時は債務上限の引き上げが妥結するまで「一時的に債務上限を適用しない」時間稼ぎで凌いだオバマ大統領ですが、もうその手も使えません。債務上限を引き上げるには今会計年度の予算案だけでなく、将来の財政削減案にも合意しなければならないのです。
ルー財務長官(この人は歴代財務長官の中でダントツに無能です)も「11月上旬には債務上限に達するためデフォルトする」と言うだけで危機感が伝わってきません。今回は本気でオバマ大統領の無策のせいでデフォルトしてしまうか、少なくともその直前に世界金融が大混乱に陥る可能性があると考えています。
このことが、現在の世界経済や金融を取り巻く最大の懸念材料です。昨今、FRBが利上げを示唆したり見送ったりと優柔不断でいることも、これと無関係ではありません。
米国の債務はこの15年で約3倍に膨れ上がった!
現在のアメリカ連邦政府の債務上限は18兆ドルです。オバマ大統領が就任した2009年1月は12兆ドルでした。ちなみに前任のブッシュ大統領が就任した2001年1月は6兆ドルだったので、大ざっぱに言えばブッシュ大統領は歴代の米国大統領が積み上げた連邦債務と同額を1人で積み上げ、オバマ大統領は任期を1年以上残してブッシュ大統領の積み上げ額に追いついてしまったことになります。
ブッシュ大統領の時代は同時多発テロとか世界金融危機に襲われたため、ある程度やむを得ない側面がありますが、任期を通じてだいたい平穏無事だったオバマ大統領がそれ以上の連邦債務を積み上げたことは「無能」以外の何物でもありません。
米国の債務上限が引き上げられないと、またぞろ「米国債が暴落する」とヒステリックに叫ぶ専門家が出てくると思いますが、そんなことはありません。デフォルトするのは(支払いができなくなるのは)連邦政府だけで、米国経済界や金融界ではなく、ましてやFRBでもありません。
逆に米国債がしばらく発行されないことになるため、品不足から米国債の価格は急上昇(利回りは急低下)するはずです。まあドル安(つまり円高)にはなると思いますが、あまり心配しないことです。先ほど、直前には米国だけでなく世界の金融が大混乱になると書いたのは、不安を煽る専門家(格付け機関も)がでてくるからで、冷静になればそれほど問題ではありません。
次期大統領まで耐えれば状況は改善されるか?
さてオバマ政権はこんな体たらくですが、新大統領が2016年11月に決まるので、あと1年ほど我慢していれば(ほとんど祈っているしかなさそうですが)状況は改善されるのかというと、残念ながらそれも違うようです。
後継がヒラリー・クリントンなら全く同じことになってしまいます。クリントンは自分にとってどの相手に近づけば有利になるかを常に考えるタイプです。もともと日本軽視であるうえ、オバマに輪を掛けた八方美人タイプなので強い敵(自分に不利になる敵=もちろん中国)とは立ち向かわないからです。
本来ならオバマ大統領のような弱い大統領の後継には、対立政党から正反対のタイプの大統領が選出されるのがセオリーですが、共和党のトップを走っているのは過激な発言ばかりが取り沙汰されるドナルド・トランプです。オバマの弱さを払拭できる“正当な”候補者は見当たりません。
このままだと民主党ヒラリーvs共和党トランプで決戦投票になってしまいます。そうなると最終的に日本にとって最悪のヒラリー・クリントン大統領誕生となってしまうでしょう。具体的にどう最悪なのか、世界の金融市場にどう影響するのかは、引き続き「闇株新聞プレミアム」で考えてまいります。
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