10日の日経平均株価は一時2万円大台を回復しました。これは、2000年4月以来、ほぼ15年ぶりのことです。
思い返せば、2012年11月14日、当時の野田佳彦首相が解散宣言をした日から、今の「アベノミクス相場」が始まりました。その宣言前日の12年11月13日の日経平均株価の終値は8661.05円です。これが約2年5カ月後の15年4月10日のザラ場中に2万6.00円にまで上昇しました。実に2.31倍です。確かに、この間、13年5月23日の「5.11ショック」発の値幅調整や、14年年初から14年10月31日の「黒田バズーカ第2弾」が発射されるまでの値幅及び日柄調整などはあったものの、総じて、良好な投資環境だったといえるでしょう。
中央銀行、政府、市場の景気認識にズレがない
ところで、3月16、17日開催分の日銀の政策委員会金融政策決定会合議事要旨による、実体経済への日銀の見方は以下の通りです。
(1)輸出は持ち直しており、先行きの輸出は、海外経済の回復などを背景に、緩やかに増加していく、(2)公共投資は、高めの水準を維持しつつも、緩やかな減少傾向に転じていく、(3)先行きの設備投資は、企業収益が改善傾向を辿る中で、緩やかな増加基調を続ける、(4)個人消費は、雇用・所得環境の着実な改善が続くもとで、引き続き底堅く推移する、(5)住宅投資は、緩和的な金融環境にも支えられて、次第に底堅さを取り戻していく、(6)鉱工業生産は、内外需要を反映して、緩やかに増加していく、(7)消費者物価の前年比は、エネルギー価格下落の影響から、当面0%程度で推移する。
そして、“多くの委員は、「量的・質的金融緩和」は、昨年10月末の金融政策決定会合で拡大を決定した後も、引き続き所期の効果を発揮しているとの認識を共有した。”ということです。この多くの委員の認識を、市場もほぼ共有しているとみられます。だからこそ、マクロ経済環境を重視する国内外の中長期スタンスの投資家の買いが入り、日経平均を2万円大台に押し上げたのです。
一方、15年3月調査(15年4月8日公表)の景気ウォッチャー調査では、3月の現状判断DIは、前月比2.1ポイント上昇の52.2、3月の先行き判断DIは、前月比0.2ポイント上昇の53.4でした。
内閣府は、“今回の調査結果に示された景気ウォッチャーの見方は、「景気は、緩やかな回復基調が続いている。先行きについては、物価上昇への懸念等がみられるものの、賃上げへの期待や外国人観光需要への期待等がみられる」とまとめられる。”としています。この内閣府の認識も、市場とそれとほぼ一致しているとみられます。
中央銀行、政府、市場の景気認識にズレがない点は、大いなる安心感を投資家の与えるはずです。
良好な環境でも2つの懸念材料
このような良好な投資環境下、取り敢えずの懸念材料は大きく2つです。
まず、1つ目は、エネルギーセクターの減益を主因に、米主力企業の1~3月期が約5年半ぶりに減益となる可能性があり、仮にそうなった場合、米国株式相場が動揺するリスクがあることです。2つ目は、多くの国内主力企業が、期中の下方修正リスクを怖れるあまり、保守的な業績予想を示し、それに投資家が失望し日本株を売る動きが加速する可能性があることです。
ところで、4月第1週(3月30日~4月3日)の投資部門別株式売買動向では、海外投資家の買越額は、日銀の追加緩和の後の昨年11月上旬以来の大きさとなる、4453億円でした。これが需給面の日経平均2万円回復の原動力でした。一方、年金基金の売買動向を映すとされる信託銀行は2週ぶりに売り越し、売越額は1193億円でした。新年度に入り、公的資金を含む国内勢が、利益確定売りに動き出している感があります。このため、目先は海外勢の買いと国内勢の売りが日経平均2万円付近で激しく交錯し、相場全体にトレンドが出難いとみています。
こうなると、投機マネーは主力株から流出し、個別材料株(中小型株)に流入する可能性が高いでしょう。
その傾向を顕著に示すのが、東証マザーズ指数の動きです。同指数は3月11日に846.32ポイントと、3月19日の848.18ポイントとで2点底を形成しました。そのネックラインが3月12日の872.62ポイントで、これを3月20日にブレイクし、2点底を完成させています。チャート的には底入れを果たしたとみてよさそうです。
また、4月6日に75日移動平均線(6日現在878.78ポイント)も上抜きました。このため、6日時点で中期トレンドも上昇に転じた可能性が高まりました。
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