電気自動車メーカーのニオ(NIO)が
今週、ニューヨーク証券取引所にIPO
中国の高級EV(電気自動車)メーカーのニオ(NIO, Inc.、ティッカーシンボル:NIO)が今週、ニューヨーク証券取引所に新規株式公開(IPO)します。順調に行けば値決めは9月12日(水)引け後で、取引開始は翌13日(木)となる予定です。
中国は国策でEVを奨励
「生産するクルマの1割はEVに」
中国政府は、国策としてEVを奨励しています。その理由は、中国の都市部の大気汚染問題への取組みの一環としてEVが切り札になると考えているからです。中国政府はメーカー各社に対し「生産するクルマの1割はEVにすること」という通達を出しています。
また、新規のガソリン・エンジン車の工場建設は認めない方針です。
さらに、ガソリン・エンジン車を所有する認可(ライセンス・プレート)は「くじ引き」になっており、これは当る場合もあるし、外れる場合もあります。言い換えれば、消費者が確実にクルマを所有したいと思えばEVを買うほうが早いのです。
消費者がEVを購入する際、中国政府から大きな補助金が出ます。今日紹介するニオの主力製品である「ES8」の場合、1万1千ドルもの補助が出るのです。
ニオは、中国の自動車市場で
もっとも高成長率が見込まれるSUVに注力
中国の自動車市場は、クルマのグレードによって1)エントリー、2)ミッドレンジ、3)プレミアムの3つのカテゴリーに分類されます。
向こう5年の成長率を見ると、エントリー市場は年率+3.9%、ミッドレンジ市場は年率+4.5%、プレミアム市場は年率+12.4%で成長すると予想されています。つまり、プレミアム市場が最も急成長するのです。
エントリー市場でEVを出している企業は、BYD、GAC、SAICなどです。ニオはプレミアム市場に属し、価格帯で言えば6万から8万ドルの価格設定です。ちなみに、テスラは高い輸入関税を課せられるので、12万ドルくらいします。殆どの消費者には手が届きません。
次に、車種別で見ると下のチャートのようになります。
向こう5年の成長率は、セダンが年率+1.9%、SUVが+9.4%、多目的車が+0.7%です。つまり、SUVが最も急成長すると見込まれています。
ニオの主力製品は「ES8」というSUVです。同社がSUVに特に力を入れている理由は、上のような需要見通しに立脚しているからです。
中国のEV市場は既に世界最大です。
2022年にかけて、中国のEVがものすごく増えると予想されている点に注目してください。
つぎに、EVに代表されるガソリン・エンジン以外の動力源を搭載したクルマに絞って見れば、中国ではEVが主流で、アメリカなどで人気になっているハイブリッドはそれほど人気がありません。
向こう5年間のEVの成長率は、年率+40.8%と見込まれています。
現在80カ所のチャージステーションを
2020年までに500万カ所に増やす
ニオは、中国で初めてオリジナルのEVを出した会社です。過去3年に「フォーミュラE」、「EP9」、「ES8」、「ES6」、「ET7」などを次々に発表しました。同社は実際の生産をアウトソースしているため、現在の従業員は7千人と少ないです。
ニオは、中国国内に80カ所のチャージステーションを展開していますが、2022年までに、これを500万カ所に増やす予定です。
現在の主力は、SUVの「ES8」です。これは、ニオ初の量産車です。「ES8」は居住性の良さを誇っています。また、「NOMIスマート・スピーカー」を搭載しており、これは消費者にたいへん好評です。
「ES8」の納車は、6月から始まったばかりです。これまでの生産台数は、僅か2200台です。その関係で2018年上半期の売上高は695万ドル、利益は5億ドルの赤字でした。
言い直せば、ニオの損益計算書は、現状では見るに堪えないほど酷いです。
【今週のまとめ】
世界最大かつダイナミックな市場で
最も良いポジションにつけているニオの成長に期待!
中国のEV市場は世界最大で、向こう5年間に年間+40%以上で成長すると見込まれています。中国は国策でEVの普及に努めています。そんな中、ニオは最も消費者からのニーズの高いプレミアムSUVを中心に攻めています。
まだ出荷が始まったばかりなので、損益計算書は大赤字です。しかし、世界最大かつダイナミックな市場で最も良いポジションにつけている企業なので目が離せません。
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