2020年の株式市場は波乱含みのスタートとなりました。米軍がイラン革命防衛隊のソレイマニ司令官を空爆で殺害したことが明らかとなり、中東情勢の緊迫化への懸念が高まったことが要因です。
このニュースを受けてNY原油先物相場が急伸し、円相場が円高に振れて推移する中、1月6日の大発会での日本株市場も売り圧力が強まる格好となりました。翌日の1月7日には早くもリバウンドを見せましたが、これは「米国とイランの双方とも全面戦争への関心を示しているわけではない」との見方から、買い戻しが優勢になったからのようです。
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しかし、1月8日には、「イランが米軍駐留のイラク基地に攻撃開始」との報道を受けて、日経平均株価は再び急落し、一時600円を超える下げで節目の2万3000円を割り込む局面も見られました。さらに、その後、トランプ大統領が国民向け演説で反撃に言及せず、事態悪化避けたい姿勢を示したことで、9日の日経平均株価は再びリバウンドし、前日比535.11円の高騰となりました。まさに、株式市場が日々変化する中東情勢に振り回されて一喜一憂している状態です。
当面の間、米国とイランの対立の行方を睨みながらの相場展開を余儀なくされることになりそうです。積極的な上値追いの流れは、しばらく期待しづらいところでしょうが、NEC(6701)、富士通(6702)、ソニー(6758)の急騰を見る限り、こういったショック安の局面では、冷静に成長期待の大きい銘柄の押し目を拾う動きが意識されやすいと思われます。
カルロス・ゴーン被告の日本脱出が成功したのは、
「保安検査の不備」が一因
一方、2019年末に大きな話題となったのが、「元日産自動車会長のカルロス・ゴーン被告が密かに日本を出国して、中東のレバノンに到着した」というニュースです。この報道を受け、ゴーン被告の弁護士も「寝耳に水という状況でとてもびっくりしている」と述べているようです。
その後の報道では、ゴーン被告は関西国際空港からプライベートジェット機で逃亡したことや、関空のプライベートジェット機用のターミナルは離着陸の便がない限りほぼ無人の状態であること、プライベートジェット機用の保安検査装置は大型の荷物に対応できていなかったこと、などが伝えられています。
逃亡を手助けしたグループは、少なくとも10カ所の空港を視察し、最終的に手荷物検査に関するセキュリティが脆弱だった関空に決めたとの報道も伝えられています。
こうした保安検査の甘さが、今回のゴーン被告の出国を成功させた一因だったことから、赤羽一嘉国土交通大臣は1月7日、プライベートジェット機に持ち込む大型荷物の保安検査を義務化したことを明らかにしました。
空港や新幹線、イベント会場など、
幅広い場所で「保安検査機器」の需要が増大
今回、ハリウッド映画ばりの逃亡劇が日本で行われたことは、非常に衝撃的でした。特に今年は世界的な大イベントである東京オリンピック・パラリンピックが開催されるため、空港や各航空会社は、セキュリティに関してより神経質になっていると思われます。そのため、今回のゴーン被告の国外脱出事件を受け、「保安検査」に対する関心は一層高まると思われます。
そこで、今回はセキュリティの強化、および、その強化範囲の拡大の可能性を背景に、今後需要が増大すると予想される「保安検査機器」の関連銘柄に注目しました。
すでに国土交通省では、「テロに強い空港」を目指し、先進的な「保安検査機器」の導入を推進することで、航空保安検査の高度化を図っています。昨年のラグビーワールドカップ開催時には、国際線だけでなく、国内線においても航空機搭乗前の上着検査や靴検査、爆発物検査を強化するといったテロ対策が取られました。
「保安検査」が必要となるのは、空港や各航空会社だけではありません。JR各社では、東海道新幹線内で2018年6月に発生した殺傷事件を受けて、新幹線全車両への防犯カメラ設置などが進められています。その一方で、凶器を持ち込ませないようにする身体・手荷物検査の導入は、過密なダイヤで大量の乗客を乗せる新幹線では大混雑が想定されることから今のところ進んでおらず、今後の課題となっています。
その他、テロ行為に対する警戒から、大きなイベントやコンサート会場など、人の集まる場所におけるX線手荷物検査などの「保安検査」は、将来的に一層重要になるでしょう。
ひと口に「保安検査機器」と言っても非常に幅広いため、今回は空港などに設置されている「手荷物検査装置」に注目しました。手荷物検査に用いられるX線検査装置は、医療や食品製造、建築など、さまざまな現場で活用されており、多くの関連会社が出てきます。今回はそれらX線検査装置に関わる企業の中から、「手荷物検査装置」に関連する銘柄を発掘しました。
【IHI(7013)】
グループ企業が、空港の手荷物検査用のX線CT装置を受注
グループ企業のIHI検査計測が、X線手荷物検査装置を手掛けています。空港の手荷物検査用のX線CT装置も初めて受注しており、従来型のX線検査装置の販売拡大のほか、CT装置,爆発物検知装置,監視カメラなど、セキュリティ関連製品のラインアップを強化しています。
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【日立製作所(6501)】
グループ企業が、AIを活用した自動判別技術を開発
グループ企業の日立パワーソリューションズが、X線手荷物検査装置を製造しています。また日立では、AIを活用することで手荷物内の物品一つひとつを認識し、材質や密度などから安全性を自動識別する技術を開発しています。その他、日立金属(5486)でも、医療用CTに使う部材を手荷物検査装置向けに改良しています。
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【浜松ホトニクス(6965)】
「手荷物検査装置」に適したさまざまな製品を手掛ける
浜松ホトニクス(6965)は、ベルトコンベアなどで搬送される被検査物の透過X線像を高感度・高解像度で撮影するX線ラインセンサカメラや、X線イメージセンサなど、X線手荷物検査装置に適したさまざまな製品を手掛けています。
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【明電舎(6508)】
X線検査装置の小型・軽量化を可能にする新製品を開発
明電舎(6508)は、X線検査装置に使われるカーボンナノ系冷陰極X線管を開発しました。これは、従来の製品に比べて小型・軽量・省電力となっており、これまではスペースなどの問題から検査装置の導入が難しかったような場所でも利用できる小型X線検査装置の製品化を可能にします。プラント配管検査などインフラ分野への用途拡大が見込まれるほか、駅やイベント会場における手荷物検査への活用も期待されています。
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【エージーピー(9377)】
セキュリティ機器の保守・運用管理業務を行う
エージーピー(9377)は、X線検査装置のほか、金属探知器や爆発物検知装置、液体物検査装置など、空港内におけるセキュリティ機器の保守・運用管理業務を手掛けています。その他、郵便局、刑務所、物流センターといった空港外の重要施設におけるセキュリティ機器の保守管理業務も行っています。
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今回は「保安検査機器」の関連銘柄に注目しましたが、東京オリンピック・パラリンピック開幕が近づくにつれ、その他の「セキュリティ関連銘柄」として警備会社への関心も高まると見ています。セコム(9735)、ALSOK(2331)、CSP(9740)、RSC(4664)といった警備関連銘柄の動向にも注目しておきましょう。
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