成長する米国&世界に投資する最強のFIRE計画(プロジェクト)

日本の投資家への警鐘:「数年間で数億円作る」というような「夢の数字」に惑わされるな! 5~10%の年率リターンでも長期投資なら資産は大きく膨らむ

2025年9月24日公開
ポール・サイ
facebook-share
x-icon
このエントリーをはてなブックマークに追加
RSS最新記事

 みなさん、「数年間で数億円作る」みたいな派手なタイトルの投資本をよく見かけませんか?

 これ、めちゃくちゃインパクトがありますよね。

 でも、投資でこういった資産を作るのに必要な年率リターンを冷静に計算すると、実はとんでもない話だとわかるんです。

20年間、60%近いリターンを毎年積み重ねるのはほぼ不可能

 たとえば、300万円を5年で1億円に増やすというケースを考えてみましょう。

 これを達成するには、年率でどのぐらいのリターンが必要でしょうか? 計算してみると、なんと約102%のリターンが必要だとわかります。毎年、約2倍になる計算です。

 これは普通の株式市場では、まず再現できません。

 さらに、50万円を20年で50億円に増やすケースを検討してみましょう。

 この場合に必要な年率リターンは約59%。20年間、60%近いリターンを毎年積み重ねるなんて、ほぼ不可能です。

世界最高峰の投資家ですら年率リターンの限界は20~30%程度

 では、現実的には投資でどのくらいの平均リターンを得ることが可能なのでしょうか?

●ウォーレン・バフェットは年率約20%を半世紀以上

●ジョージ・ソロスは年率30%程度

●デイビッド・テッパーは年率20%台

 これが世界のトップ中のトップです。

 つまり、「20~30%」というのが、持続可能なリターンの上限と言っていいでしょう。102%や59%なんていう数字は、夢物語のようなものと言っていいと思います。

世の中に「宝くじ的リターン」は確かにある

 もちろん、世の中には一発大当たりもあります。

 たとえば、宝くじで300円が1億円になったとしたら、その年のリターンは333332%です。数字としては途方もないものの、これは持続できるものではありませんよね。

 当たった人のやり方をマネしたところで、宝くじの当選確率が上がるわけでもありません。なぜなら、宝くじの場合、そもそも運が決定的な要素だからです。

 また、こうした投資本で紹介されている手法は、多くの場合、プロの投資家たちが取り入れている「定番」のやり方です。つまり、投資本の「5年で10倍」みたいな話は、著者本人は確かに達成できたことなのかもしれませんが、その本を読んでマネしても再現するのはとても難しいと思います。「宝くじの当たり」を一般化するのが難しいのと同じようなことだと考えます。

投資ではリターンに目が向かいがちだが、その背後にあるリスクも考えなくてはいけない

 投資ではリターンに目が向かいがちですが、リスクのことも考えなくてはいけません。リスクとリターンは切り離せない関係にあります。

 リスクの高い銘柄や集中投資で大きな成果を上げることは可能ですが、その成功を長期的に持続できる投資家はごくわずかです。また、実際の結果からその背後にあったリスクの大きさを見極めるのは困難でもあります。

 現実には「低リスク・高リターン」は極めて稀なことです。

 たとえば、損失を取り戻そうとして、リスクを積み増すマーチンゲール的な発想は破綻につながりやすいです。マーチンゲールは負けるたびに賭け金を倍にして損失を回収しようとする戦略ですが、資金が尽きてゼロになれば再起不能になります。

 ベンチャーキャピタルの世界でも「テンバガー(10倍株)」を狙う一方で、多くの投資がゼロになることを前提にしており、本質的には分散投資によって、その極端なリスクを打ち消そうとしています。

 それよりも、着実な分散投資と長期積立によって資産を築く方がはるかに堅実で再現性があります。結局のところ、単にリターンを追うのではなく、「リスクをどう理解し、管理するか」ということこそが投資の成否を決めるのです。

日本で「夢の数字」の本が売れる理由

 なぜ、日本では「数年間で数億円作る」みたいな派手なタイトルの本がうけるのでしょうか?

 理由はシンプルで、社会全体で給料や資産が短期間で大きく増えることが期待しにくいからだと思います。

 その分、「短期で資産を大きく増やしたい」という夢に惹かれやすい。しかも「300万円→1億円」といったわかりやすい数字を提示されると、「自分にもできそう」と錯覚してしまう。出版社もその心理を知っているので、派手なタイトルをつけて売りにいくわけです。

アメリカの読者は「短期間で10倍!」みたいな本に懐疑的

 一方、アメリカでは事情が違います。

 SEC(米証券取引委員会)やFTC(米連邦取引委員会)の規制が厳しく、誇張表現をすると、すぐに訴訟リスクが出てくるのです。

 加えて、読者の側も「短期間で10倍!」みたいな本には懐疑的です。

 むしろ、売れるのは『The Intelligent Investor』(邦題『賢明なる投資家』)のように投資の原則を説く本や、『The Psychology of Money』(邦題『サイコロジー・オブ・マネー』)のように投資と人間心理を結びつける本です。

