日経平均株価は昨年末(12月30日)終値1万9033円から3週間で1万6416円まで値下がりしました。金融メルマガ「闇株新聞プレミアム」では、現状と今後の見通しを多角的かつ詳細に掘り下げ解説中。本連載「緊急予測2016シリーズ」ではその一部を抜粋しご紹介しています。今回はシリーズ最終回、日本経済と日本株の行方についてです。
【緊急予測2016年シリーズ(全3回)の過去記事はこちら!】
[第1回]世界経済を混乱に陥れる中国経済の闇!中国株は底打ちするか、日本への影響は!?
[第2回]原油安はオバマ大統領の無能が招いた!新大統領は株式市場の闇を晴らせるか!?
量的緩和による円安株高は終了
中国や原油安が落ち着いても…
日経平均は年初から11営業日で2617円(13.7%)もの下落に見舞われました。1月20日終値は前日比632円安の1万6416円。これは現在同様、中国経済の不安や原油価格暴落に見舞われていた去年9月29日の安値16930円をも下回る水準です。円相場も20日夕刻には昨年来の円高にほぼ並び、1ドル=115.97円(20日夕刻)を付けました。
さて、昨年まで続いていた株高・円安の流れは2014年10月31日に唐突に発表された日銀の追加量的緩和(いわゆる黒田バズーカ)に幕を開け、そこから公的資金を含む機関投資家の狂ったような日本株買いと外貨資産買いが始まりました。
この追加量的緩和をきっかけに、中国人民銀行やECBを含む数多くの中央銀行が追加金融緩和や量的緩和に踏み切り、世界的な株高につながりました。今から考えるとFRBの量的緩和が完全に終了して利上げが取り沙汰されていた時期でもあり、FRBが米国の景気減速を和らげるため日本に追加量的緩和を要請したのかもしれません。完全に旧大蔵省傘下となった日銀も消費増税へのアシストとなると考えたのでしょう。
2015年8~9月にかけて人民元の下落をきっかけに中国経済の不安、上海株式の急落などで世界の株式は急落したのですが、まもなく中国が「小康状態」を取り戻したかに見えると(実際は何も解決していなかったのですが)、世界の株式市場も安心して昨年末までにかなり回復していました。
ところが本年初めから(あるいは昨年末から)再度の中国経済の不安、上海株式の急落、さらには原油価格の一層の急落となり、日経平均を含めた世界の株式市場は急落しています。今回はFRBこそ利上げしていますが、日銀、ECB、中国人民銀行などはまだまだ金融緩和・量的緩和を継続しています。
それでは昨年のように中国経済、上海株式、原油価格などがまた「小康状態」になれば(いくらなんでもそのうち「小康状態」にはなるはずです)、日経平均や為替も昨年末にかけてと同じように回復するでしょうか? 残念ながら本紙の答えは「NO」です。
1ドル=105円台、日経1万5000円割れも!?
値ごろ感だけで買ってはいけない!
本誌は、昨年末からハッキリと円相場と株式市場の「変調の予感」を報じてきました。これは決して自慢ではなく、中国や原油価格が「小康状態」となっても、もう大幅な株高や円安にはならないことを強調しておきたいのです。
参考:2015年12月25日公開「米FRBが9年半ぶり利上げで、常識は円安ドル高だが闇株新聞が円安終了を予想する理由とは!?」
参考:2016年1月8日公開「2016年は円安終了を予測する3つの理由1ドル=118円のトリガーポイントを突破!」
その理由の一つとして、日銀の追加量的緩和の「効能」がすでに剥げ落ちてしまっていることが挙げられます。現在のように世界経済が収縮しているときには、総需要拡大策である金融緩和・量的緩和の効能はありません。同じように2%の物価上昇目標も無意味です。
そもそもリーマンショック以降の世界的な金融緩和・量的緩和で経済の実態が改善したという事実はなく、あったのは景気拡大の「期待」だけでした。その「期待」も徐々に色褪せ、もうその効果を発揮できないと本紙では見ています。
円相場のほうは、日本経済低迷と原油など資源安で日本の経常収支がすでに「過去最高ペースの黒字」になっていることと、2014年10月の日銀追加緩和以降の本邦企業と本邦投資家の対外投資が「持続不能のペースである」ことが挙げられます。
こうなると、円相場については1ドル=105円台、日経平均については1万5000円割れまで視野に入れたレンジまで覚悟しておくべきと考えます。ただし、すぐにという意味ではありません。基本的にはまだ円安期待が大きいため、落ち着けばさらに外貨投資が始まり120円近くまでは揺り戻すと考えます。
また日経平均については、かなり長期にわたって金融緩和・量的緩和が継続される(あるいは強化される)との期待が、中国経済や上海株式の混乱といった「外的要因の不安」をことごとく取り去っており、それがいつ完全に崩れるのかは全く理論的に解明できません。
しかし、より実際的に述べるならば、株式市場が下落している最中は安易に「値ごろ感」だけで買わないこと。何かしらの理由で株式市場が少しでも上昇したなら、今度は自信を持って「売り」となります。
もし日銀が追加量的緩和に踏み切ったら
そこは「最後の売りチャンス」だ!
