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「iPhone5」期待でアップル株が過去最高値!しかし、その陰にくすぶる「3つの懸念材料」とは?

【第227回】 2012年8月20日公開(2025年3月27日更新)
広瀬 隆雄
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【今回のまとめ】
1.米国株式市場は引き続き堅調である
2.アップルの上げが指数上昇に貢献した
3.9月12ごろ発表見込みの「iPhone5」への期待が株価上昇の原因
4.iPhone5の発表後は材料出尽くしの売りも覚悟すること
5.携帯電話会社における加入者成長率の鈍化は懸念材料
6.中国におけるアップルの人気も以前ほどではない

アップルがけん引するNY株式市場

 先週(8月13日~17日)のニューヨーク市場の動きを見ると、ダウ工業株価平均指数が+0.5%、S&P500指数が+0.87%、ナスダック総合指数が+1.8%でした。

 このうちナスダック総合指数と&P500指数の上げが大きかったわけは、アップル(ティッカー:AAPL)の力強い上昇によるところが大きいです。ちなみにアップル株は先週、+4.3%上昇しました。

 アップルは現在、時価総額が6000億ドルを超える世界最大の株式銘柄で、ナスダック総合指数に占めるアップルの比率は約12.6%(*)、S&P500指数に占める比率は約4.6%です。

 そのアップルは、8月17日(金曜日)に$648.11と引け値ベースで過去最高値をつけています。

 ある企業の株価は、過去最高値をつけるとそこから新しい買い手が現れるケースが多いので、ごく短期的にはアップルにも引き続き強気のスタンスを維持すべきだと思います。

 では、中期的にはアップルの株価はいつまで上昇を続けるのでしょうか。それを見極めるには、まず現在の“アップルラリー”の理由を知る必要があります。

(*)ナスダック総合指数と混同してはいけない株価指数に「ナスダック100指数」という株価指数があります。ナスダック100指数はその名の通り、100銘柄から構成されている株価指数で、ETFなどの株価指数に依拠した金融商品を設計しやすくするために作られた株価指数です。
組み入れ銘柄数が少ない関係で、ナスダック100指数に占めるアップルの比率は19.2%になっています。皆さんがCFDなどを通じてナスダックの株価指数をトレードする場合、それが依拠しているのはこのナスダック100指数ですから、アップルの株価の動きにより大きく影響されることに注意が必要です。

 

アップル株はなぜ上がっている?

 アップルの株価が新高値をつけている理由は、「9月12日ごろにiPhone5(と呼ばれている新機種)が発表される」という観測があるからです。

 この噂を裏付ける根拠として、米国のアップルストアでは8月12日から新製品発表を控えた在庫処分の目的で、旧製品(現行製品)のiPhone4Sが50ドル値引きされ、$149.99で売られていることがあります。

 また、7月25日に発表された同社の第2四半期決算では、iPhoneの売り上げが市場予想2900万台に対して実績2600万台と予想を下回りました。新製品発売を予期した消費者が、買い控えをしたのがその原因です。

 前回の新製品発表(iPhone4S)が全面的なリニューアルではなく、部分的なアップグレードにとどまったこともあり、「5」に対しては巨大な買い替え需要が積み上がっていると言われています。このことも投資家の事前の期待が高まっている一因です。

 ちなみにアップルの第2四半期決算は、EPSが予想の$10.37に対して結果が$9.32、売上高も予想の374.3億ドルに対して結果が350億ドルと、業績的にはいずれも大きく期待を裏切るものでした。

 同社の決算がこれほど大きく予想を下回るのは、珍しいことです。

 さらに第3四半期の売上高に関する会社側予想の340億ドルという数字は、普段にも増して控え目でした。これはiPhone5発売前の買い控えを考慮に入れているからだと思います。

 つまり現在のアップルの株価は、業績を手掛かりに買われているのではなく、ひとえに新製品発表に対する期待から買われているのです。

 投資家の非常に高い期待のもとで高値を更新しているアップル株ですが、リスクもあります。

絶好調の陰に潜む懸念材料

 アップルの今後の株価上昇に対する懸念材料の1つは、「相場は知ったら、しまい」ということです。この諺の通り、実際にiPhone5が9月12日に発表された場合、それがかなりエキサイティングな新製品であったとしても、好材料の出尽くしでラリーが一段落してしまう可能性があるということです。

 さらに、米国の携帯電話会社の加入者成長率が鈍化していることが懸念材料として挙げられます。

 今回、アップルがiPhone4Sを値引きするに至ったそもそもの原因は、ムリな買い取り契約をアップルと締結したスプリント(米の携帯通信会社)が、iPhone4Sの過剰在庫の処分に困ってディスカウントをはじめことにあります。

 いかに携帯電話会社にiPhoneを買い取らせたからといって、彼らに売れ残った端末を投げ売りされたら、アップルとしては対抗上、アップルストアでも値引きをせざるを得ないわけです。今回の出来事(アップルストアでの値引き)は、奇しくも新機種発売の予兆として株価を高騰させましたが、1つの教訓を含んでいたと思います。

 もうひとつの悪材料は中国市場です。中国の消費者はiPhoneが大好きで、過去の決算が予想を上回ってきた原因のひとつが中国市場の好パフォーマンスでした。

 しかし今回の決算では、中国市場の成長が予想されたほどでもなかったのが印象に残りました。中国でのiPhone販売が鈍化すれば、今後のアップルの成長に影響が出てくると考えられます。

 今現在は、新iPhoneへの期待がすべての悪材料を覆い隠している状態ですが、9月12日ごろにiPhone5が発表された後は、これらの懸念がにわかに表に出てくるものと思われます。

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