 つまり、アメリカでは、信頼性や物語性、哲学が重視されているのです。

アメリカの普通の人たちが成し遂げている「現実的な成功」

 ここで1つ、私自身の観察を。

 私の周りにはアメリカ人の友人がたくさんいます。彼らは別に元々、大金持ちの家に生まれたわけではなく、普通の会社員や公務員です。特別に高給取りというわけでもありません。

 でも、コツコツ投資を続けてきた結果、今ではミリオネアとなり、安心してリタイア生活を送っている人が少なくないんです。

 ポイントは、「短期で10倍」を狙ったわけではないこと。

 時間をかけて、複利の力を信じ、毎月、毎年、地道に投資資金を積み上げただけなんです。これが投資の本質です。

[参考記事]
公務員の彼は40歳で100万ドル(約1億6000万円)の資産を築き、FIREを達成した! 給与は高くなくても、節約と複利の力でFIREは十分達成可能だ
本格的に長期で投資したらFIREできるのに人間は短期で大儲けしたい心理になりがち。それを克服してFIREするための3つのやり方とは?
スーパーの特売品を狙っていた非高所得者が約12億円の資産を形成!節約+複利効果がある投資のスゴさ

 フィデリティの調査によれば、アメリカの確定拠出型個人年金制度の1つである401(k)口座のうち、残高が100万ドルを超える「401(k)ミリオネア」は401(k)口座全体の2~3%を占めています。

 宝くじで100万ドルが当たるのは極めて低い確率です。それよりも確定拠出型年金でコツコツと積立投資を長期で続けた方が、はるかに資産を築ける可能性が高く、現実的なことと言えるでしょう。

日本文化と日本人投資家の間にあるギャップ

 実は「コツコツ積み重ねる」ということ自体は、仕事においても、学問の世界においても日本で大切にされてきたことではないかと思います。

 日本文化は元々、忍耐と継続を美徳としてきました。

 ところが投資になると、一転して「短期間で大きく増やす話」に飛びつきやすい。これは本来の日本の文化から外れているとすら言えるのではないでしょうか。

投資について守るべき3つの行動指針とは?

 だからこそ、私はここで次のことを強く言いたいと思います。

●年率70~100%を狙うのは投資ではなく、宝くじ的発想

●一般の投資家が目指すべきは、5~10%程度の現実的リターンを長期的に積み重ねること

●投資は「忍耐」と「一貫性」が武器になる世界

 そして、投資について、私は以下の3つの行動指針を守るべきだと考えます。

(1)「夢の数字」ではなく、「現実的な複利の力」を信じる

→ 5~10%の年率リターンでも、20年、30年と続けていけば資産は大きく膨らむ。

(2)集中投資ではなく、分散投資を心がける

→ 一発逆転狙いの一点集中投資は投機に近い。安定性を重視しよう。

(3)投資を宝くじにしない

→ 運や偶然に頼るのではなく、合理的な戦略と時間を味方につける。
イラスト:いらすとや

 結論として私は「日本の投資家よ、そろそろ原点に戻るべき時だ」と言いたいです。

 忍耐と継続という、日本人本来の美徳を投資に活かし、堅実に資産形成を進めましょう。

 派手な夢よりも、地道な積み重ねこそが最も確実な道なのです。

 

●ポール・サイ  ストラテジスト。外資系資産運用会社・フィデリティ投信にて株式アナリストとして活躍。上海オフィスの立ち上げ、中国株調査部長、日本株調査部長として株式調査を12年以上携わった後、2017年に独立。40代でFIREし、現在は、不動産投資と米国株式を中心に運用。UCLA機械工学部卒、カーネギーメロン大学MBA修了。台湾系アメリカ人、中国語、英語、日本語堪能。米国株などでの資産運用を助言するメルマガを配信中。