株式市場が少しでも上昇する「何かしらの理由」とは何か? 可能性として最も考えられることは日銀の追加量的緩和となります。まさかとは思っていたのですが、先週末の日銀や官邸の動きを見ているとかなり不安になっています。
日銀の量的緩和については、いくら低金利になっても新たな資金需要が出てくるはずがない状態であるにもかかわらず、さらに長期金利を低下させて日本経済の利ザヤ(期待収益率)を低下させてしまう弊害しかありません。
10年国債利回りは先週末に一時0.19%の過去最低利回りを記録しました。この状態でもし本当に2%の物価上昇が実現してしまったら、それは円安と便乗値上げと人材のミスマッチによる「典型的な悪い物価上昇」でしかありません。
もともと日本の銀行は大変に高コスト体質なので、いくら調達金利がゼロに近づいても貸出金利が(長期固定で)1%を大きく下回ることはありません。つまり10年国債利回りで0.5%以下は、全く「無駄な低金利」なのです。
ここで日銀が銀行の貸し出し債権を直接買い入れる(あるいはABSにして買い入れる)追加量的緩和なら「少しだけ」日本経済に対する効果がありますが、従来型の日銀が買い入れる国債をさらに増額する(あるいはさらに長期化する)量的緩和であれば、まさに株式市場は「売り」の最後のチャンスとなります。
日銀がETFの買入れを現在の年3兆円から大幅に拡大すれば、これも「少しだけ」株式市場には効果があると考えますが、そうすると昨年末の「補完策」との整合が取れないため(だから大変に余計だったと考えます)実際には増額できないと考えます。
この危機を日本はチャンスに変えられる
今こそ経済政策を大転換すべき時!
このような世界経済の情勢の中で日本が取るべき道は、円高政策への転換です。目先の一時的なショックは覚悟して、日本経済の「真の体力増強」と「外貨流入」を図るべきです。
世界中に投資資金が溢れかえっている状態のなかで、「毎年確実に値上がりする安全な円」には世界中から投資資金が集中して円資産(つまり日本株と日本国債)が買われるでしょう。
さすれば日銀がそれほど買わなくても日本国債が世界から求められ、財政的余裕も出て前向きの経済対策も打てるはずです。そして何よりも対中国、対韓国で有効な武器になります。
また、原油安を味方につけ戦略的に外交を展開していくことも必要です。埋蔵量世界第4位のイランの経済封鎖が解かれれば、世界の石油・天然ガス等の資源はますますだぶつきます。
資源輸出国は必死に自国の資源を買ってくれる相手を探しており、エネルギーの大半を輸入する日本にとっては、あらゆる交渉を有利に展開できる絶好のチャンスです。
参考:2016年1月14日公開「日本株下落を漫然と眺めていてはいけない!脱中国、原油輸入戦略、円高転換に舵を切れ!」
円高になると輸出が減る(仮に円安になってもこの世界的な経済低迷では相手国でモノが売れまくる状況にはなりません)、原油価格が下落すると物価上昇2%の目標が達せられなくなる(世界経済全体が収縮しているときにこのような物価上昇目標など全くの無意味です)などと、ネガティブに考えるべきではありません。今こそ発想を、戦略を転換すべきです。
ここで世界的な政治・経済の混乱に巻き込まれて沈没してしまうか、一時的な痛みをチャンスに変えて未来につなげていけるかどうか、ここからが日本の正念場です。
【緊急予測2016年シリーズ(全3回)の過去記事はこちら!】
[第1回]世界経済を混乱に陥れる中国経済の闇!中国株は底打ちするか、日本への影響は!?
[第2回]原油安はオバマ大統領の無能が招いた!新大統領は株式市場の闇を晴らせるか!?
【編集部より】3回に渡ってお伝えしてきた「緊急予測2016年」は、いかがでしたでしょうか。昨年後半に円安株高が続く中で闇株新聞が幾度となく発信していた「異変」「警戒」の予想が、年明けから次々と露わになりました。変化の兆候は株価だけ為替だけを見ていても捉えられるものではありません。政治、経済、市場、あらゆるパワーバランスを常にウォッチする中で感じ、分析と整理を繰り返す中で少しずつ見えてくるものではないでしょうか。
「闇株新聞プレミアム」では毎週5-6通に渡り、多角的な現状分析と独自の解説、そして深く掘り下げた見解をお送りしています。また読者の皆様からの質問にもお答えし、市場に動きがあった場合には「緊急速達便」も発行しています。スペースの都合もあり本連載「週刊 闇株新聞」でお届けできる情報は、ほんの一部にすぎません。ますます混迷を深め、見通しの利かなくなってきた政治・経済の闇に目が利く案内人として、ご購読いただければ幸いです。
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