闇株新聞[2018年]

東芝の「虎の子」半導体事業会社が海外ファンドに買収された場合の末路とは?闇株新聞が懸念する東芝子会社の運命

2017年6月21日公開(2022年3月29日更新)
闇株新聞編集部
facebook-share
twitter-icon
このエントリーをはてなブックマークに追加
RSS最新記事
闇株新聞プレミアムメールマガジン 20日間無料!

東芝(6502)の半導体事業が海外ファンドによって買収されようとしています。本連載では前回、日産自動車(7201)と三菱自動車(7211)がフランスのルノーに“食い尽くされる”懸念について取り上げたばかりですが、海外ファンドに買収されてしまうのは外国企業に飲み込まれるよりも「はるかにタチが悪い」のだとか。その理由を投資のプロも愛読しネタ元にしている刺激的な金融メルマガ『闇株新聞プレミアム』が解説します。

東芝の「虎の子」半導体事業会社が海外ファンドに買収された場合の末路とは?  闇株新聞が懸念する東芝子会社の運命

買収に名乗りをあげているのは
いずれも外国企業+海外ファンド連合

 報道によると、東芝が分社化した半導体事業会社の買収に手を上げているのは、ウェスタン・デジタル(米)、ブロードコム(米)、鴻海グループ(台)、SKハイニックス(韓)だけであり、いずれも外国の事業体です。

 これらの事業体は用意できる資金に限界があり、いずれも海外ファンドと共同で入札することになります。今のところ組み合わせが確定しているのはブロードコムとシルバーレイク(米)だけで、どの事業体と組むかはわかりませんがKKR(米)とベインキャピタル(米)が参戦の意向を示しています。

 では、パートナーとなる事業体はともかくとして、KKR、シルバーレイク、ベイン・キャピタル(実力順に並べるとこの順番です)の各ファンドは、東芝の半導体事業を買収してどうするつもりなのでしょう?

 こうした買収案件のスキームは基本的にどの海外ファンドも変わりませんので、「定石」として説明します。

 仮に買収金額が東芝の要望通り2兆円で決まると、事業体が2割(4000億円)、海外ファンドが8割(1兆6000億円)を出資することになるでしょう。海外ファンドが出資する1兆6000億円のうち、彼ら自身の資金はせいぜい3割程度(4800億円)で、残りの7割(1兆1200億円)は金融機関からの負債(借り入れ)です。この手の案件に資金を貸す金融機関は、一時的な「つなぎ融資」も含めて金利以外にもかなりの手数料を取ります。

 買収の具体的の手順としては、まず事業体と海外ファンドがそれぞれに出資金を出して「特別目的会社(SPC)」を設立し、そこが半導体事業会社の全株式を取得するカタチになります。

 買収後の半導体事業会社の経営は事業体が中心となりますが、大株主はあくまで8割を出資する海外ファンドです。そのため、経営がうまくいかなければ海外ファンドが事業体を「解雇」してしまうこともありえます。

半導体事業会社は買収費用の
買い入れを自ら返済させられる

 そして、ここからがポイントなのですが、海外ファンドは特別事業会社を1兆1200億円の負債もろとも、半導体事業会社と合併させてしまうのです。

 つまり、半導体事業会社は自分たちを買収するために使われた資金を、自分たちでせっせと返済させられることになるのです。過酷なリストラや資産の売却などが行われ、利益が出れば借金返済に充てられ、設備投資は徹底的にケチられます。

 そうしてしばらくすると(最近は1~2年が多いようです)、海外ファンドは半導体事業会社を再上場させ、保有株の一部を売り出して当初の自己資金分(4800億円)の大半を回収してしまいます。半導体事業会社は負わされた負債がほぼそのまま残り、それから何年も返済に追われることになるでしゅう。

 海外ファンドに買収された場合の、東芝の半導体事業会社の命運はだいたいこんなものです。企業価値の向上などは完全に後まわし、海外ファンドにとって東芝の半導体事業会社は単なる投資対象に過ぎないのです。

 もしかしたら、東芝の現経営陣はその辺が理解できていないかもしれませんが、東芝に対する貸金回収を急ぎたい日本の金融機関は「完全に理解している」はずです。

[参考記事]
東芝は自ら「破滅の道」を突き進む!決算短信を出さず、危機感もまるでない(2017年5月18日公開)
東芝(6502)よ、なぜそれほどに死に急ぐ!?「地獄の扉」は開かれた、生還する唯一の策は…(2017年4月21日公開)

東芝の半導体事業といえば、日本にとっても「虎の子」でもあったはず。経営難の東芝が手離すのは当然としても、海外ファンドの手に落ちると骨の髄までしゃぶり尽くされ、ボロ雑巾のように捨てられてしまう……しかも、再びその株を売りつけられるのが日本の投資家とはことばもありません。刺激的な金融メルマガ『闇株新聞プレミアム』ではこれからも、他のメディアが取り扱わない経済界の裏側を、独自の視点・切り口で解説していきます。

闇株新聞PREMIUM

闇株新聞PREMIUM
【発行周期】 毎週月曜日・ほか随時  【価格】 2,552円/月(税込)
闇株新聞PREMIUM 闇株新聞
週刊「闇株新聞」よりもさらに濃密な見解を毎週月曜日にお届けします。ニュースでは教えてくれない世界経済の見解、世間を騒がせている事件の裏側など闇株新聞にしか書けないネタが満載。
お試しはコチラ

 

DPM(ダイヤモンド・プレミアム・メールマガジン)

●DPM(ダイヤモンド・プレミアム・メールマガジン)とは?

