闇株新聞[2018年]

期待の大きい「日銀の追加緩和」はもう日本株上昇の特効薬にはならない!?闇株新聞が心配する日本経済の急減速

2016年1月28日公開(2022年3月29日更新)
闇株新聞編集部
facebook-share
twitter-icon
このエントリーをはてなブックマークに追加
RSS最新記事

 年初から下げ続けた日本株は、1月21日の欧州中央銀行理事会でドラギ総裁が追加緩和の可能性を示唆したことで落ち着きを取り戻し、ひとまずは下げ止まりを見せました。この株価回復は一時的に終わるのか、それとも急回復を見せるのか!? 経済に潜む闇を白日の下にさらけ出し、独特な視点で切り込む刺激的な金融メルマガ「闇株新聞プレミアム」の見解は!?

世界でも足下の経済の悪化ぶりを
如実に示していた日経平均の下げ方

 まず、世界の株価が昨年末終値からドラギ総裁の追加緩和発言前日の終値(時差の関係で20~21日の2日間に渡ります)まで、どれくらい下落していたかを見てみましょう。

・日経平均[日本]19033円→16017円(-15.8%)
・ダウ平均[米国]17425ドル→15766ドル(-9.5%)
・DAX[ドイツ]10743ポイント→9391ポイント(-12.6%)
・上海総合[中国]3539ポイント→2880ポイント(-18.6%)
・ボベスパ[ブラジル]43349ポイント→37645ポイント(-13.1%)

 市場によって下落率に多少のバラツキがありますが、見事に世界同時並行で下落していたことがわかります。

もう少し詳しく見ると、日経平均の1月21日の安値・16017円は、同じように中国経済の不安と上海株式の急落に見舞われていた昨年9月29日の安値・16930円をさらに5.4%も下回っています。

 ダウ平均、DAX、そして“震源地”である上海総合でさえも昨年8~9月の安値近辺で踏みとどまっていたにもかかわらず、日経平均は(ブラジルのボベスパ指数ほどではないにせよ)昨年9月の安値を下回っていたわけです。

 これだけで何かを結論づけるつもりはありませんが「株価は経済状況を映す鏡」とするならば、昨年8~9月以降の日本経済はかなり悪いと見ざるを得ません。

欧州は量的緩和に踏み切る理由と
その方法が明確にされている

 こうした中でドラギ総裁が突然に「下振れリスクは高まった。3月の理事会で金融政策を再評価する」と発言しました。ここで言う「下振れリスク」とは、欧州の景気や物価の先行きが厳しく、特に輸出が失速して成長が鈍化し、物価が低迷するという“悪い循環”を意味します。

 欧州はずっと以前から「2%の物価上昇」(消費者物価指数の前年比上昇率)を金融政策の中心目標に掲げており、物価の低迷と景気低迷にはかなり強い相関関係があることが歴史的に検証されています。

 昨年12月のユーロ圏の消費者物価上昇率は前年比で0.2%上昇していたものの、最近の原油価格急落や世界経済の低迷で上昇率がマイナス(つまり下落)に転じることが確定的なため、手遅れにならないように対策を講じたのでしょう。

 ユーロ圏の消費者物価の前年比上昇率は2014年12月~2015年3月にもマイナスだったのですが、その対策として2014年12月の理事会で積極的な金融緩和を表明し、2015年1月の理事会で「初めての」量的緩和に踏み切るとして、同年3月から実施していました。

 その内容とは、ユーロ圏構成国の国債を(投資適格でないギリシャは除く)ECB出資比率に準じて買い入れることを中心に、証券化した銀行貸出債権(ABS)などを加えて月間600億ユーロ(7.7兆円)を充てるというものでした。

黒田総裁も「2%の物価上昇」を
目標に掲げるが…根拠も方法も曖昧

 ところで、「2%の物価上昇目標」は日銀の黒田総裁もよく口にする言葉ですが、そもそも日本の消費者物価は長い間下落していたところに「唐突に掲げた目標」でありました。なぜ2%の物価上昇が日本経済に必要なのかや、どのように実現させるのか(国債を異次元に買い入れれば実現するそうですが)など、理解できる説明もないまま現在に至ります。

