「資金が少ない場合のスキャルピングトレードには、信用無制限の恩恵は圧倒的に大きくて、すごい効果を発揮するなと改めて感じました。3000万円で始めてからは、スキャでやってる限りは当然3000万円以上は負けないですし、1000万円もそうそう負けることはないんですね。それでも2億円以上のリターンが出せているというのは、少ない資金でのスキャはリスクとリターンのバランスがすごくいいということ。だから、周りのすごい投資家の人たちからも『何よりリスクをあまり取ってないのがうらやましい』とよく言われます。スイングトレードとか中長期の投資家さんなんかは、大きなポジションを持ち越しますから、どこかで何かが起きたときに一度に大きな損失を被る可能性があるわけじゃないですか。でも、スキャルピングトレードの場合は、大きなポジションを持ち越すということがないので、すごくリスクが少ないのに、大きなパフォーマンスを出せているので、その点をうらやましがられますね」
ただし、スキャルピングトレードはリスクが小さい代わりに、リターンにも限界がある。
「少ない資金だから毎月数十%という高い割合で資金を増やせましたけど、これは資金が少ないから可能なだけなんですよ。例えば今回は3000万円を2億円にできましたけど、3億円を20億円にできるかというと、それは無理なんですよね。絶対に(注文の)板がなくなるんで。だから、数百万円から数千万~1億円を目指す投資家さんは短期のスキャルピングトレードでもいいと思うんですけど、10億円とか20億円とかを目指すんであれば、スキャルピングトレードではダメですし、目標をどこにするかでやり方は正しくもなれば、正しくなくもなるんです」
しかし、一般的には「数百万円を数千万~1億円」にするだけでも十分なはず。とはいえ、現在の相場にはテスタさんのように、リーマンショックや東日本大震災などの幾度の危機を生き抜いてきた実力者たちが待ち受けている。投資初心者には厳しい環境なのでは……と思ったが、テスタさんは「むしろ、今から始める投資家さんにはチャンスがある」と語る。
「僕がやり始めた2006年頃のことを考えたら、初心者でも勝てる可能性ははるかに高くなってると思いますよ。昔は約定するスピードや情報が伝わる早さなどは完全にプロのディーラーの人のほうが優遇されてましたけど、今はほとんど差がないでしょうし、信用取引の回転売買も可能になって資金効率も上がってますよね。だから、今、資金が少なくても大きなリターンを得られる可能性は昔より高いはずです。今回、僕は2000万円を半年で2億円以上にしたんですけど、僕が始めた時代にスキャルピングトレードで3000万円を半年で2億円にするのは実質不可能だったと思うんです。でも、今は信用無制限でなんぼでも売買できるんで全然可能性はあると思いますね。だから、スキャルピングのような短期売買をするトレーダーに関して言えば、今のほうがはるかに恵まれた環境が揃ってると思いますよ」
全国600カ所、すべての児童養護施設に合計1800個のボールを寄付。
「メディアに出してもらってる投資家がやらないと意味がない」
そんなテスタさんだが、11月に投資とは異なることで注目を浴びた。それが、全国の児童養護施設への寄付だ。しかも、全国に600カ所ある施設のすべてに、サッカーボール、バレーボール、ドッヂボールの3つをセットで寄付していたことがわかったのだ。
「以前、ブログのコメント欄に『それだけ稼いでいることをブログに書くなら、貧しい国に学校でも建てたらどうですか?』というようなコメントが書かれたことがあって、それはもしかしたら嫌味的な書き込みだったのかもしれないんですけど、それでも『あぁ、なるほど』と思って、一回、海外で学校を建てるにはどうしたらいいかを調べたんですよ。で、学校を建てること自体は何百万円かでできるんですけど、その運営費とか維持費のこともありますし、海外だとピンハネしちゃう業者さんもいたりするみたいで、なかなか難しいなと思ったんですね。同時に、『海外よりもまずは日本国内じゃないかな』と思って、『そういえば昔、むらやん(=テスタさんの知人の著名なデイトレーダー)が子どもの施設にテレビとかを寄付してたな』というのを思い出して、最初は『家の近所の施設に寄付しようかな』とも思ったんですけど、家が近いかどうかは僕の都合であって、子どもたちには僕の家が近いかどうかなんて関係ないじゃないですか。それでそういう施設のことを調べたら、全国でちょうど600カ所やったんで、どうせなら全部平等にしたいなと思って、600カ所すべての施設に寄付することにしました」
