相変わらず、市場はトランプ米大統領の発言や・ツイッターへの投稿に右往左往させられています。中でも、顕著に反応しているのが、ドル/円相場です。7月19日に一時1ドル=113円16銭の円安まで進んでいたのに、23日には一時110円75銭まで円高が進みました。
きっかけは、トランプ氏が7月19日の米CNBCインタビューで、FRBの利上げ方針を「好ましくない」と批判し、翌20日にも「金融引き締めはすべてを損なう」とツイッター投稿したことでした。また、トランプ氏は、中国や欧州を名指しで「通貨を操作し、金利を低くしている」とツイッターに投稿。さらに、トランプ氏は、20日放映の米テレビのインタビューで中国の輸入品すべてに関税を課す準備をしていると語りました。
この一連の発言・投稿を受け、市場では、一方的なドル高期待が大幅に後退しました。
日経平均株価が下落する中、
銀行株が全面高になった2つの理由とは?
そして、同時に、日経平均株価の上値追いへの期待も急速に萎みました。この結果、7月18日に2万2949.32円まで上昇した日経平均株価は、23日には一時2万2341.87円まで下落する場面があったのです。
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ただし、7月23日の日経平均株価の下落率が1.33%だったのに対して、TOPIXのそれはわずか0.36%にとどまりました。この主因は、指数寄与度の大きいファーストリテイリング(9983)、ソフトバンク(9984)、ファナック(6954)、TDK(6762)といった値嵩株が売られ日経平均株価を押し下げた一方で、三菱UFJフィナンシャルグループ(8306)、みずほフィナンシャルG(8411)、三井住友フィナンシャルG(8316)など、メガバンクのみならず、静岡銀行(8355)、千葉銀行(8331)、ふくおかフィナンシャルグループ(8354)などの地銀も全面高となったことが大きく寄与しました。
銀行株が買われた理由は大きく2つ、金利面と需給面です。
まず、金利面については、7月23日の新発10年物国債利回りは、前週末比0.050%高の0.080%で取引を終えました。また、無担保コール翌日物金利も上昇、同0.004%高のマイナス0.068%でした。
長短金利上昇の背景は、日銀が7月30~31日の金融政策決定会合で、長期金利の操作目標の柔軟化を検討するとの一部報道です。市場では、この日本の金利上昇で、邦銀の利ザヤが改善するとの思惑が強まりました。
次に、需給面については、日銀のETFの買い入れ手法等の変更への思惑の浮上です。現在のペースで日経225型ETFの買い入れを続けた場合、浮動株の大半を日銀が買い取ってしまい、一部の銘柄が更に「品薄株」になって株価を大きく歪めかねないとの批判があります。このため、市場では、日経225型が購入対象から外され、TOPIX型に一本化されるのではないかとの思惑が浮上しています。
もしそうなると、時価総額の大きい銘柄が多数存在する銀行株への買いが入り、銀行株の需給が劇的に改善するとの期待が高まったのです。
7月末に行われる日銀金融政策決定会合は
それほど警戒する必要はない!?
こういった状況になったので、7月30~31日の日銀金融政策決定会合の結果が判明するまでは、多くの投資家は動きにくくなりました。
ですが、私は特に警戒はしていません。2%物価目標を掲げている日銀は、今回の7月会合で「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」を見直します。4月時点で出した2018年度の1.3%、2019年度の1.8%、さらには2020年度1.8%の見通しの下方修正は不可避とみられている状況下、デフレ要因の円高を引き起こすようなことを、日銀は絶対に避けるはずとみているからです。
また、9月の自民党総裁選という政治日程を考慮すると、株安に直結するような結論にもならないでしょう。
9月の自民党総裁選挙の結果によっては
いよいよアベノミクスが終焉を迎える
ところで、日本経済新聞社の世論調査では、自民党総裁選挙で誰が選ばれるのがふさわしいかに関しては、1位が小泉進次郎筆頭副幹事長の27%、2位が安倍晋三首相の26%、3位が石破茂元幹事長の21%だったそうです。
私は、安倍首相の総裁3選で決まりだと思っていますが、万が一、番狂わせがあったら、当然それは「アベノミクスの終焉」を意味します。
仮に、財政再建重視で、増税推進論者が次期総裁になった場合、東京株式市場から脱兎の如く逃げ出すべきです。また、それほど強硬な財政再建論者でなくても、いまのところ、安倍首相以上の成長重視論者・リフレ派は候補者とされている政治家の中には見当たりません。なので、基本的に、安倍首相以外、誰が次期総裁になっても、いったん日本株は売りだと思います。
もちろん、日銀の黒田総裁、雨宮、若田部両副総裁の任期は2023年までの5年間です。このため、政治が財政再建重視、増税路線、結果としての「デフレ・株安政策」を打ち出しても、日銀がリフレ政策を継続してくれれば、いきなりの暴落は避けられるかもしれません。
しかしながら、経済は財政と金融が両輪となって、上手く機能します。財政緊縮・増税容認路線になるようならば、日本経済のデフレ化は鮮明となり、とてもではないですが、日本株は買えません。
このため、今後は、自民総裁選に関する各社の世論調査に注目しておくべきです。
安倍3選に黄色信号が点滅したら東京株式市場から逃げる準備、赤信号で完全撤収を完了……、この戦略の採用をお勧めします。その後、安倍氏以外の次期総裁の政策を見極めてから、再び、株式市場に資金を投入するか否かを、ゆっくりと判断すればよいでしょう。
逆に、青信号のままなら、長期的に弱気になる必要はありません。今週から本格化する3月決算企業の第1四半期決算の内容を吟味して、好業績が見込める会社の株を丁寧に拾っておけばよいと考えます。
日銀金融政策決定会合の結果によっては
メガバンクを中心とした金融株が物色の柱に!
また、日銀の今回の会合の結果次第では、メガバンクを中心にした金融株が物色の柱になるでしょう。とりわけ、個人が大好きなメガバンクは2015年6月、2015年8月のチャイナ・ショック時の株価を大幅に下回ったままで、推移しています。これが動意づくようなら、日経平均株価が冴えない動きになっても、多くの個人の相場の体感温度は上がるはずです。
現時点において、その確率は5分5分程度とみてはいますが、8月相場はそうなってくれたらいいなあと、期待はしています。
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