 黒田総裁は、先週の参議院予算委員会でも週末(1月23日)のダボス会議でも「2%の物価上昇目標達成が困難になれば、いつでも断固たる行動をとる」と息巻いて見せました。ということは、先週末時点でもまだ「困難になっていない」と考ているのでしょうか!? だとしたら、足元の日本経済の急減速には何の警戒心も危機感も抱いていないことになります。

 そんな中、ドラギ発言後の日経平均は「世界最大の上昇幅」となりました。こうなると日銀が何かしらの追加緩和に踏み切ったとしてもそこからのさらなる大幅上昇は期待できず「材料出尽くし」に、逆に1月28~29日の政策決定会合で何もなければ「失望売り」になってしまう可能性が高まっています。

日銀が追加緩和に踏み切れば出尽くし
踏み切らなければ失望売り!?

 はたして日銀は追加量的緩和に踏み切るのでしょうか? 踏み切らなかった場合のことを考えると、株価への悪影響が大きいので「踏み切らざるを得ないのではないか」とも考えていました。

 しかし、現在の日銀を“実効支配”している財務省(旧大蔵省)は、追加緩和を消費税10%(2017年4月)を確実に実施するための「舞台づくり」としか考えていません。そのため今はまだカードを切るには早すぎ、今回は期待感を盛り上げておくだけの可能性が強いと思われます。

 つまり、短期的に急上昇した日経平均は、日銀が何らかの追加緩和に踏み切っても踏み切らなくても要注意なのです。本紙はかねてより「金融緩和・量的緩和→景気回復期待→株高(そして通貨安)」が通用する賞味期限は2年程度と考えており、日本においてこの公式はもう使えなくなっていると考えています。

 これは日銀がETFの買入れ枠だけ拡大したとしても(その可能性は追加量的緩和より高いと感じますが)、やはり効果は「限定的」と考えます。また、為替に関しては条件反射的に118円台まで円安に戻していますが、これもあまり持続しないと考えています。

 本当の株価対策とは、使い古された量的緩和ではなく、「円高転換」で世界中の投資資金をかき集めて資本立国としての立場を強化することしかないのではないでしょうか。

 

1/29追記】

この記事の公開後の1/29の政策決定会合で、日銀は当座預金のマイナス金利を実施すると発表しました。

2/1(月) 夕方に配信する「闇株新聞PREMIUMメールマガジン」では、このマイナス金利について詳しく解説しています!

お試し購読はこちら!⇒闇株新聞PREMIUMメールマガジン

 

闇株新聞PREMIUM

闇株新聞PREMIUM
【発行周期】 毎週月曜日・ほか随時  【価格】 2,552円/月(税込)
闇株新聞PREMIUM 闇株新聞
週刊「闇株新聞」よりもさらに濃密な見解を毎週月曜日にお届けします。ニュースでは教えてくれない世界経済の見解、世間を騒がせている事件の裏側など闇株新聞にしか書けないネタが満載。
お試しはコチラ

 

DPM(ダイヤモンド・プレミアム・メールマガジン)

●DPM(ダイヤモンド・プレミアム・メールマガジン)とは?

金融・経済・ビジネス・投資に役立つタイムリーかつ有益な情報からブログに書けないディープな話まで、多彩な執筆陣がお届けする有料メールマガジンサービス。
初めての方は、購読後20日間無料! 


世の中の仕組みと人生のデザイン
【発行周期】 隔週木曜日  【価格】 864円/月(税込)
世の中の仕組みと人生のデザイン 橘 玲
金融、資産運用などに詳しい作家・橘玲氏が金融市場を含めた「世の中の仕組み」の中で、いかに楽しく(賢く)生きるか(人生のデザイン)をメルマガで伝えます。
お試しはコチラ

堀江 貴文のブログでは言えない話
【発行周期】 毎週月曜日、水曜、ほか随時  【価格】 864円/月(税込)
堀江 貴文のブログでは言えない話 堀江 貴文
巷ではホリエモンなんて呼ばれています。無料の媒体では書けない、とっておきの情報を書いていこうと思っています。メルマガ内公開で質問にも答えます。
お試しはコチラ