ボールを寄付した理由は、テスタ自身の子どもの頃の体験を参考にしたという。
「600カ所に全部寄付しようと思ったら、そんなに豪華なものはできないので、ひとつの施設に1万円くらいかなと思って、何を寄付しようか考えたときに、自分の小学校の頃のことを思い出したんですよね。僕は小学校の頃、学童保育に通ってて、よくボールで遊んでたんですけど、ボールってなくなっても、何週間かしたらどこかから見つかったりするから、すぐには買ってもらえなかった記憶があって。だから、ボールは今も施設にあるんでしょうけど、あったとしても、いつかは使えるし、何個あっても困るものではないと思って、ボールがいいかなと。それで、男の子用にはサッカーボール、女の子用にはバレーボール、みんなで遊ぶ用にドッヂボールの3種類があれば、施設の子どもたち、みんなが喜んでくれるんじゃないかなと思ったんですよね」
テスタさんは3種類のボールを600個ずつ用意するためにメーカーにボールを発注。メーカーが同じ種類のボールを用意し、梱包、発送まで請け負ってくれた。
しかし、この一件が話題になると、一部ではテスタさんがボールとともに「日本中に支援の輪が広がることを祈り全国に送らせていただきます テスタ」と書かれた手紙を送ったことで、「偽善だ」「売名行為だ」「匿名で寄付するべき」という批判もあった。
「例えば、匿名で寄付することもできたんですけど、こうした取材を受けたりして、メディアに出させてもらってることもあって、少なくとも投資家さんの間には『テスタ』という名前を知ってくれてる人も多いと思うんですよね。で、投資家さんって、やっぱり普通の人よりお金を持ってる人が多いはずですよね。だって、少なくとも、株を始める時点で数百万円から始める人も多くて、でも、貯金がそれだけない人も世の中にはむちゃくちゃいるわけじゃないですか。だから、少なくとも『テスタ』という名前――まぁ、これも本名じゃないんで、僕からしたらすでに匿名なんですけど(笑)――を知ってくれてる投資家さんには、こういうことを伝えたかったというのがあったんですよね」
実はテスタさんは2011年の東日本大震災後も100万円の寄付をしたことをブログに公表し、その際にも「匿名で寄付するべき」というコメントがブログに書き込まれていた。そして、その後も公にはしていないが、継続的に寄付を続けてきた。しかし今回、テスタさんは批判されるのは覚悟の上で、あえて「テスタ」という名前を出して寄付を行ったのだ。
「震災のときに孫(正義)さんが『100億円寄付する』と表明したときも、めちゃくちゃ批判されてたんです。でも、100億円ってすごい金額ですよ。批判してる人たちって、絶対に100億円寄付してないじゃないですか。しかも、100億円寄付するって言っても批判されるってことは、いくら寄付しようが100%批判されるというのがわかったんです。だから、『公表しようがしまいが、寄付すること自体は善』なら、どんだけ批判されようが『たくさんの人に伝えられる立場にある人間は、やっぱり声を大にして言うべき』やと覚悟したんです」
実際、ツイッターなどでは多くの著名な個人投資家や、テスタさんを知る個人投資家がテスタさんの行動を支持し、さまざまな方法で寄付を行ったり、寄付をすることを表明したりしている。テスタさんが批判を覚悟で行った行動が、多くの個人投資家の心を動かしたことは確実だ。
「まだまだ世の中的には投資にネガティブなイメージを持ってる人も多いと思うんですよね。だから、僕とかむらやんみたいに、いっぱいメディアに出してもらってる人間が、一部の人に批判されることがあったとしても、投資のネガティブなイメージを変えるようなことしないと意味がないというか……まぁ、そこまで高尚なことを考えてるわけじゃないんですけど、そうやって恵まれない子どもとかに支援の輪が広がればいいなと思ってますね」
驚異的な成績で注目を浴びるテスタさんだが、トレード手法や投資に対する心構え以外にも、個人投資家がテスタさんから学ぶことは多そうだ。
テスタさん
(Twitter:@tesuta001、blog:http://blog.livedoor.jp/tesuta1/)
投資歴9年の専業投資家。超短期のスキャルピングトレード中心の取引で、元手の800万円を6億円超にした億トレーダー。ちなみに、テスタさんが利用している証券会社はSBI証券、楽天証券、岡三オンライン証券。
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