2019年8月19日、「国土交通省は複数の棟で構成された団地型の分譲マンションの老朽化に対応するため、敷地を分割して売却しやすくする新制度を設ける方針」との報道がありました。
報道によると、現在は、1棟だけを切り出して売る場合でも団地の所有者全員の同意が必要だが、新制度ではこの要件を緩めるとのことです。これにより、複数の棟が立つ老朽団地の一部のみを売却し、その跡地に店舗や保育所を誘致して団地全体の魅力を高めるなど、多様な再生手法を選択できるようなります。
そこで今回は、「団地再生」関連の銘柄に注目しました。
6割の自治体が老朽化した団地の問題を意識しながら、
3割の自治体しか取り組みを実施していない
これまで国土交通省は、「住宅団地の再生のあり方に関する検討会」を実施するなど、老朽化した団地の再生を促進する施策について、幅広く検討を行っています。
2018年12月に発表された『住宅団地の実態について(国土交通省)』というレポートによると、全国の団地の総数は2903団地。市区町村の住宅団地に対する問題意識についての質問では、約6割の市区町村が「問題意識あり」と答えています。
しかし一方で、住宅団地再生に係る取り組みについての質問では、「取り組みを実施している」と答えたのは約3割の自治体にとどまっています。なお、具体的な取り組みとしては、「高齢者対応」「若者転入促進」「空家利活用支援」「コミュニティ力向上」「地域交通支援」などが挙げられています。
つまり、多くの自治体が老朽化した団地に対する問題を認識しているものの、解決に向けた取り組みができている自治体はまだまだ少ない、ということです。
しかし、このまま放置していると、団地の老朽化とそれにともなう住環境の悪化から、徐々に住民が転出。住民の減少により店舗など利便施設が閉鎖されると、生活環境はさら悪化し、最終的にはコミュニティ崩壊や治安悪化が起こってゴーストタウン化する団地が多数出てくるでしょう。住宅団地再生に向けた取り組みは早急な課題であり、今後、大きな予算が投入される分野であることが予測できます。
「リノベーション」や「リフォーム」が、
「団地再生」関連銘柄の重要キーワード
「団地再生」の関連銘柄としては、「リノベーション」「リフォーム」などが最も有力なキーワードになると思われます。
リノベーションやリフォーム関連の事業を行っている企業を調べると、不動産企業が多く挙げられるほか、建設や住宅設備関連の企業などが出てきます。また、一戸建てのリフォームを手掛けている企業なども関連銘柄として取り上げられるでしょう。
こういったリノベーションやリフォーム関連銘柄の中から、今回は「団地再生」を手掛けている企業を中心にリサーチ。さらに、今後、政府主導で団地再生事業が拡大する局面において注目されそうな企業の中から、株価が上昇している、もしくは安定推移している銘柄を選んでみました。
【エヌシーエヌ(7057)】
「MUJI×UR 団地リノベーションプロジェクト」に注目!
エヌシーエヌ(7057)は、木造建築の耐震性を確保するための高度な構造計算を事業化するとともに、耐震性の高い木造建築を実現する独自の建築システム「SE構法」を手掛けています。
また、良品計画と合弁事業により設立した持分法適用会社であるMUJI HOUSEが、「MUJI×UR 団地リノベーションプロジェクト」を展開し、「団地再生」に取り組んでいます。UR都市機構としては、「UR賃貸住宅」を「無印良品」という人気ブランドと一緒に改装することで、入居者獲得期間の短縮化や入居者の若返りを促しています。
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【ツクルバ(2978)】
リノベーション・中古住宅流通プラットフォーム
「cowcamo」を運営
ツクルバ(2978)は、ITを活用したリノベーション・中古住宅流通プラットフォーム「cowcamo(カウカモ)」を運営する企業です。オンラインメディアを通じた物件情報流通サービスや自社エージェントによる仲介サービス、顧客ニーズや物件のデータを活用した売主・事業者向け支援サービスなどを展開しています。
cowcamoのサイトは、グッドデザイン賞を受賞するなどデザイン面にも優れているので、若い顧客層の需要が期待できます。
またツクルバは、「働く場」をサブスクリプション型のサービスとして提供する「シェアードワークプレイス事業」も展開しています。
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【アイカ工業(4206)】
清掃性・施工性に優れた新たなフロア材を開発
アイカ工業(4206)は、住宅関連用品の製造・販売を手掛けており、メラミン化粧板で国内トップシェアの企業です。
メラミン化粧板は空気中の水分などで伸縮する性質があるため、フロア材の開発が困難でした。しかし、靴のすり跡や汚れが付きにくく、清掃性・施工性に優れたメラミン化粧板によるフロア材の開発に成功したことで、アイカ工業は床市場に参入しています。「団地再生」においては、若い顧客層を取り込むためにも、使い勝手のよいメラミン化粧板によるフロア材の需要増加が期待できます。
またアイカ工業は、コンクリートのひび割れを補修するガンタイプの補修剤なども手掛けており、建物の老朽化による補修需要が見込まれます。
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スター・マイカ・ホールディングス(2975)
「MUJI HOUSE」とのコラボにより、新たな顧客層を開拓
スター・マイカ・ホールディングス(2975)は、リノベーション中古マンションの販売を手掛けています。
スター・マイカ・ホールディングスは、団地リノベーションなどで豊富な実績のあるMUJI HOUSEが企画・設計した住戸も展開しています。前出の通り、MUJI HOUSEは良品計画の関係会社で、「無印良品の家」も販売しています。そんなMUJI HOUSEとのコラボにより、新たな顧客層の開拓を目指しています。
現在は中古マンションのリノベーション事業が主体ですが、今後は団地再生への進出が今後期待できます。
⇒スター・マイカ・ホールディングス(2975)の最新株価はこちら!
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【インテリックス(8940)】
「リノベーション」で建物の付加価値を高める
インテリックス(8940)は、中古マンション再生流通事業を展開する企業です。首都圏と大都市圏で中古マンションを「リノベーション」し、「リノヴェックスマンション」として販売しています。
老朽化した住宅に対し、「リノベーション」をキーワードに付加価値を高める内装工事を施し、良質な社会ストックとして再び社会に提供しています。これまで「秋津第1団地」や「天王町スカイハイツ団地」「さざなみ団地」「東逗子団地」など、多くの「団地再生」の実績を持っています。
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首都圏の大規模住宅団地は、高度経済成長期から入居が始まり、約40年が経過しました。そのため、居住人口の減少や住民の高齢化、住宅や施設の老朽化・陳腐化など、団地の開発当時には想定されなかったさまざまな問題に直面しています。
こうした中で、社会経済情勢の大きな変化に柔軟に対応し、地域の活力・魅力の向上に貢献できるよう再生・発展していく動きが増えてくることが期待されます。ぜひ参考にしてください。
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