世界投資へのパスポート

歯列矯正サービスの「スマイルディレクトクラブ」が
ナスダックにIPO(新規上場)! 斬新なビジネス
モデルで市場拡大に成功した注目ベンチャーを解説!

2019年9月9日公開(2022年3月29日更新)
広瀬 隆雄
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インターネットを通じて歯列矯正サービスを提供する
「スマイルディレクトクラブ」が今週IPO!

スマイルディレクトクラブの公式サイト画像スマイルディレクトクラブの公式サイト

 インターネットを通じて歯列矯正サービスを提供するスマイルディレクトクラブ(Smile Direct Club/ティッカーシンボル:SDC)が、今週ナスダックに新規株式公開(IPO)します。

 スマイルディレクトクラブのIPOの値決めは9月11日、取引開始は9月12日の予定です。発行株数は5850万株で、価格設定は19ドルから22ドル、主幹事はJPモルガンとシティです。

スマイルディレクトクラブのCEO・デビッド・カズマンは、
規制産業であるほど燃える“老獪な経営者”

 スマイルディレクトクラブのCEOを務めるデビッド・カズマンは、1980年代終盤に壁紙や窓のブラインドなどの建材を通信販売するビジネスを始めました。いまだインターネットが普及してなかった頃の話です。中間業者を介さず、消費者から直接注文を取ってカスタム・メードの製品をメーカーに直接発注するというビジネスモデルでした。

 このダイレクト・ツー・コンシュマーのノウハウに注目したホームデポが、1997年にその会社を買収しました。いま、その事業はホームデポのデジタル事業の中核となっています。

 事業をホームデポに売却した後、デビッド・カズマンは、コンタクトレンズをインターネット上で直接消費者に販売するレンズエクスプレスという会社を立ち上げました。これは、今日も1-800コンタクトという会社名で存在しています。

 コンタクトレンズのビジネスはとても規制が厳しい業界であり、医師との協業が必要となります。デビッド・カズマンには、そのような難易度の高いビジネスを軌道に乗せた実績があるわけです。

 その後デビッド・カズマンは、クイックン・ローンというインターネットを通じて住宅ローンを提供する会社を立ち上げました。クイックン・ローンは、今日、全米最大のインターネット消費者金融会社となっています。住宅ローンのビジネスも、必要書類が多く、厳しく規制されています。

 つまり、デビッド・カズマンは「規制産業であるほど参入障壁が高く、従って安全なビジネスだ」と考える、極めて老獪(ろうかい)な経営者なのです

 スマイルディレクトクラブが提供する歯列矯正サービスも、厳しい規制でがんじがらめになっているビジネスであり、ハードルが高いです。

スマイルディレクトクラブの斬新なビジネスモデルにより、
歯列矯正サービス市場は拡大!

 スマイルディレクトクラブは、そのサービスを通じて、

1)便利さ
2)値段的な手の届きやすさ
3)ターゲット市場の拡大

を実現しています。

 スマイルディレクトクラブを利用することで、これまでのように、わざわざ歯医者さんに行く必要はなくなります。

 普通、歯列矯正するにあたって、消費者は10回から15回も歯科医のところを訪れる必要があります。しかし、スマイルディレクトクラブなら、遠隔医療のテクノロジーを駆使することで、1回も歯科医のオフィスを訪問しなくてもいいのです。

 歯列矯正に要する期間も、伝統的な手法の場合は1年から2年かかりましたが、スマイルディレクトクラブは5〜10カ月で終わらせることが出来ます。これは便利です。

 また、これまで歯列矯正には5000ドルから8000ドルの費用がかかりました。しかし、スマイルディレクトクラブは、1895ドルで歯並びを矯正します。これはとても安いです。

 潜在市場の拡大という点ですが、歯科医は数が限られていて大都市を中心に存在しており、米国の国民の4割しか近所に歯医者のオフィスがありません。しかし、スマイルディレクトクラブのサービスを使えば、どんな過疎地に住んでいても歯列矯正をすることが出来ます。

 さらに、歯列矯正は高額な費用がかかるため、これまでは裕福な家庭しかできませんでした。しかし、スマイルディレクトクラブはコストが安い上に独自の割賦制度を展開しているので、富裕層以外の消費者も歯列矯正が利用しやすくなりました。

 これらの変化は、歯列矯正サービスのターゲット市場の拡大を意味します

スマイルディレクトクラブの歯列矯正は、
矯正の進行に応じた「アライナー」を付け替えながら進める

 スマイルディレクトクラブのウェブサイトに行くと、まず自分の情報を入力します。それを元に、スマイルディレクトクラブは「インプレッション・キット」を消費者のところへ送ります。

 インプレッション・キットは、自分の歯形を取るデバイスです。口にはめて5分ほど待てば、歯形を取ることができるので、それをスマイルディレクトクラブに送り返すと、あなたの歯形の3Dイメージをウェブ上で確認できます。

 さらに、「アライナー」と呼ばれる透明の矯正ブレースを順次装着してゆくことで、だんだん歯並びが矯正される推移がアニメーションでわかるようになっています。

 最初のアライナーは、第1週のみ装着します。アライナーNo.2は第2週のみ装着します。アライナーNo.3は、第3〜4週を通じて同じものを2週間装着します。このようにして、歯のカタチが徐々に矯正しながら、どんどん新しいアライナーへと移行していくわけです。

 アライナーの装着は、最初、痛みをともないます(これは歯医者で歯並びを矯正しても同じことです)。 アライナーを装着している間は食事が出来ないので、食事をするときは一旦、アライナーを外し、食後に歯を磨いてから、再びアライナーを装着する必要があります。また、アライナーを装着すると、口の中にモノが入っているので会話が少し不自然になります。

スマイルディレクトクラブのサービスは、
SNSを通じて認知が拡大!

 スマイルディレクトクラブは、インスタグラムなどを通じて草の根的にファンが広がっています

 スマイルディレクトクラブの矯正プランは1895ドルですが、毎月85ドルの分割払いを利用することが出来ます。この手頃な価格が、認知が広がっているひとつの理由と言えます。

 スマイルディレクトクラブの顧客数は、2016年が2.2万人、2017年が10.2万人、2018年が28.3万人でした。2019年は、上半期だけで24.6万人となっています。

スマイルディレクトクラブの業績は、
右肩上がりに急成長!

 スマイルディレクトクラブの売上高は、2016年が2100万ドル、2017年が1.46億ドル、2018年が4.23億ドルでした。

 粗利益は、下のチャートのように推移しています。

 2018年のグロスマージン(粗利率)は68%でした。現在はマーケティングに沢山の費用を使っているため、営業マージン(営業利益率)は-10.6%となっています。

 将来的にはグロスマージン85%、マーケティング費用比率40~45%、修正EBITDAマージン25~30%を目指しています

【今週のまとめ】
スマイルディレクトクラブは、
いまアメリカでもっとも急成長している企業のひとつ

 スマイルディレクトクラブのブランドは、消費者に急速に浸透しつつあり、特に若者から圧倒的に支持されています。大きな潜在性を秘めた市場で、経験豊かな経営者がこれまでの常識を破壊しながら行っているビジネスであり、いまアメリカでもっとも急成長している企業のひとつと言えるでしょう。

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