早いもので、2022年も新年度がスタートしました。少し古いデータになりますが、カード会社のJCBが全国の男女1000人(20~60代)を対象に行った『キャッシュレスとデビットカード利用意向に関する実態調査2019』によると「新年度の目標は何か」という問いに対し、最多の回答は「貯蓄」だったそうです。ちなみに、2位は「生活費の見直し・節約」で、1位、2位ともにお金絡みとなっており、家計改善の必要性を感じている人が多数派だったことがわかります。
この調査は、2015年から2019年まで毎年3月に実施されてきましたが、5年連続で1位と2位は変わらず「貯蓄」「生活費の見直し・節約」という回答が過半数を占めたそうです。新生活に向けて物入りになりがちな3月実施ということで「出費がかさむ時期を乗り越えたら、気を引き締めてお金を貯める!」と考える人は、普遍的に多いということかもしれません。
さて、新年度から貯蓄する、節約すると決めたなら、日頃から“貯まる行動”を心がけることをおすすめします。以前、この連載で“お金を貯めるための仕組みづくり”について紹介しましたが、貯める場所(金融機関)を見直したり、NISAやiDeCoといったお得な制度を活用したり――といった仕組みづくりをすることも、貯まる行動の一つと言えます。
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そのほか、日常の中でちょっとした意識改革をするだけで、簡単にできることもあります。そこで、ここからは新年度から始めたい“3つの貯まる行動”を紹介します。
【貯まる行動①】“お金の払い方”にもっと興味を持つ
私たちはほとんど毎日のように、モノやサービスに対してお金を払いながら生活しているわけですが、みなさんは“お金の払い方”について、何かこだわりを持っているでしょうか?
現金決済がメインの人は、自分に合ったキャッシュレス決済がないかどうか、調べたことはありますか? あるいは、ずっと同じクレジットカードを使っている人は、よりお得で自分のライフスタイルに合ったカードが出ていないか調べるなど、情報をアップデートしているでしょうか?
FPとして、さまざまな人たち――資産運用や貯蓄の達人から、家計管理に悩む人まで――を見聞きしてきた経験からいうと、お金に関連する新しい情報に敏感な人は、たいてい貯め上手です。
彼らは常に、最新のキャッシュレス決済の情報をリサーチしていたり、お金の流れの仕組み作り(どの口座から引き落とし、どの決済手段を選ぶか、など)を研究していたりします。お金の払い方に関すること以外にも、たとえば金融機関の便利なサービスや、手数料・金利に関する情報、税制優遇口座やふるさと納税、確定申告などの制度の改正や、その乗りこなし方まで、お金に関連する情報は漏れなくキャッチしています。
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普段、そうした行動をとっていない人からすると「大変そう」「マネできない」と感じられるかもしれません。ただ、最近はSNSなどで、節約やお金関係の情報を発信している人がたくさんいます。私自身もYouTubeのvlogで、お金に関する話も交えた動画を配信しています。そういったアカウントの中から気に入ったものをフォローし、定期的に回遊するだけでも、一通りの最新情報を得られるでしょう。一昔前に比べると、情報収集の方法にバリエーションが増え、自分好みのものが見つかりやすくなったことは間違いありません。
「現金主義だから、キャッシュレス決済の最新情報は必要ない」という人も少なくないと思います。先ほど紹介した『キャッシュレスとデビットカード利用意向に関する実態調査2019』では「キャッシュレス派」か「現金派」かという質問もしており、結果は五分五分といったところでした。2019年の調査なので、コロナ禍を経た現在は、もっとキャッシュレス派の割合が上がっている可能性がありますが、現金決済にこだわる人が一定数存在するのはたしかです。
後払い式のクレジットカードなどを使っていると、つい浪費したり、家計の記録の仕方が複雑になったりするため、あえて現金主義に徹している場合もあるでしょう。こだわりを持って現金決済を選んでいるのであれば、それはそれで問題ありません。特に、クレジットカードなどでお金を使いすぎて、支払いに四苦八苦。お金が貯まっていかない――という自覚がある人にとって、後払い式の決済手段を封印するのは有効な手です。
他方で、意図的に現金決済にこだわっているわけではなく、「デジタルは何となく苦手だから」などの理由で現金決済のままにしているケースもあるはず。こちらのほうは、残念ながら貯まる行動とは言えません。
ちなみに、先ほどの調査で「昨年1年間に増やせた貯蓄額は?」という質問の答えを集計した結果、キャッシュレス派のほうが現金派よりも、貯蓄できた金額が圧倒的に多かったという興味深いデータもあります。キャッシュレス派の1年間の平均貯蓄増加額は83.2万円、これに対して現金派は34.2万円であり、キャッシュレス派のほうが2.4倍も多かったのです。
もちろん、これだけでキャッシュレス派になったほうが貯蓄しやすいと考えるのは早計でしょう。ただ、キャッシュレス派の中に、お得なお金情報を知ることに貪欲な人も多いということは、この数字が物語っていると言えそうです。
【貯まる行動②】“トク”を追求して“ソン”をするパターンに敏感になる
コロナ禍の影響もあって、ネットショッピングの利用件数は加速度的に増えています。インスタグラムなどのSNS経由で購買意欲を刺激され、ついお金を使ってしまうという人も多いのではないでしょうか。ネットショッピングは非常に便利なので、もはや利用しないことも難しい状況ですが、お金を使わせるためのワナがあちこちに仕掛けられていることは、常に意識しておかなければなりません。