金融・経済・ビジネス・投資に役立つタイムリーかつ有益な情報からブログに書けないディープな話まで、多彩な執筆陣がお届けする有料メールマガジンサービス。
初めての方は、購読後20日間無料! 


世の中の仕組みと人生のデザイン
【発行周期】 隔週木曜日  【価格】 864円/月(税込)
世の中の仕組みと人生のデザイン 橘 玲
金融、資産運用などに詳しい作家・橘玲氏が金融市場を含めた「世の中の仕組み」の中で、いかに楽しく(賢く)生きるか(人生のデザイン)をメルマガで伝えます。
お試しはコチラ

堀江 貴文のブログでは言えない話
【発行周期】 毎週月曜日、水曜、ほか随時  【価格】 864円/月(税込)
堀江 貴文のブログでは言えない話 堀江 貴文
巷ではホリエモンなんて呼ばれています。無料の媒体では書けない、とっておきの情報を書いていこうと思っています。メルマガ内公開で質問にも答えます。
お試しはコチラ

 


ダイヤモンド・ザイ 2025年2月号好評発売中!
【クレジットカード・オブ・ザ・イヤー 2023年版】2人の専門家がおすすめの「最優秀カード」が決定!2021年の最強クレジットカード(全8部門)を公開! 最短翌日!口座開設が早い証券会社は? おすすめ!ネット証券を徹底比較!おすすめネット証券のポイント付き
ZAiオンライン アクセスランキング
1カ月
1週間
24時間
楽天カードは年会費永年無料で、どこで使っても1%還元で超人気! 【マイルの貯まりやすさで選ぶ!高還元でマイルが貯まるおすすめクレジットカード!
楽天カードは年会費永年無料で、どこで使っても1%還元で超人気! 【マイルの貯まりやすさで選ぶ!高還元でマイルが貯まるおすすめクレジットカード!
ダイヤモンド・ザイ最新号のご案内
ダイヤモンド・ザイ最新号好評発売中!

「株」全予測
人気株500激辛診断
優待年末年始

2月号12月20日発売
定価780円(税込)
◆購入はコチラ!

楽天で「ダイヤモンド・ザイ」最新号をご購入の場合はコチラ!Amazonで購入される方はこちら!

[「株」全予測/人気株500激辛診断]
◎新春特別企画
2024年に儲けた株&損した株も大公開!
桐谷さんのゆく年くる年

2025年も全力優待ライフ
◎第1特集
2年目NISAの必勝法!
112人のプロに聞いた!
2025年「株」全予測&儲け方

●日経平均は5万円へ!日本株の高値・安値予測
●生成AIブームも半導体は苦戦!
上がる株・下がる株
●国内利上げで銀行・金融が有望!
上がる業種&テーマ
●中央銀行の買いが継続!金(ゴールド)
●トランプ政権下でも下落傾向!原油
●ドル円は年後半に140円台に!為替
●オルカンの次に買う1本も!投資信託

◎第2特集
買っていい10万円株は97銘柄!
<2025新春>人気の株500+
Jリート14激辛診断

●投資判断に異変アリ!
買いに躍進!》トヨタ自動車、ホンダ…など
強気に転換!》ソニーグループ…など
●儲かる株の見つけ方[1]旬の3大テーマ
通期で上ブレ期待/AI関連で恩恵他
●儲かる株の見つけ方[2]5大ランキング
PBRが低く改善に期待の株/アナリストが強気な株/配当利回りが高い株
●2025年新春のイチオシ株
10万円株/高配当株/株主優待株/Jリート
●気になる人気株
大型株/新興株/Jリート

【別冊付録】
増益割安株は1178銘柄
上場全3916社の最新理論株価

◎第3特集
トランプ政権下でどうなる!?
人気の米国株150診断
●S&P500指数をプロが大予測

●Big8を定点観測!GAFAM+αを分析!
●買いのオススメ株
トランプ株/高配当株
●人気の124銘柄を徹底診断
ナスダック/ニューヨーク証券取引所

◎第4特集
ザイクラブ拡大版!2024年はどうだった?
ザイ読者の悲喜こもごも&2025年の投資戦略
ザイ編集部員のプチ反省&自慢大会も!


◎連載も充実!

◆目指せ!お金名人
◆10倍株を探せ!IPO株研究所2024年10月編
◆おカネの本音!VOL.29兒玉遥さん
◆株入門マンガ恋する株式相場!
◆マンガどこから来てどこへ行くのか日本国
◆人気毎月分配型100本の「分配金」速報データ!


>>「最新号蔵出し記事」はこちら!


「ダイヤモンド・ザイ」の定期購読をされる方はコチラ!


>>【お詫びと訂正】ダイヤモンド・ザイはコチラ

【法人カード・オブ・ザ・イヤー2023】 クレジットカードの専門家が選んだ 2023年おすすめ「法人カード」を発表! 「キャッシュレス決済」おすすめ比較 太田忠の日本株「中・小型株」アナリスト&ファンドマネジャーとして活躍。「勝つ」ための日本株ポートフォリオの作り方を提案する株式メルマガ&サロン

ダイヤモンド不動産研究所のお役立ち情報

ザイFX!のお役立ち情報

ダイヤモンドZAiオンラインαのお役立ち情報