ザイスポ!
【第17回】 2012年5月20日 橘玲

[橘玲の海外投資の歩き方]
“歴史的”なカンボジアのIPO第1号を体験してきた

橘玲の海外投資実践編

株式取引には、現地銀行口座が必要

 トゥクトゥクをつかまえていったんホテルに戻ることにするが、ここでもまた運転手が道に迷う。カンボジアーナはプノンペンの老舗ホテルだが、地方から出稼ぎの運転手が増えているのだろうか?

 ホテルのフロントで聞いてみると、宿泊証明は出せるが、書式があるわけではないのでちょっと時間がかかるという。30分くらい待たされることになったけれど、無理をいっているのはこちらなので文句はいえない。

 すでに午後1時を回っていたが、銀行でも時間がかかりそうなので、昼食抜きでアシレダ銀行に向かう。

 アシレダ銀行は1993年にマイクロファイナンスの金融機関として設立され、その後急成長してカンボジア最大の金融グループのひとつになった。プノンペン本店は周囲を睥睨する立派な建物だ。

カンボジアの大手銀行・アシレダ銀行プノンペン本店の外観 (Photo:©Alt Invest Com)

 店内に入ると、入口の脇にアシレダ証券のブースがある。IPOが始まるのに合わせて、銀行でも証券口座が開設できるようにしているのだろう。わざわざ苦労して証券会社を探さなくても、ここですべての用事が済んだのだった。

 口座開設を担当してくれたのは、見るからにエグゼクティブビジネスマンのチン君で、左腕には金の腕時計、右手の薬指には巨大な金の指輪をしている。
彼のすすめで、カンボジアリエルの口座と、米ドル口座を開設する。最低預金額は、それぞれ1万リエルと10米ドル。

 カンボジアの証券会社は預け金が認められていないので、株式取引にあたっては必ず銀行口座が必要になる(カンボジア以外でも新興国ではこうした金融規制は多い)。IPOを申し込むときも、応募株数の購入代金全額が銀行口座から引き落とされ、抽選に外れた分は銀行口座に戻される。通常の株式売買でも、こうした資金の流れは同じだ。

 1階フロアの奥が外為窓口で、米ドルやユーロ、日本円などの外貨をリエルに両替して口座に入金できる。ただし通帳はなく、入金伝票を渡されるだけだ。

 ATMカードの発行も可能とのことだが、申込みから10日目以降に窓口でピックアップしなければならない。翌日にはビエンチャンに向かう予定なので、今回はあきらめる。すべての手続きを完了した時は午後3時を回っていた(おまけに、帰りにはトゥクトゥクの運転手がまた道に迷った)。