マイホームを買うか、借りるか──。それは多くの人が昔から悩まされてきた重大テーマだろう。「東京五輪までは上がる!」と言われ、不動産価格は上昇を続けてきたが、現在は下落傾向にある。一方でマイナス金利の影響で住宅ローン金利はかつてないほどの最低水準になっている。つまり、買ったとしてもローン返済額は家賃より安い状態だ。2017年は「買い時」とも考えられるなかで、今マイホームを買うか、借りるか悩んでいる人は、どう判断すれば将来も後悔しないだろうか。
現在発売中の雑誌『めちゃくちゃ売れてる雑誌ザイが作った 今年こそお金持ち入門』では、マイホームを買うか借りるかをテーマにした「失敗しないマイホーム計画」特集を掲載! 今回はそのなかから、不動産投資などに詳しいオラガ総研株式会社の牧野知弘さんに聞いた「マイホーム購入派・賃貸派のメリットとデメリット」を紹介する。
2017年は買い時って本当? その考えが失敗の元に!
そろそろマイホームを買うべきか、まだ賃貸で過ごすべきか──。
その迷いの背景にあるのは「買い時」というキーワードだろう。
不動産市場はアベノミクスや東京五輪の決定を契機に価格が底打ち状態から上昇し活況を呈している。
ただ、「東京五輪まで不動産価格は上昇する」という強気の声もある一方で、国や専門会社などの調査によれば2016年下期からは過熱感があった価格に一服感が出てきて、手を出しやすくなってきている。
価格だけではない。住宅ローンに目を向ければ、マイナス金利導入で金利は史上最低レベル。2019年10月に消費税アップが予定されている点も忘れてはいけない。
「価格に手ごろ感があり、低金利で家賃並みのローン返済額で買えるなら購入したい。値上がりや増税前の早いうちに……」というのが購入派に多い意見だろう。
しかし、こうした「買い時」ばかりを探る議論に対して、不動産コンサルタントの牧野知弘さんは、「それは、物件価格や住宅ローンといった『入口』だけの視点で、失敗の元です」と警告を発する。
ローンを払い終われば「資産が残る」は幻想?
牧野さんが「『入口』だけの視点は失敗の元」と指摘するのは、どういうことか。つまり、マイホームの購入を、資産形成や投資という側面で見た場合、「途中」であるローン返済の確実性(=収入の安定性)や、最終的にはそのマイホームをどうするのかという「出口」までを視野に入れることが不可欠だというのだ。
「家賃は払っても何も残らないが、ローンは無理してでも払えば資産が残る」という声も購入を後押しする。
だが、マイホームを「資産」として考えるなら、なおさら出口を意識してほしい。人口は減少し、空き家も急増する今後、アナタが買えるような物件だと、どれだけの資産価値を維持できるだろうか。
家は「資産価値」ではなく、「利用価値」として見る考え方も
もちろん、マイホームは損得勘定だけで決めるものではない。長い人生を家族とともに豊かに過ごすための手段でもある。賃貸物件にはないメリットや充足感がマイホームにはたくさんある。これがマイホームを資産価値ではなく「利用価値」として見る考えだ。
ただ、その場合は他の資産があったり収入不安がなかったりなど、マイホームの資産価値が大幅に下落しても受容できる環境にある必要がある。
購入派・賃貸派のメリット&デメリットを知ろう
この記事を読み進めて、「今は家は買えない」と諦める人もいるだろう。その場合、老後の賃貸住まいへの不安も残るだろうが、家賃の下落傾向をはじめとして賃貸派には追い風もある。
そこで、判断するにあたって、購入、賃貸それぞれのメリットとデメリットを一覧にした。これらをしっかり理解して、失敗のない住まい選びをしてほしい。
【購入派】
<メリット>
○今なら低金利の住宅ローンで家が買える
○ローン完済後は老後生活も安心できる
○資産価値のある物件なら投資になり、子どもに財産として残せる
○自分の理想とする暮らしが楽しめる
○自分の好きなようにリフォームが可能
【※関連記事はこちら!】
⇒住宅ローンおすすめ比較[2017年版]
<デメリット>
×想定外の収入減などでローンの支払いが困難になるリスクも
×外部から見えない重大な欠陥が見つかることもあり、住んでみないと本当に欠陥がないかわからない
×子どもの成長や周辺環境の変化で住みづらくなった時に、簡単に引っ越せない
×定期的に税金や保険料、維持メンテナンス費がかかる
×特に新築マンションは建築原価の高騰などにより、割高な買い物になりやすい
×資産価値の下落により、売りたい時に売却しにくいケースもある
【賃貸派】
<メリット>
○家族構成、環境の変化、または収入が減少した時には、それに見合った家賃の物件に住み替えしやすい
○分譲マンションのような大規模修繕積立金、固定資産税といった余分な出費が少ない
○賃料はほとんど上がらず安定している
○頭金など購入にかかる分の費用を貯蓄や投資に回すことができる
<デメリット>
×老後も家賃を払い続ける必要があり、その分の生活費が心配に
×今のところ高齢者が住める物件の選択肢の幅が狭い
×使いづらくても、自由にリフォームできる物件はほとんどない
×家主の都合によって賃料アップや、建て替え時には立ち退きなどに遭うこともある
×購入した家のような充足感を感じにくいケースも
日本人は「購入を希望する人」が約8割!
しかし実際の「持ち家率」は約6割
国土交通省の「平成27年度土地問題に関する国民の意識調査」によると、購入派か賃貸派かについての質問に「土地・建物については、両方とも所有したい」と回答した人は79.5%、「借家(賃貸住宅)で構わない」と回答した人は12.7%と、圧倒的に購入派が多数を占めている。
ところが、総務省の「平成25年住宅・土地統計調査」によると持ち家住宅率は61.7%と、単純に比較できないものの前の調査結果と開きがある。住まいを購入したいと考えながら、実際は賃貸を選んでいる人が一定数いるようだ。購入か賃貸かで迷う理由は、先程に挙げたようにさまざまなメリット&デメリットがあるからだ。
改めて、購入派の大きなメリットを挙げてみよう。まず低金利の住宅ローンでマイホームが取得でき、それが“家”という形で手に入り、子どもに財産として残すこともできる。そして数年ごとにメンテナンス等が必要とはいえ、老後に最低限住み家を確保できるという安心感もある点だ。
デメリットとしては、収入にかかわらず一定のローン返済などのリスクがあること。将来も安定した収入が得られるか冷静に判断しないと、破たんしかねないので注意したい。
賃貸派の大きなメリットとしては、もしもの場合にも対応しやすいという点だ。収入が減っても気軽に住み替えしやすく、購入した場合のような、家を持つというリスクを抑えることができる。
デメリットとしては、持ち家ではないのでその物件に合わせた暮らしをするしかない点。好みに合わせたリフォームなども難しいだろう。
そして何といっても心配なのは、老後の生活費に関する点だ。家賃を払い続けるだけの年金などの収入か貯蓄がないと苦しくなることを忘れてはいけない。
(取材・文=sumica(株式会社ノート))
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