2018年第2四半期決算シーズンで
ネット株が相次いで急落!
先週の米国市場では、ネット株が散々なパフォーマンスを示しました。悪い決算のニュースが重なったためです。
ネット株の比重の高いナスダック総合指数は、週間ベースで-1.1%でした。その一方で他の指数は値を保ちました。S&P500指数は+0.6%、ダウ工業株価平均指数(NYダウ)は+1.6%でした。
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「フェイスブック・ショック」が発生!
来期も売上高成長率は伸び悩む見通し
中でも投資家を驚かせたのがフェイスブック(ティッカーシンボル:FB)の第2四半期決算です。
一株当たり利益(EPS)こそ予想1.70ドルに対し1.74ドルと良い数字だったのですが、売上高は予想133.5億ドルに対し132.3億ドルとコンセンサスに届きませんでした。加えて、来期も売上高成長率に急ブレーキがかかるという説明がありました。
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フェイスブックの苦境は1)同社に固有な理由と、2)業界全体にあてはまる問題に起因します。
まず、1)同社に固有な理由として、今年に入ってケンブリッジ・アナリティカというイギリスの会社がフェイスブックのユーザーの個人情報の取扱いに関し約束を破った事件が大きな話題を呼びました。
その後、フェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEOは米国の議会に呼び出され、公聴会でしぼられました。そんな経緯もあり、同社はユーザーのプライバシーならびに個人情報の管理を強化しました。
その一環として、ユーザーがオプトアウト(本人の希望で個人データの第三者への提供を拒否すること)することを可能にしましたが、これが広告収入の減少につながりました。
また、フェイスブックにおける広告の流し方が変わりつつある点も指摘できます。これまではニュースフィードに広告を直ぐ流していたのですが、より訴求力が高くユーザーが「邪魔だ!」と感じにくい、「ストーリー」という手法に軸足を移しています。
しかし、広告主はまだ「ストーリー」の活用法に習熟しておらず、移行に際して一時的に広告収入が落ち込んでいるのです。
次に、2) 業界全体の直面する試練として、今年5月から欧州連合が一般データ保護規則(GDPR)という個人情報保護ルールを導入しました。これにより、ユーザーの活動が鈍化したと説明されました。GDPRの悪影響が最も感じられるのは、第3四半期になると会社側は説明しています。
以上の要因により、次の第3四半期はもう一段と売上高成長率が鈍化するという説明がありました。
いまフェイスブックの費用は、前年比+50%のペースで成長しており、これは同社の売上高成長率(第2四半期の時点で+42%)より急速に膨張しています。したがって、営業マージンは今後どんどん低下すると懸念されています。
以上が先週、フェイスブックに起こったことです。
ツイッターも急落!
MAUもEBITDAも事前予想を下回る結果に
一方、ツイッター(ティッカーシンボル:TWTR)も先週決算を発表しており、こちらも大荒れとなりました。
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第2四半期のEPSは予想16セントに対し17セント、売上高は予想6.97億ドルに対して7.11億ドルでした。これらの数字は問題なかったのですが、月次アクティブ・ユーザー(MAU)数が、予想3.39億人に対して3.35億人と予想を下回りました。
さらに第3四半期の金利・税・償却前利益(EBITDA)が、予想2.68億ドルに対し会社側見通し2.15億〜2.35億ドルと落胆すべき内容でした。
ツイッターは、特定のユーザーへの嫌がらせの目的でしつこくアカウントを開設し粘着する者を排除する「大掃除」を行っています。これは、皆が気持ちよくツイッターを楽しめるようにするためには是非必要なことです。ただ、MAUという視点からは足を引っ張る要因になりました。
アマゾンもスッキリしない決算に
EPSは予想を大幅に上回るものの、売上高は今ひとつ
フェイスブックやツイッターほど話題にならなかったのですが、先週発表されたアマゾン(ティッカーシンボル:AMZN)の決算もスッキリしない内容でした。
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EPSこそ予想2.53ドルに対して5.07ドルと大幅に上回ったものの、売上高は予想533.7億ドルに対し528.9億ドルと落胆すべき数字でした。また第3四半期の売上高も、予想580.4億ドルに対し会社側の新しい予想は540〜575億ドルと、かなり控え目になっています。
投資家は、EPSが予想を大幅に上回ったので今回の売上高の未達は大目に見ています。しかし、そもそもアマゾンの経営陣は日頃から「売上高成長率に注目してくれ!」と投資家を誘導していたわけで、その意味ではもっと売られてもおかしくない場面だったと思います。
人気ハイテク銘柄の決算が悪かったのは
「業績相場」が崩れてきているサイン!?
