ファイナンシャル・プランナー(FP)の花輪陽子です。先日、香港にある「Nippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank(NWB)」主催のセミナーに参加してきました。NWBは、日本の新生銀行やマネックス証券などが出資している金融機関です。今回は、そのセミナーで学んだ香港の最新金融情報をレポートしたいと思います。
香港では当局が金融商品を管理し、
ハイリスク&ローリターンな商品は販売しない
香港は金融が発達している都市です。香港の株式市場は時価総額が大きく、世界最大規模の新規株式公開(IPO)市場でもあります。
日本や欧州における規模が大きい金融機関の多くは、香港を重視して多くの人員を配置しています。香港がアジアトップクラスの金融センターとして、盤石の地位を維持し続けることは間違いないでしょう。東京やシンガポールも金融市場は発達していますが、どのようにしてこの強豪・香港と棲み分けていくのかが注目されます。
NWB(Nippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank)のセミナーでは、そんな香港の金融機関で販売されている金融商品について詳しく知ることができましたが、その洗練されたラインナップには驚かされました。
香港当局は、非常に厳しく金融商品の管理をしています。そのため、“リターンに見合ったリスクレベルの商品”しか、金融機関で取り扱っていない印象です。
リターンとリスクが比例するのは当然のことのようですが、日本には意外とそうでもない金融商品もあります。日本の証券会社でごく当たり前に取り扱っている投資信託などでも、香港ではリスクが高すぎて取り扱えないものが多いそうです。
日本の一般的な金融機関とは異なる
NWBのサービスや、金融商品のラインナップとは?
ちなみに、NWBで口座開設をする際には、「リスク許容度診断」が行われます。担当についたスタッフとは別のスタッフが、顧客の投資経験や収入、資産などから、総合的にリスク許容度を診断するシステムになっていました。これを行うと、顧客のリスク許容度に合わせて資産運用のプランニングをしてもらうことができるので、安心感があります。
具体的な金融商品の中身ですが、米ドル建ての投資信託がメインで、モーニングスターの格付けが高く、アジア通貨危機やリーマンショックを生き残った、長寿の投資信託が多い印象です。
日本の金融機関が設定した投資信託の場合、純資産総額の減少などが理由で繰上償還となって、運用が終了してしまうことも少なくありません。せっかくコツコツ積み立てをしても、投資信託が急に繰上償還をしてしまったら、投資家にとっては大きな打撃です。しかし、長寿の優秀な投資信託なら、こうした心配を高い確率で回避できます。
「外国債券のラインナップ」が充実している点が
香港の金融機関の大きな魅力!
また、シンガポールもそうですが、香港の金融機関は外国債券(外債)のラインナップが充実しています。ただ、多くは最低売買単位が約1000万円以上と、ハードルはかなり高めです。それでも、たとえば退職金をもらったとき、あるいは保険の満期金をもらったときなどに、2~3本の外国債券を組み合わせて買っておくことはできるかもしれません。
外国債券の中には、定年退職した世代の方に適したものもたくさんあります。老後の収入を考える場合、年金は2カ月に一度の支給になるので、収入が入らない月が出てきます。外国債券は半年に一度クーポン(金利)を受け取れることが多いのですが、年金支給がない月にクーポンを受け取れるように外国債券を買っておくと、年金以外にも収入の源泉を持つことができます。
現役世代の中には、定年退職後に収入が減ることを不安に思っている人も多いでしょう。退職したからといって、急に生活水準を落とすのは難しいので、40~50代のうちに老後の収入をどのようにして補うか、プランを立てておくことが重要です。
債券の場合、満期まで持てば、原則として元本割れせずに資金が戻ります。株式も配当金を受け取れますが、価格変動が激しいという側面があります。その点、債券なら心の安定を保ちながらクーポン収入を得られます。
ただし、香港やシンガポールの外国債券は、米ドルなど外国通貨建てになっているので、日本で生活をする人にとっては「為替リスク」があるのは注意点です。外国通貨ベースでは元本割れしなくても、円換算すると元本割れしてしまう可能性はあります。よく海外旅行する(もしくは、老後に海外旅行をしたい)という人は、現地通貨のまま利用することも含めた上で、どれくらいの金額までなら為替リスクを取れるのか考えてから、投資を検討するようにしましょう。
香港やシンガポールの金融機関は、アジアの国や企業の債券ラインナップが豊富ですが、これは富裕層の多くが債券と投資信託を中心とした運用をしていることと無関係ではありません。日本の金融機関だと、個人が外国債券を購入しようにも、選択肢は米国債などごく一部の銘柄に限られてしまうので、香港やシンガポールの金融機関は魅力的と言えるでしょう。
日本に居住しながら香港で口座を開くのは難しいが、
NWBなら他の金融機関よりハードルが低い
それでは、香港の金融機関で口座を開くにはどうすればよいのでしょうか?
原則として、日本にいながら海外の金融機関に口座を開設することは、容易ではありません。近年、香港では日本語デスクをなくしているプライベートバンクも多く、老舗のHSBCですらも、最近は英語や広東語でかなり交渉をしなければ、口座の開設が難しいようです。
そんな中、NWBは日本語での対応を行っており、預け入れ金額などのハードルが低いことが魅力です。低価格で積み立てられる投資信託なども取り扱っており、香港の金融商品に興味を持っている日本人にとっては、かなり入りやすい入口と言ってもいいでしょう。
最後に、海外の金融機関を使った運用で、コスト面が割高になりはしないか――という問題ですが、基本的にコストは“預け入れ資産に合わせた金額”になるのが原則です。
資産とコストが比例する、という意味ではなく、少額での投資の場合はコストが割高になり、逆にプライベートバンクのような大口の投資になると、非常にコストは抑えられます。そのため、1000万円以上など、ある程度まとまった資産を運用したい人向きであると言えるでしょう。
今回、NWBのセミナーに参加をして、個人的にも購入したい投資信託や外国債券をたくさん知ることができ、ワクワクしました。そして、無駄遣いをやめて、老後に債券で安定した収入を確保できるよう励もうと決めました。
香港の金融商品に興味がある方は、旅行も兼ねながら香港のセミナーや金融機関巡りに気軽に参加してみてはいかがでしょうか。
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