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中国のシャドーバンキング引き締めで、打撃を受けるセクターはここだ! シャドーバンキング問題が短期間で解決すれば、絶好の買い場が到来か!

2017年5月15日公開(2022年3月29日更新)
広瀬 隆雄
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中国政府がシャドーバンキングの規制に
本腰を入れて乗り出す

 中国政府がシャドーバンキングを抑えるため、引締めに乗り出しています。

 シャドーバンキングは「影の銀行」と訳されます。その定義は、「お金を集めて融資をする」という、本来、銀行が行う金融仲介業務を、証券会社やヘッジファンドといった銀行ではない金融業者が行うことを指します。シャドーバンキングのお金集めですが、具体的には、利回りを確約する信託ファンドがこれに相当します。中国では、これらの信託ファンドを「理財商品」と呼びます。

 シャドーバンキングは中国だけに存在するものではなく、世界中で、いろいろな形態をとって存在しています。だからシャドーバンキングがすべてダメだというわけではありません。

 しかし銀行の場合、厳格な規制や監視の下に運営されており、預金保険制度が整っている場合が多いです。さらに、何か問題が起きた時は中央銀行から支援を受ける仕組みや手続きが確立しているため、安心感があります。

 中国の銀行の場合、中国人民銀行から「これ以上は融資してはいけません」という総量規制をかけられています。また各行は、集めた預金の75%までしか貸し出せない規則になっています。さらに、銀行が融資する際は、その融資実行額の何パーセントかをリザーブ・リクワイヤメント(=準備金)として、中国人民銀行に留め置かねばなりません。その分は、銀行が運用に回せない「死に金」になりますので、銀行としては儲けの効率が悪くなるわけです。

 これに対しシャドーバンクは、「安全だ」とか「利回りを確約する」という甘い宣伝文句を使う業者が多いのですが、実際には規制の埒外に置かれており、乱脈な融資を行う場合が多いです。

 現在、中国には、8.5兆ドルのシャドーバンキング市場があると言われています。

シャドーバンキングの規制は
短期的には経済にとってマイナス要因に

 4月下旬に、習近平国家主席がシャドーバンキングのリスクを防ぐ指示を出しましたが、これを受けて短期金利は上昇しています。

 今回の措置は、将来に禍根を残すようなシナリオを未然に防ぐために打ち出された方針であり、それ自体は良いことだと思います。しかし、短期的に見れば、規制による引締めは中国経済の勢いを殺ぐ可能性があります。

 実際、すでに製造業購買担当者指数には陰りが見られます。

鉄鉱石の増産や中国政府の政策により
鉄鉱石の市況は軟化

 さて、このような事情を背景として、このところ鉄鉱石の市況が軟化しています。

 去年から今年の年初にかけて、鉄鉱石価格の堅調を見た国内業者が増産に走りました。また、鉄鉱石の輸入も+11%増加しました。

 その一方で、鉄鋼生産そのものは、政府の方針により過剰生産を抑え込みにかかっています。このため、今年はマイナス成長が見込まれています。

 つまり、生産するアテの無い投機的な動機で仕込まれた鉄鉱石が、過剰在庫となって積み上がってしまったのです。

 中国政府は非効率な製鉄所を閉鎖する指示を出していますが、これは地元の抵抗でなかなか実現していません。しかし今後、近代的な製鉄所へのシフトが進むでしょう。新しい製鉄所の設備は高品質の輸入鉄鉱石を原料としているので、海外からの鉄鉱石のマーケットシェアが伸びると予想されます。

 中国以外の市場を見ると、米国のSUVならびにピックアップ・トラックのブームにはやや陰りが見えています。これは将来の鉄鋼需要の減退要因です。

 またトランプ大統領が公約した大型インフラストラクチャ計画は、それが実現すると鉄鋼需要にも良い影響を与えると見られているのですが、議会との絡みで、成立の見通しは立っていません。

 鉄鉱石は、北京オリンピックの前後に中国の需要が急増したことを受けて、オーストラリアとブラジルの両方で大きな新規の開発が行われました。その関係で構造的な過剰供給となっており、それは未だ解消していません。

将来的な需要が予測される銅市場も
現在は再び軟調に

 世界の銅の約半分は、中国で消費されています。銅も、過去5年に渡る下落相場を経験し、去年ようやく底入れしましたが、最近、再び軟調になっています。

 銅は、上水道のパイプや冷蔵庫などに使われるほか、自動車でも使われます。とりわけ電気自動車は通常の自動車の3倍の銅を消費すると言われています。中国は2020年までに500万台の電気自動車を生産する目標を掲げています。

シャドーバンキング問題が短期で解決すれば
下落中の鉄鉱石や銅が狙い目に

 中国政府のシャドーバンキング抑制により、目先、中国の景気には翳りが見えており、コモディティ価格も下落しています。これが長引くかどうかは、もう少し時間をかけて観察する必要があるでしょう。しかし、価格が下落しているということは、将来的な買いチャンスと言えます。

 最後に具体的な銘柄ですが、まず鉄鉱石では、リオティント(ティッカーシンボル:RIO)ヴァーレ(ティッカーシンボル:VALE)が代表的な企業です。両社は事業規模が大きく競争力があります。しかし、積極的な投資が裏目に出ていて、現在は過剰生産能力を抱えて苦しんでいます。

 次に銅では、サザンコッパー(ティッカーシンボル:SCCO)フリーポート・マクモラン(ティッカーシンボル:FCX)を挙げることができます。このうちフリーポート・マクモランは、インドネシア政府と世界屈指の金・銅山であるグラスバーグの採掘契約の再交渉を強いられており、それにまつわる不透明感がつきまとっています。

 中国政府のシャドーバンキングの抑制が短期的に片付けば、この辺りの銘柄に買いチャンスが到来すると思います。

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