先週はこのように波乱相場だったので、「業績相場は終わるのか?」という懸念を持つ読者もいるでしょう。そこで全体的な成績を見直してみます。
まず、これまでにS&P500指数採用企業のうち53%が決算発表を済ませました。つまりちょうど折り返し地点に来たわけです。
これらの決算発表した企業のうち、83%がEPSでコンセンサス予想を上回りました。また77%が売上高でコンセンサス予想を上回っています。したがって、「あちこちで悪い決算が出ているな」という印象とはウラハラに、全体としては決算はそれほど悪くないのです。
実際、2018年と2019年のS&P500のコンセンサスEPS予想の数字も、先週より少し上昇しています。
向こう12カ月(=2018年と2019年の予想の数字を足して2で割ったもの)のEPSに基づく株価収益率(PER)は16.6倍で、過去5年間の平均である16.2倍よりやや割高ですが、べらぼうに高い数字ではありません。
その一方で、EPS成長率は上のチャートでもわかるとおり良い感じで伸びています。従って好調なEPSの伸びを考慮するなら、この程度の割高さは我慢できる範囲でしょう。
次に、S&P500四半期EPSが前年同期と比べてどれだけ成長したかを示すチャートを掲げます。
現在は、2018年第2四半期のところにさしかかっています。ここでも、成長率は先週にくらべて少し上昇しており、前年比+21.4%になっています。
もうひとつ指摘しておきたいのは、2018年第1四半期から第4四半期にかけて、4四半期連続で+20%以上のEPS成長率を記録する予想になっているということです。これは、もし本当に達成されるのであれば極めて珍しいことであり、「偉業だ!」と形容できるでしょう。
つまり、先週のフェイスブックやツイッターのドタバタにもかかわらず、業績相場のシナリオ自体は未だ崩れているとは言いにくいのです。
それでは「どのセクターや銘柄が貢献したか?」といえば、セクターではヘルスケアの好調が寄与しました。具体的にはギリアド・サイエンシズ(ティッカーシンボル:GILD)、ブリストル・マイヤーズ・スクイッブ(ティッカーシンボル:BMY)、イーライ・リリー(ティッカーシンボル:LLY)などが好決算を発表し、ヘルスケア・セクターのEPS成長率がこれまでの+10.5%から+13.8%へと伸びたのが大きかったです。
さらに、通信、公益株などでも予想を上回る決算が全体の数字を押し上げる効果をもたらしました。
今回、決算の悪かった銘柄の株は処分し
好決算企業に投資しよう!
最後に私がルールとしていることは「悪い決算を出した企業の株は処分する」ということです。ここでの「悪い決算」とは、コンセンサス予想を下回る決算を指します。1)EPS、2)売上高、3)会社側のガイダンス(=今後の予想)、という3つのポイントに関して、ひとつでも予想を下回ったら、それは「悪い決算」です。
その基準でいえば、今日紹介したフェイスブック、ツイッター、アマゾンは全部失格です。だから処分してください。他に良い銘柄は幾らでもあります。
たとえば、先週決算を出した企業の中で上に書いた基準に合格した銘柄としては、クラウドを通じてプロジェクト・マネージメントならびにコラボ・ソフトを提供するアトラシアン(ティッカーシンボル:TEAM)があります。同社は「ジラ(Jira)」というポピュラーなデベロッパー・ツールを提供しています。
先週発表されたアトラシアンの第4四半期(6月期)決算は、EPSが予想12セントに対し13セント、売上高が予想2.33億ドルに対し2.44億ドル、売上高成長率は前年同期比+39.9%でした。
また、2019年度のEPSは予想66セントに対し新ガイダンス77セントが、売上高は予想11.1億ドルに対し新ガイダンス11.46億〜11.54億ドルが提示されています。
さらにアトラシアンは、スラック(Slack)という社内チャット・アプリの企業との業務提携を発表しました。その契約では、これまでアトラシアンが展開してきた独自の社内チャット・アプリの知的所有権を全部スラックに移譲するとともに、今後アトラシアンはマーケティングの際にスラックの社内チャット・アプリを優先するというものです。
これは、強い会社の強いサービス同士が手を結ぶ業務提携であり、アトラシアンにとって良いディールだと思います。
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