【今回のまとめ】
1.中国は問題化している信託商品のデフォルトを回避した
2.トルコ中銀は意表を突く利上げで通貨防衛に乗り出した
3.FRBは「われ関知せず」と言わんばかりにテーパリングを続行
4.通貨防衛の金融引締めにより新興国経済の停滞感は強まる
幸先の悪いスタートを切ったニューヨーク市場
先週は三つの大きなニュースがありました。
まず前回の本コラムで言及した中国工商銀行の絡む信託商品に関しては、匿名投資家が元本部分の償還を助けると名乗り出たことでデフォルトが回避されました。
次にトルコ中央銀行が翌日物貸出金利を一気に4.25%引き上げ12%とすると発表しました。
最後に米国の連邦準備制度理事会(FRB)が連邦公開市場委員会(FOMC)で大方の予想通り100億ドルのテーパリング(債券買い入れプログラムの縮小)を決めました。
結局、一週間が終わってみると今週もダウ工業株価平均指数は-1.1%、S&P500指数は-0.4%、ナスダック総合指数は-0.6%の下落となりました。
年初来のパフォーマンスを見るとダウ工業株価平均指数が-5.3%、S&P500指数が-3.6%、ナスダック総合指数が-1.7%です。
アメリカの投資家が愛用する暦(こよみ)、『ストックトレーダーズ・アルマナック』を編纂しているジェフ・ハーシュによれば、1950年まで遡って過去の統計を調べると、1月のパフォーマンスが今年のようにマイナスで始まった場合、88.9%の確率で通年ベースでもマイナスで終わってしまうジンクスがあるのだそうです。
つまり今年の米国株相場は幸先の悪いスタートを切ったわけです。
中国の信託商品のデフォルトは回避されたが
さて、中国工商銀行の絡んだ信託商品がデフォルトを回避できた件ですが、投資家からすれば何か釈然としないものが残りました。
それと言うのも今回償還を迎えた信託商品の元本の返済を助けたのが一体誰か? という正体が明らかにされていないからです。山西省の地方政府がお金を出したという観測もあるし、中国工商銀行が部分的に支援したという観測も出ています(中国工商銀行は否定しています)。
この信託商品はタテマエとして銀行が直接関与していないことになっています。従って中国工商銀行が助け舟を出すと、まずい前例を作ってしまいます。
さらに中国政府による総量規制の指導を、銀行が破ってきたことを実質的に認めることになります。
また銀行が損の穴埋めをすると、今後も別件で同様の処理を行う必要が生じ、そのような将来の損に対する引当不足の問題が生じます。
それらの理由からウヤムヤなままに処理されてしまったのだと思います。これは問題の解決と言うより先送りに過ぎません。
中国人民銀行は、引き続き不動産バブルをゆっくり冷やす政策を堅持すると思われます。この政策が原因で中国の景気がどんどん委縮してきた経緯を考えると、これは株式市場にとってはマイナスだと思います。
中国市場が今回のニュースを好感しなかったのは、そのような理由によります。
トルコの利上げは景気の腰折れを招く可能性
次にトルコ中銀が断固とした利上げで通貨防衛に乗り出した件ですが、結局ユーフォリアは1日だけで、トルコ・リラは再び売り圧力に晒されています。投資家は今回の極端すぎる利上げが景気の腰を折ってしまうことを懸念しているのです。
ただでさえ同国では去年から大規模デモが頻発しています。つまり国民の不満は高まっているのです。突然の不景気は政治が一層不安定化する原因になるでしょう。
FRBはテーパーリング続行
このように新興国の資本市場がぎくしゃくしているにもかかわらず、FRBは今回も100億ドルのテーパリングを決めました。
それは「少々の事があっても、量的緩和政策の手仕舞いは粛々と行ってゆく」という断固としたFRBの姿勢を市場参加者に示す効果がありました。
このペースで行けば今年年末までに債券買い入れプログラムは終了することになります。

FRBが債券買い入れプログラムの減額を粛々と進める背景には、足下の米国の景気が強いということが挙げられます。実際、先週発表された2013年第4四半期のGDP成長率は3.2%でした。

以上をまとめると、既に新興国はFRBのテーパリングの余波で相場がギクシャクしてきているのに、FRBは「われ関知せず」という姿勢をハッキリ打ち出しました。
新興国は自力で通貨を防衛し、しかも経済の体質改善を図ってゆかねばなりません。これには時間がかかります。
つまり新興国経済は当分の間、どんよりとした停滞感から抜け出せない公算が高いのです。
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