明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。
前回の当コラムで、「正月休みは6日間と長いですが、当コラムの読者の皆様には、日本株の『1月のロケットスタート』を期待して、今年は敢えて『株を枕に年を越す』戦略をおすすめします」と書きましたが、残念ながら日本株は大発会から躓きました。オヤジギャク風にいうなら、「トランプがイランことした」からです。
このため、今年の大発会の日経平均株価は、大納会比451.76円(1.91%)安の2万3204.86円と、大幅に3日続落してしまいました。
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イランのカセム・ソレイマニ司令官殺害により
世界の市場は「リスクオン」から「リスクオフ」の流れに
今年最初の取引である1月2日のNYダウは続伸し、前営業日の2019年12月31日比330.36ドル高の2万8868.80ドルと、過去最高値を更新しました。ナスダック総合株価指数も同119.585ポイント高の9092.189ポイントと過去最高値を付けました。そして、S&P500種株価指数も過去最高値を更新しました。
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この日は、中国人民銀行(中央銀行)が1月1日、預金準備率を6日から0.5%引き下げると発表したことや、昨年12月のユーロ圏の製造業購買担当者景気指数(PMI)確報値が一部の市場予想を上回ったことが好感されました。このように、日本が正月休み中の2日までは予想通り順調でした。
ですが、米国防総省が1月2日、イラン革命防衛隊の精鋭組織「コッズ部隊」のカセム・ソレイマニ司令官を空爆で殺害したと発表しました。これで流れが一気に逆転し、雰囲気が悪化しました。つまり、リスクオンからリスクオフの流れになってしまいました。
その結果、1月3日のNYダウは3日ぶりに反落し、前日比233.92ドル安の2万8634.88ドルでした。また、ナスダック総合株価指数は同71.419ポイント安の9020.770ポイントでした。そして、外国為替市場では、安全通貨の「円」が買われ、3日のNY外国為替市場で円相場は5日続伸し、一時1ドル=107円84銭と、昨年10月11日以来約3カ月ぶりの円高水準を付ける場面がありました。
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この米株安、円高を受け、1月6日の大発会の日経平均株価は451.76円(1.91%)安に沈んだのです。
中国、ロシアなど大国の思惑が錯綜し、
国際情勢全体が混沌化
なお、中東情勢は混沌としています。司令官殺害を受け、イラン政府は1月5日、欧米などと結んだ核合意にともなうウラン濃縮について「全面的に制限を順守しない」と宣言しました。一方、司令官殺害目的の空爆が行われたイラクでは、5日、緊急招集された議会が、米軍を念頭に外国部隊の駐留を終わらせる決議案を採択しました。
これに対して、トランプ米大統領は1月5日、イラク政府などが米軍撤収を一方的に要求した場合には「前代未聞の経済制裁を科す」と警告しました。また、司令官殺害の報復として米軍施設への軍事的な対応をちらつかせるイランに対して、トランプ氏は4日にイラン関連の52カ所を対象に軍事攻撃をしかける可能性に触れています。
さらに、ロシアのラブロフ外相とイランのザリフ外相は、1月3日の電話協議で「米国の行動は国際法の規範に反している」との認識で一致しました。その一方で、中国の王毅外相も4日にザリフ氏と電話し、「米国に武力行使の乱用をしないように求める」と非難しました。このようにイランは、中国、ロシアとともに、米国への対決姿勢を強める可能性が高いと指摘されているのです。
以上のように、今回のイラン革命防衛隊司令官殺害を機に、米国とイランとの緊張が一段と高まって米国とイラクの関係が悪化。同時に、ロシア、中国といった大国の思惑も錯綜し、国際情勢全体が混沌としています。
このため、世界の株式市場は報復の連鎖を招くリスクを織り込むべく、調整しているのです。
このまま中東情勢が悪化しても、
日本株の先行きに関しては依然として「強気」
ですが、私は依然として日本株の先行きについては強気です。なぜなら、日米欧の中央銀行が超絶金融緩和スタンスを継続し、状況次第ではその緩和を強化する見通しであることに加え、我が国では事業規模で26兆円に及ぶ万全の大型経済対策が打ち出されたため、景気腰折れリスクがほぼ皆無であるとみているからです。
また、米中貿易交渉の「第1段階の合意」を巡る署名が1月15日に予定されています。これが予定通り実施されれば、鈍っていた企業の設備投資も活発化する可能性が高いとみていることも強気の根拠です。
確かに、中東の地政学リスクの高まりは懸念材料ではありますが、中東情勢が緊迫化すればするほど、米国内のシェールガスなどのエネルギーの開発や生産が加速するでしょうし、再生可能エネルギーや蓄電池などの開発・生産も加速することでしょう。また、親米のサウジアラビアも自国の防衛強化に動く可能性が高く、それは米国の防衛関連企業群の収益にプラスに作用するでしょう。
このように、中東情勢の悪化は、マイナス面ばかりではないのです。このため、私は、米国とイランとの武力衝突が、万が一起こったとしても、日本株については強気を維持します。
というか、(その確率は相当低いとみていますが)米国とイランが実際に武力衝突を開始したら、(その戦闘自体は比較的短期間で米国の圧勝という形で終了するとの前提で)米国株が買われ、それに連れて日本株も買われるとみています。つまり、日米共に、戦争開始は「悪材料出尽くし」のきっかけになると考えています。
ですが、当面のメインシナリオは、米国とイランの対立は、明確な武力衝突はなく、現状のような激しい非難の応酬や恫喝、または、小規模攻撃に止まり、冷戦状態が長期化するというものです。つまり、米中貿易協議同様に、早期での抜本的解決は期待薄だと思われます。
今年の大発会はまったくの期待外れでしたが、2020年の日本株は引き続き中期上昇トレンドを描き続けるとみています。ですから、米中貿易問題や中東情勢など、さまざまなノイズはありますし、これからも色々発生するでしょうが、そのノイズで相場が下がった場面は、基本「買い」で対処して報われると考えています。
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