ネットショッピングで非常に多いのが「ショッピング金額〇〇円以上で、送料無料」などの文言です。必要な買い物をするだけで送料無料になる場合はいいのですが、ありがちなのが「送料無料にするため、必要のないものを追加で買ってしまう」という行動。もちろん、これは貯まる行動とは言えません。
同様に、ポイントアップデーの無計画な買い回り。あるいは、何気なく覗いたサイト(あるいは実店舗)のセールで、大幅に値引きされていたからと、予定外の買い物をしてしまう。「〇個以上まとめて買うと〇割引」とあったので、不要なものを買い足してしまう――これらはいずれも、トクを追求した結果として生じた行動です。
そうした行動で買ったものが、本当に役に立ったり、気に入ったりすれば結果オーライなのですが、往々にして「やっぱりいらなかった」となることも多いもの。これでは、トクを追求し、結果的にソンをするという本末転倒な状態になってしまいます。
トクを追求してソンするパターンを回避するには、ムダな“ついで買い”“安物買い”をしないことをマイルールにする必要があります。たとえば、送料無料のワナに陥りがちなら、送料を払ってムダなついで買いをしないようにする。どうしても送料を払うのがイヤなら、必要な買い物が送料無料になる金額に達する分だけ貯まるまで、買い物のタイミングを遅らせる。待てない場合は、ネットではなく実店舗で購入するルールにするのもいいでしょう。
もっとも、買い物に出かけるにあたって交通費などがかかることもあるので、結果的に送料を負担したほうが安い場合もあるはずです。送料と交通費(+自分の労力)を天秤にかけて、どちらがベターか考えてみるといいでしょう。
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【貯まる行動③】買い物について“振り返り”の回数を増やす
「貯蓄できない」と嘆く人たちの話を聞いていると、共通して「今週、自分がどれだけお金を使ったか、はっきり把握していない」「クレジットカードの今月の利用金額を把握していない」といったように、使ったお金について、やや無自覚な傾向があります。無自覚的にお金をダラダラ使っていると、家計はどこかで漏水している水道管のような状態になり、なぜだかわからないけどお金が貯まっていかない事態に陥ってしまいます。
そこで重要なのは、もっと意識的にお金を使うように心がけること。たとえば、お金を使う日と使わない日を決めて、使わない日は原則的に使わないことを意識しながら生活する。これだけでも、お金を使うという行動に対して意識的になっていると言えますし、実際に多少なりとも浪費は減らせるでしょう。
同時に、お金を使った場合は、こまめに振り返ることも重要です。毎日きっちり家計簿をつけるのは大変ですが、たとえばクレジットカードで買い物したら、利用明細をネットで定期的に確認する。家計簿アプリにカード情報を登録して、アプリを週に1~2度チェックするだけでもいいでしょう。
使ったお金の金額だけでなく、買ったものや貯めたポイントの使い方なども、時折振り返って考えてみることをおすすめします。必要だと思って買ったものの、結局あまり使っていないものを振り返る。たとえば、まとめて買うと安かった野菜。結果として使いきれずに傷んでしまったなら、少量ずつ買ったほうがよかった、ということになるかもしれません。多少高くても、長持ちしている洋服やバッグは、安いものを買うより利用頻度が高く、お買い得だった、ということにもなるでしょう。
お得だと思って貯めていたポイントが、実は利用期限切れでムダにしがちだったり、ポイントを使うためだけにムダな買い物をすることに結び付いていたりするケースもあるはずです。このように、使ったお金の金額、買ったもの、貯めたポイントなどを振り返り、反省点を洗い出すことで、ムダな買い物を削減することができます。
振り返りの作業には、そんなに時間をかける必要はありません。通勤の間のほんのひととき。仕事や家事の合間のすき間時間に、短時間割くだけでOKです。実店舗でお金を使ったら、その日のうちに財布からレシートを出し、そのときついでに振り返りの時間を作る、という程度でもいいでしょう。
さて、ここまで3つの“貯まる行動”について見てきました。3月は新生活の準備に向けて、出費が増えがちになる季節ですが、4月もまた、何かと出費が立て続く時期。固定資産税や自動車税の納付書が届き始めますし、年金を1年分など、まとめて前納する場合には、4月末が支払い期日なので、まとまったお金が出ていくことになります。負担がかかるときこそ、貯まる行動を心がけて、しっかり家計を守っていきたいですね。
(取材/元山夏香)
一級ファイナンシャル・プランニング技能士、宅地建物取引士。会社員だった26歳のとき、貯蓄80万円でありながら自宅用としてマンションを衝動買い。物件価格以外にも費用がかかることを知り、あわててお金の勉強と貯蓄を開始。年間貯蓄額を一年で6倍まで増やす。その後、自身の体験を活かしてマンション販売会社に転職。年間売上一位の実績を上げる。2013年、ファイナンシャル・プランナーとして独立。著書は『超ど素人がはじめる資産運用』(翔泳社)、『デキる女は「抜け目」ない』(あさ出版)、『ケチケチせずにお金が貯まる法見つけました!』(王様文庫)など多数。日常の記録にお金の情報を織り交ぜる「FUROUCHI vlog」を更新中⇒https://www.youtube.com/c/FUROUCHIvlog/
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