闇株新聞[2018年]

「バフェット指標」では昨年夏から日本株は割高世界経済の「最悪のシナリオ」も想定すべし!闇株新聞が予測する世界の株式市場の行方

2016年2月19日公開(2022年3月29日更新)
闇株新聞編集部
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リーマンショックから昨年までの株式市場は急落があっても値動きが落ち着くと、いつの間にか株価が回復し上昇基調に戻るパターンが繰り返されてきました。しかし、今年に入ってからの下落はいつまで経っても反転する気配を見せず「これまでとちょっと違うのでは」と感じている方も多いのではないでしょうか。経済の闇に光を当てる刺激的な金融メルマガ「闇株新聞プレミアム」は、最新号でその違和感の正体について解説しています。この相場「とうとう来るべきものが来た」と考えるべきかもしれません。

 最近の世界的な株価急落、長期金利低下、資源価格下落を理解し、さらに先行きを読む場合には、少なくともリーマンショック以降に世界経済や金融市場を取り巻いていた「常識」について、検証してみることが必要です。

 検証を重ねることによって、近い将来に現れる可能性のある「最悪のシナリオ」もおぼろげながら読めてきました。あまり目先のことではなく、やや中期的(3か月程度)を見据えた「概況」のようなものと考えてください。

リーマンショック以降の株式市場の値動きは
実体経済とはかけ離れたものになっていた

 リーマンショック後の日経平均の安値は7054円(2009年3月10日)、同じくNY株式の安値は6547ドル(2009年3月9日)です。このところの株式市場が急落しているとは言っても、先週末(2月12日)の日経平均は14952円でしたので安値から2.1倍、NY株式も15973ドルで安値から2.4倍の水準にあります。

 これに対し、日本の名目GDPはリーマンショック翌年(2009年)が471兆円だったのが499兆円(2015年/推定)と1.06倍にしかなっていません。米国の名目GDPは14兆4200億ドル(2009年)から17兆9700億ドル(2015年)まで1.24倍になっていますが、日米とも株価の上昇率が名目GDP成長率を大きく上回っています。

 ウォーレン・バフェットは、株式時価総額増加率と名目GDP成長率は長期的には収斂すると主張しており、両者を比較した「バフェット指標」で見ると日本株は昨年夏時点で割高であると警告していました。

 これは日経平均が中国ショックで急落する前のことですが、今から考えると日本株は(NYを含む世界の株式も多かれ少なかれ)割高だったため、中国ショックの影響もより大きく出てしまったことになります。

 もっと大雑把に「世界の株式時価総額」で見てみましょう。リーマンショック直後の35兆ドルが直近では56兆ドルと、やはり1.6倍になっています。ちなみにリーマンショック後のピークは71兆ドル(2015年5月)でしたので、その時点では2倍をこえていたことになります。

 世界のGDP総額については中国の数字が信用できないため掲載しませんが、リーマンショック直後から今日まで株式の時価総額並みに1.6倍になっているということは普通に考えてあり得ません。

 経済の実体をより正確に表すのは商品市場です(少なくとも本紙はそう考えます)。商品市場全般の値動きを示すCRB指数は、リーマンショック後の安値が200ポイント(2009年3月)、高値が368ポイント(2011年5月)です。先週末は160ポイントでリーマンショック直後の8割の水準でしかありません。

 原油価格は政治的要因の影響も大きいので単純な比較はできませんが、原油先物(WTI)はリーマンショック直後の1バレル=32.40(2008年12月)だったのが114ドル(2011年5月)まで上昇し、2014年7月から急落を繰り返して先週末は29ドルとリーマンショック後の安値を下回ったままです。

 確かに株式市場はそれぞれの国の代表的な企業の集合体であるため、その時価総額はその国の付加価値を示すGDPよりも増加率が大きくて当然です。何より もリーマンショック以降は世界的に金融緩和・量的緩和が行われ投資資金が溢れ返っていたので株価や時価総額が増加するのも当然でした。しかし…

 いくらなんでもリーマンショック以降の株式市場と、実体の経済(GDP、CRB指数、原油価格.etc)のギャップが大きくなりすぎたのではないでしょうか!?

経済が回復しなければ株価も上がらない
当面株価が上昇しても一時的と見るべき

 もっと正確に言うと、リ-マンショック直後からの世界的な金融緩和・量的緩和(中国だけは最初は4兆元の財政出動)の経済回復効果を、世界的に過大評価していたことになります。商品市場も2011年夏頃までは株式市場と同様に上昇し、その後もしばらくは高値圏にありました。

 ところが商品市場では2013年4月に金価格が1オンス=1600ドルの高値から急落、そこから他の商品価格・資源価格も急落をはじめ、最後に原油(WTI)が2014年7月に1バレル=107ドルから急落し、全ての資源を含む商品価格が急落に次ぐ急落となり現在に至ります。

商品市場でも「最初に動く」傾向のある金価格は昨年末から17%も上昇しており、原油価格を含む商品・資源価格全般も当面のボトムをつけたような気もします。しかし、世界経済が明らかに回復しない限り(もちろん回復しません)、商品価格・資源価格全般が本格的上昇に転じることは考えられません。

 株式市場も商品市場も大局的には実体経済を基準に考えますから、株式市場だけが商品市場と全く別にギャップを拡大させながら、上昇を続けるのは不可能です。世界の株式市場はいずれ行き詰まるはずでした。

 しかし「その時期」までを予測することは不可能でした。これまでも「いつ行き詰まってもおかしくない状況」が続いていましたが、実際の株式市場は少々の急落があっても小康状態になるといつのまにか回復し、根本的にギャップが是正されることはなかったのです。

 それが本年に入ってから、いよいよ本格的に下落していると「認識」されたのだと考えます。したがって、世界の株価もここから本格的な上昇に転じるには大変な時間がかかるものと思われます。世界経済が本格的に回復し始めたとはっきりと認識されない限りは、ここから株価上昇があってもすべて一時的なものと考えたほうが良さそうです。

 ここまでが、闇株新聞の考える日経平均を含む世界の株価全体の「総論」ですが、これは「闇株新聞プレミアム」で論じられていることのほんの一部でしかありません。今週の「闇株新聞プレミアム」では、さらに突っ込んで日銀の金融政策と日本の株式市場の行方について、あるいは今まで金融緩和・量的緩和を背景に世界中で安直に積み上げられていた信用リスクが、世界経済と株式市場の低迷によって一気に噴き出す恐れがあること(特に主に欧州銀行が自己資金を嵩上げするために考え出されたCoCo債の危険性)について、そして米国の累積財政赤字問題が深刻化し「誰も夢にも考えていない危機」が起きてしまう可能性について、深く掘り下げて考えています。

 大荒れの相場では上へ下へと値動きが激しくなり、ともすれば投資家は荒れ狂う海に浮かぶ木っ端のごとく翻弄され、方向感覚を失いがちです。こんなときだからこそ、大局から潮流を知ることが大事ではないでしょうか。

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