日経平均株価の1月17日終値が1万8813.53円と、株価指数先物・オプション16年12月物のSQ値1万8867.45円を終値で割り込んだことで、東京株式市場は17日以降、本格的な調整入りしているとみています。
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このため、私は、当面の日経平均株価に対する投資スタンスを「中立」、どちらといえば「弱気」に引き下げています。
なぜなら、足元の日経平均株価は、25日移動平均線(1月23日現在1万9268.37円)を割り込んで推移しているからです。よって、25日移動平均線を上回る、若しくは、今後急落してマイナス乖離が広がり、十分なテクニカルリバウンドが見込めるようになるまで、「強気」にはなれません。
強気になれない主因は、外国為替市場でドル安・円高が続いていることです。
例えば、1月23日のNY円相場は、前週末比1円95銭円高・ドル安の1ドル=112円65~75銭でした。トランプ新政権の保護主義的な政策が世界経済の混乱を招くとの警戒が強まり、米国債が買われ、米10年物国債利回りは前週末比0.07%低下し2.39%でした。この米長期金利低下が、ドル安の背景です。
トランプ大統領の就任により
急激な円高発生のリスクが!
ところで1月20日、ついに「米国第一主義」を前面に打ち出したトランプ政権が発足しました。
就任演説によれば、新政権の政策は「アメリカ製品を買うこと、アメリカ人を雇うこと」という2つのシンプルなルールに基づくということです。貿易、税制、移民、そして、外交といった全ての政策決定は、アメリカの労働者と家族に利益をもたらすために行うと同時に、新しい道路、高速道路、橋、空港、トンネル、そして、鉄道を国全体に建設することで、アメリカを再び偉大にするつもりだそうです。
そして、ホワイトハウスのホームページでは、貿易政策については、環太平洋経済連携協定(TPP)から撤退し、北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉をすることを約束しています。
トランプ大統領は、メキシコのペニャニエト大統領と1月31日に貿易、移民、安全保障について会談することで一致し、カナダのトルドー首相とは、近く会談するようです。そして、1月27日のトランプ大統領初の首脳会談の相手はメイ英首相で、米英間の自由貿易協定について合意を目指すということです。このように、トランプ外交は、就任直後から経済・通商面から動き出しました。
ここまでのところ、新政権の通商政策は過激な保護貿易主義的な色彩が非常に強く、先行きの米国経済に対して不透明感が強まっています。このため、外国為替市場でドルが主要通貨に対して売られ気味です。
今後、米国要人からの「ドル高・円安牽制発言」が飛び出すようだと、一段のドル安・円高に進む可能性があります。なぜなら、1月17日時点のシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)通貨先物市場での投機筋による円の持ち高は、3週連続で売越幅が縮小。前週比2009枚減の7万7830枚でしたが、依然として高水準に積み上がっています。
つまり、状況次第では、通貨先物市場発の急激な円高発生が危惧される状況なのです。
このような状況下の1月23日、トランプ大統領は、環太平洋経済連携協定(TPP)離脱に関する大統領令に署名しました。さらに、また、工場を米国外に移す企業に対し「極めて大きい国境税を課す」と話し、自動車貿易について「不公平だ」と名指しで日本を批判したということです。このように、トランプ政権発の円高の火種が燻り続けています。
米国のインフラ期待の高まりが
日本株にとってはポジティブな流れに?
ただし、米国政治に対する市場の関心は、新政権が2月に議会に提出する予算教書の内容と実現可能性に移っています。このため少なくとも、予算教書の内容が判明するまでは、新政権の要人発言でドル/円相場が多少ボラタイルに動いたとしても、大きなトレンドは発生しないとみています。
ちなみに、市場が見極めたいとしているポイントは、税制改革や大規模インフラ投資など、トランプ米次期大統領の政策の実現性の有無です。なぜなら、与党共和党の保守派は財政規律に厳しく、財政支出の拡大に慎重であるため、議会との調整が上手くいくかどうか不透明だからです。
なお、米新政権が保護主義的な通商政策を実行すれば、新興国等に比べて人件費が相対的に割高な米国内の生産が増えるため、米国製の製品価格が上昇するのは必然です。また、輸入課税を高めるなら、輸入物価も当然上昇することでしょう。
よって、米国内の物価は上昇し、インフレ期待が高まり、米国の長短金利は上昇することになります。これは金利面でドル高・円安要因となり、日本株にはポジティブな流れになるはずです。
このため、足元の日経平均株価は調整しているとはいえ、円安効果で下値不安は乏しいと考えています。
個人が10週ぶりに買い越しに転換
日銀とともに日本市場の買い支えを期待
さらに国内では、1月23日の安川電機(6506)を皮切りに、国内主要企業による2016年4~12月期決算発表が本格化しています。
昨年11月の米大統領選挙以降、外国為替市場では、「トランプノミクス」への期待を背景に、円安・ドル高が進みました。足元で若干円高に振れているとはいえ、ここまでのドル高・円安を受け、わが国輸出企業を中心とした今17年3月期業績の押し上げが確認できるかが注目しています。
円安効果が発現し主力の輸出企業の業績が押し上げられるようなら、日経平均株価のバリュエーションは上昇。日経平均株価の上値余地は拡大すると同時に、下値余地も限定されるでしょう。
需給面では、1月第2週(10日~13日)の外国人の買い越し額は1105億円で、3週連続で買い越しました。これに関しては特に驚きはありません。一方、個人も10週ぶりに買い越しました。買越額は67億円と非常の小さいものでしたが、個人が買い越しに転じたことは意外でしたし、正直、驚きました。
なお、1月第1週(1月4日~6日)まで、個人は9週連続で売り越しました。9週間の売越額は累計3兆1049億円に達しています。
つまり、個人の待機資金は潤沢です。よって、調整局面では、個人の買いが相場を下支えすることでしょう。当然、年6兆円ETFを買い入れる日銀も控えています。
日本市場は調整入りしたが下落は浅い?
今は無理せず、全力買いのチャンスを待て!
以上のことから、日経平均株価は調整入りしているとみてはいますが、下値は限定的とみています。押し目限界は24カ月移動平均線(1月23日現在1万8135.89円)です。ただし、その前に13週移動平均線(同1万8563.10円)が第1押し目メドです。
一方、当面の上値メドは25日移動平均線(同1万9268.37円)です。
基本的に、日経平均株価が調整局面入りしている間は、無理をせずリスク管理を徹底して、思いっ切り全力買いで勝負できるタイミングを虎視眈々と待ちましょう。
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