※メルマガ「ポール・サイの米国株&世界の株に投資しよう!」募集中! 米国株&世界の株分析毎週届き、珠玉のポートフォリオの提示も! 登録から10日以内の解約無料。


ダイヤモンド・ザイ 2025年12月号好評発売中!
ダイヤモンド・ザイのウェブ会員登録はコチラから 最短翌日!口座開設が早い証券会社は? おすすめ!ネット証券を徹底比較!おすすめネット証券のポイント付き
ZAiオンライン アクセスランキング
1カ月
1週間
24時間
moomoo証券は「米国株」投資におすすめの証券会社! 三菱UFJ eスマート証券(旧:auカブコム証券)の公式サイトはこちら! 三菱UFJ eスマート証券(旧:auカブコム証券)の魅力を徹底解説!NISAは全商品が手数料無料!「クレカ積立で最大3%還元!」「普通預金金利が大幅アップ!」などメリット多数! 楽天カードは年会費永年無料で、どこで使っても1%還元で超人気! 【マイルの貯まりやすさで選ぶ!高還元でマイルが貯まるおすすめクレジットカード!
moomoo証券は「米国株」投資におすすめの証券会社! 三菱UFJ eスマート証券(旧:auカブコム証券)の公式サイトはこちら! 三菱UFJ eスマート証券(旧:auカブコム証券)の魅力を徹底解説!NISAは全商品が手数料無料!「クレカ積立で最大3%還元!」「普通預金金利が大幅アップ!」などメリット多数! 楽天カードは年会費永年無料で、どこで使っても1%還元で超人気! 【マイルの貯まりやすさで選ぶ!高還元でマイルが貯まるおすすめクレジットカード!
ダイヤモンド・ザイ最新号のご案内
ダイヤモンド・ザイ最新号好評発売中!

10倍株の見つけ方&
プロ厳選62銘柄
理論株価より割安な株

12月号10月21日発売
定価990円(税込)
◆購入はコチラ!

楽天で「ダイヤモンド・ザイ」最新号をご購入の場合はコチラ!Amazonで購入される方はこちら!

[10倍株の見つけ方&プロ厳選]
◎巻頭特集
手遅れにならないよう今から着手!
2025年NISA年末戦略
●[戦略1]儲かっている/損している株・投信は?今の資産をどうする?
●[戦略2]投資先の内訳をチェック!来年に向けてどうする?
●[戦略+α]2021年の投資分は売却もアリ!期限切れになる旧NISAどうする?

◎第1特集
アナタの身近にもある!
10倍株の見つけ方&プロ厳選銘柄62
5年で1億円作ったkenmoさん
10倍株の見つけ方講座
プロイチオシの今年のIPO4銘柄も!
●爆速成長・ストーリーで買う10倍株

人気テーマ・海外で躍進する10倍株
●収益拡大・決算書から見抜く10倍株

●IRイベントで10倍株を発掘する
●赤字のボロ株5銘柄で一発逆転を狙う

◎第2特集
初心者でもわかる!桐谷さんも愛用!
ザイの理論株価の使い方&注目の割安株28

●理論株価のしくみを大公開
●使い方&注目の割安3パターン
●優待名人・桐谷さん流3つの活用術

●実力も株価も成長!割安成長株
●買い時到来!割安転換株
●東証改革を機に見直し!株価改善株

◎第3特集
節約って実はこんなに楽しかった!
松本明子流ケチ道節約術26

●ストレスフリーなケチ道5カ条
●食費/日用品代/掃除/光熱費の節約術
●節約のプロに聞く!効果抜群の節約ワザ

【別冊付録】
利回り5%と値上がり益が同時に狙える!
NISAなら税金ゼロ!Jリート入門

●Jリートのすごさのヒミツ&まだ上がる理由
●投資先6タイプを徹底解剖
●Jリート選びのポイント4つ
●物流施設/オフィス/ホテルなど プロ厳選のJリート12銘柄+α

◎連載も充実
●10倍株を探せ!IPO株研究所2025年8・9月編
「話題の2社が初値2倍に!市場は大いに盛り上がった」
●ZAiのザイゼンがチャレンジ!目指せ!お金名人Vol.15
「学生時代の年金追納すべき?」
●17億円トレーダー・ジュンのFX成り上がり戦略Vol.10
「大衆心理から先を読む」
●おカネの本音!VOL40 小林邦宏さん
「130カ国体験で学んださまざまな稼ぎ方とタイムマシン経営術!」
●株入門マンガ恋する株式相場!VOL.108
「裏方なのにモテモテ! データセンター株」
●マンガどこから来てどこへ行くのか日本国
「中年世代がターゲット!SNS型の投資&ロマンス詐欺にご用心」
●人気毎月分配型100本の[分配金]速報データ
「日米の株式相場の上昇が追い風となり株式型が好調!」
●読者参加型企画・1カ月で上がる株を当てろ!
「9月はアドバンテストが1位!タイミーは売上下方修正で下落」


>>「最新号蔵出し記事」はこちら!


「ダイヤモンド・ザイ」の定期購読をされる方はコチラ!


>>【お詫びと訂正】ダイヤモンド・ザイはコチラ

「キャッシュレス決済」おすすめ比較 太田忠の日本株「中・小型株」アナリスト&ファンドマネジャーとして活躍。「勝つ」ための日本株ポートフォリオの作り方を提案する株式メルマガ&サロン

ダイヤモンド不動産研究所のお役立ち情報

ザイFX!のお役立ち情報

ダイヤモンドZAiオンラインαのお役立ち情報