日経平均株価は下放れし、多くの買い方にとって厳しい状況になっています。
日経平均株価の8月21日終値は、1万9393.13円でした。5日移動平均線(21日現在1万9609.75円)、25日移動平均線(同1万9899.33円)、75日移動平均線(同1万9923.72円)全てを下回り、且つ、25日移動平均線と75日移動平均線とが遂にデッドクロスしました。短期・中期の下落トレンドが発生したとの認識です。
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このような状況ですから、8月10日時点の信用評価損益率はマイナス9.94%と、前週末から0.74ポイント悪化しました。悪化は3週連続です。そして、14~18日の週の日経平均株価は259.33円(1.3%)安と5週連続で下落したため、18日時点の信用評価損益率は4週連続で悪化していると予想されます。恐らく、信用取引を行っている個人の手の内は週を追うごとに悪化していることでしょう。
ちなみに、これがマイナス20%近くまで悪化すると、追証が発生する水準となり、一般的に「セリングクライマックス」が発生し、底入れの目安になるといわれています。
評価損益率がここまで悪化してしまったため、信用取引を行っている投資家は、「戻れば売りたい」、「さらに下がったら、追証で売らざるを得ない」という状況いえるでしょう。よほど劇的に相場環境が回復しない限り、現状打破は難しいと考えます。
依然100%超の騰落レシオは
まだまだ下げ余地が大きい!
一方、これだけ日経平均株価が下落基調なのに、東証1部の騰落レシオ(25日移動平均)は18日時点で101.03%と、100%を超えています。最近は、東証1部の値上がり銘柄数が1000を超えながら、日経平均株価が下落することは珍しくありません。
これは、日銀のETF買い入れや、投資信託、年金資金による中小型株投資の影響とみられています。これまでの経験則が通じにくくなっているのかも知れません。
しかしながら、そうはいっても、経験則上、騰落レシオが80%を下回ってくると、それは短期的な売られ過ぎのサインであり、間もなく底打ち上昇するという目安になるといわれています。いくら投資主体動向に変化が出たとはいえ、東証1部の騰落レシオ(25日移動平均)100%超での底打ちの可能性は低いと思います。
つまり、今後の底打ちを想定するならば、騰落レシオの下げ余地は大きいとみています。
トランプ大統領への信任が急回復するか
米朝軍事衝突リスクが低下しないと、相場の回復は難しい
ここまでの投資環境が悪化した主因は、米国におけるトランプ大統領の信任低下と、米朝軍事衝突リスクが燻り続けていることです。トランプ大統領は8月15日、白人至上主義団体と反対派の衝突を「双方に非がある」と、米国の価値観を根底から揺さぶりかねない発言しました。これをきっかけに、トランプ米政権への信認が大幅に低下したのです。
8月21日には、ムニューシン米財務長官と共和党上院トップのマコネル院内総務がそれぞれ債務上限は引き上げられると述べたと伝わったようですが、現在時点では、議会の連邦債務上限の引き上げに向けた協議が難航するとの懸念が強まっています。
一方、8月21日から31日まで実施する米韓軍事演習に関して、北朝鮮は20日、「火に油を注ぐように情勢をさらに悪化させる」と反発しています。このような状況下、スケジュール的には、25日には故金正日総書記が軍事優先の統治を始めた「先軍節」、そして、9月9日には北朝鮮の「建国記念日」があります。ちなみに、昨年は9月9日に5回目の核実験を行いました。
このことから、少なくとも、9月9日までは、市場は米朝軍事衝突リスクを意識し続ける見通しです。
さらに今週は、米カンザスシティー連銀が、8月24~26日にワイオミング州ジャクソンホールで年次経済シンポジウムを開きます。25日にはイエレンFRB議長が「金融の安定」をテーマに講演します。FRBのバランスシート縮小開始決定を直前に控え、議長がどのようなメッセージを送るか、市場は注目しています。また、ドラギECB総裁も講演する予定です。ここで総裁が、金融緩和策の転換、すなわち、量的金融緩和の縮小(テーパリング)について地ならしをするかが注目されています。
以上のことから、今週の東京株式市場は動き難い、買い難い環境が続く見通しです。相場が反転するとしたら、ジャクソンホールのシンポジウムでのイエレン・ドラギ講演後の来週以降ということになるでしょう。
ただし、相場が上にいくためには、トランプ大統領の信任が急回復したり、米朝軍事衝突リスクが急低下することが必要と考えます。そうでなければ、現在の調整局面が続く公算です。
個人投資家は最悪のシナリオを想定し、
今は「生き残ること」を最優先に考えよう
様々な状況を考慮すると、現在の相場局面では、私は、個人投資家は最悪のシナリオを想定して行動するべきだと考えています。
具体的には、日経平均株価については、今後11月頃までにかけて、ミニマムで24カ月移動平均線(8月21日現在1万8127.33円)、マックスで60カ月移動平均線(同1万6326.62円)付近までの急落を想定しておくべきです。
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このシナリオが実現した場合、信用評価損益率はマイナス20%程度まで悪化するでしょうし、東証1部の騰落レシオ(25日移動平均)も80%を割り込み、最終局面では「セリングクライマックス」が発生し、経験則上の明確な買いサインが点灯するはずです。ザックリと言えば、今後の日経平均株価の値動きについては、2015年12月~2016年6月のような動きをイメージしています。
なお、このシナリオを白紙撤回する条件は、日経平均株価が13週移動平均線(8月21日現在1万9919.46円)を上回ることにしておきます。
この悲観シナリオが実現するか否かは、「神のみぞ知る」です。しかし、今はリスク管理を徹底して、「生き残る」ことを優先して相場に臨むべきであり、一発退場をしないように、慎重に運用するべきだと、私は考えます。
相場は下放れたとはいえ、まだ下落が加速しているわけではありません。今なら、買いポジションの縮小は余裕を持って行えるでしょう。だからこそ、万が一、急落に見舞われても大丈夫なように備えを今からしておきましょう。「備えあれば憂いなし」ですから。
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