2016年の米大統領選挙の民主・共和両党の候補者選びがアイオワ州の党員集会からスタートしました。2月9日にはニューハンプシャー州で予備選挙が行われ、主要州の予備選挙・党員集会が集中する3月1日の「スーパー・チューズデー」で両党の大統領候補はほぼ決します。政治経済に独自の視点で切り込む金融メルマガ「闇株新聞プレミアム」が、米大統領選を解説します!
共和党は暴言男トランプ氏が初戦落とし混戦
「スーパーチューズデー」まで目が離せない!
米大統領選挙の候補者選びは短期決戦で、スタートダッシュ次第で思いもかけない候補者が選ばれることがあります。最近では2008年1月にバラク・オバマ氏がアイオワ州で最有力と言われていたヒラリー・クリントン氏に勝利し、そのまま大統領にまで上り詰めました。
さて、今回のアイオワ州選挙ですが、共和党の候補者は早くも「有力」と予想された3候補に絞られたようです。保守派のテッド・クルーズ氏がトップを走っていたドナルド・トランプ氏を抑えて勝利し、本流とされるマルコ・ルビオ氏も肉迫しています。
共和党の候補者選びは州により「トップ総取り方式」と「按分方式」があり、アイオワは後者なのでまだまだ横一線。混戦は3月1日のスーパー・チューズデーまで続きそうです。本紙はトランプ候補を含めた3候補の主張を比較し、またアイオワの結果を加味して考えると、最終的にはマルコ・ルビオ氏が残ると予想しています。
民主党の大本命ヒラリーは不安なスタート
「私用メール問題」の爆弾も抱えている!
一方、民主党の候補者選びは「大本命」のヒラリー・クリントン氏が、自らを「民主社会主義者」と呼ぶバーニー・サンダース氏に肉薄されながらも辛うじて勝利しました。しかし、民主党の候補者選びはどの州も「按分方式」なので実質的には引き分けです。次のニューハンプシャー州はサンダース氏がリードしているため、クリントン氏にとっては大変不安なスタートになっています。
クリントン氏は同じ民主党の現職・オバマ大統領の数少ない功績(国民皆保険制度「オバマケア」など)はちゃっかり自分の功績として取り込み、弱点(軟弱な外交政策など)は堂々と批判する「いいとこ取り」の戦略です。中国や中東に対する外交スタンスについては明言を避けるなど、大統領有力候補としての基本的な考え方は一切明らかにしていません。
オバマ大統領は「クリントン支持」を表明したものの内心は良く思っていないようで、クリントン氏が国務長官在任中に公務で私的なアカウントを使った「私用メール問題」では、未公開メール22通を「トップシークレット(最高機密)」に指定してしまいました。クリントン氏はオバマ大統領に重要なメールを見せたくなくて私用メールを使ったようです。
ここを本格的に追及されると致命傷になるかもしれませんが、相手がサンダース氏ならさすがに逃げきれるでしょう。「私用メール問題」で傷を負ったまま民主党候補に決まると前ニューヨーク市長のマイケル・ブルームバーグ氏が無所属で出馬してくるシナリオも言われていますが、可能性としてはほとんどないと考えます。
古今東西、政権選挙は「振り子」の如し
優柔不断なオバマの次に、該当者なし!?
さて11月8日に行われる本選は、直前の政治・経済情勢が大きく影響するため、今から予想することは意味がありません。2008年の本選でも優勢だったベトナムの英雄・マケイン氏が経済音痴で、突如襲った金融危機への対応を聞かれてトンチンカンな答弁しかできず、オバマ氏に負けてしまいました。
その2008年大統領選挙でオバマ氏が勝利した最大の要因は、好戦的でイラク戦争に踏み切ったブッシュ前大統領に対し、「反戦・停戦・米兵の引き上げ」を公約に掲げ、「これ以上、米国人を戦場で死なせない」と強く訴えたからです。
米大統領選挙に限らず世界的に選挙というものは「振り子のように振れる」ものです。次期米大統領が好戦的であるかどうかはともかく、いろいろな意味で「強い」大統領が選ばれるはずです。
しかし、民主党/共和党のどの候補者を見ても、そのイメージに「ピッタリ」な候補は見当たりません。米国だけではなく世界のこれからの4年(あるいは8年)をリードする米大統領のイメージは、ますます混沌としてきたようです。
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