 


太田忠の勝者のポートフォリオはこちら!
【クレジットカード・オブ・ザ・イヤー 2023年版】2人の専門家がおすすめの「最優秀カード」が決定!2021年の最強クレジットカード(全8部門)を公開! 最短翌日!口座開設が早い証券会社は? おすすめ!ネット証券を徹底比較!おすすめネット証券のポイント付き
ZAiオンライン アクセスランキング
1カ月
1週間
24時間
楽天カードは年会費永年無料で、どこで使っても1%還元で超人気! 【マイルの貯まりやすさで選ぶ!高還元でマイルが貯まるおすすめクレジットカード!
楽天カードは年会費永年無料で、どこで使っても1%還元で超人気! 【マイルの貯まりやすさで選ぶ!高還元でマイルが貯まるおすすめクレジットカード!
ダイヤモンド・ザイ最新号のご案内
ダイヤモンド・ザイ最新号好評発売中!

大企業で1億円
NISA投信グランプリ
チャート入門

6月号4月21日発売
定価950円(税込)
◆購入はコチラ!

楽天で「ダイヤモンド・ザイ」最新号をご購入の場合はコチラ!Amazonで購入される方はこちら!

[大企業で10倍株!]
◎第1特集
ソニーやサンリオ、JALなど92銘柄
大企業で10倍株!

●日本が誇る大爆騰株!最強10倍株
●夢を買う!次世代テーマ10倍株
●現実的に狙う!手堅い実力10倍株

●若手アナリスト&編集部員が発掘!
株価10倍になるZ世代株
●株価がすべて200円未満!激安10倍株
●オリエンタルランドや東京エレクトロンは?低迷大型株を売り買い診断

◎第2特集
第3回ダイヤモンド・ザイNISA投信2025
グランプリ宣言!
ザイは毎年、個人投資家目線でNISAで買いの投信を表彰します!

●日本株総合部門
●日本中小型株部門
●米国株部門
●世界株部門
●新興国株部門
●リート部門
●フレッシャー賞
●ダメなモンはダメと言います!期待ハズレな残念投信3本を今年も発表!

◎第3特集
値上げに勝つ!インフレ時代の最強節約術77
●コメの値上がりが家計を直撃!食費のワザ
●省エネで家計を守る!光熱費のワザ

●惰性で払っている固定費を点検!生活費のワザ
●もらえる制度はフル活用!医療&教育費のワザ
●資産40億円の億り人マサニーさんの節約術

【別冊付録】
3回集中講座の第1回!
買い時・売り時がQ&Aでわかる!チャート入門
「チャートのつくりとトレンドの読み方」

◎連載リニューアル!
●プロがこの先1カ月の日本株のポイントを解説&ガチ予測!
●3カ月先を読む「日本株」と「為替」の透視図

◎いつもの連載も充実
●ZAiのザイゼンがチャレンジ!目指せ!お金名人Vol.09
●17億円トレーダー・ジュンのFX成り上がり戦略Vol.04
●10倍株を探せ!IPO株研究所2025年3月編
●おカネの本音!VOL.34 オモロー山下さん
●株入門マンガ恋する株式相場!VOL.102
●マンガどこから来てどこへ行くのか日本国
●人気毎月分配型100本の「分配金」速報データ


>>「最新号蔵出し記事」はこちら!


「ダイヤモンド・ザイ」の定期購読をされる方はコチラ!


>>【お詫びと訂正】ダイヤモンド・ザイはコチラ

【法人カード・オブ・ザ・イヤー2023】 クレジットカードの専門家が選んだ 2023年おすすめ「法人カード」を発表! 「キャッシュレス決済」おすすめ比較 太田忠の日本株「中・小型株」アナリスト&ファンドマネジャーとして活躍。「勝つ」ための日本株ポートフォリオの作り方を提案する株式メルマガ&サロン

ダイヤモンド不動産研究所のお役立ち情報

ザイFX!のお役立ち情報

ダイヤモンドZAiオンラインαのお役立ち情報