<今回のまとめ>
1.今年末の原油価格は50ドルを予想
2.原油価格は高値から66%調整した
3.北米オイルリグ・カウントも66.6%減少した
4.法律が改正され米国からの原油輸出が解禁となった
5.生産・在庫統計の改善には未だ時間がかかる
6.倒産や身売りのニュースは「買い」だ
7.負債が少ない企業に投資すること
◎2016年の原油価格の予想
私は2016年末の時点でWTI(ウエスト・テキサス・インターメディエート)原油価格は50ドルになると予想しています。
2014年夏から始まった、約1年半に及ぶ容赦ない原油価格の下落で、価格は2014年6月20日の107.95から2015年12月28日には36.36まで-66%の調整となりました。

◎原油の生産調整は捗った
私が原油価格は底入れると考えている最大の理由は、下のグラフの青い線に見られる通り、ベーカーヒューズ社が集計している北米ロータリー・リグ(=油井)カウントがピークの1609本(2014年10月10日)から現在は536本まで減少しているからです。これは-66.7%の減少です。

もともと今回の原油価格の崩壊は、アメリカ経済の低迷や、それに伴う原油需要の後退が原因ではありませんでした。あくまでもシェール・オイルの乱開発による供給増が引き起こした問題です。
◎米国の原油輸出解禁はプラス要因
生産過剰で余った原油の持って行き場所が無くなってしまったもうひとつの理由は、米国が法律で原油の輸出を禁じていたため、だぶついた原油を輸出市場へ仕向けることすらできなかったことによります。
米議会が改正法案を可決したことで輸出が合法になりました。テキサス産原油を輸出する第1号のタンカーはクリスマス明けに欧州市場に向けて航海に出たばかりです。
現在はタンカーの船腹が払底しているし輸出ターミナルが整備されていないなどの要因があるため、一気に輸出が増えることは望み薄です。しかし長い目でみれば、これまで米国の原油市場を歪めてきた構造的な需給悪要因が除去されたことは軽視すべきでないと思います。
◎生産、在庫統計の改善にはタイムラグがある
さて、上に見たようにリグの数は大幅に減少しましたが、米国の原油生産高はまだほとんど減っていません。

同様に米国における原油の在庫も高水準のままです。

ただこれらの数字は、数カ月のタイムラグを伴って改善するものと思われます。
◎原油価格を占う際、注目すべきニュース
原油価格を占うにあたってカギを握るのは比較的操業コストの高いシェール・オイルの生産会社の倒産や身売りのニュースです。今年上半期はそのようなニュースが続出すると思います。
それらの企業は沢山の負債を抱えているため、借金の借り換えが出来なくなると操業を継続することも困難になります。これは高水準の生産を続行し、わざと原油価格を低く抑えているサウジアラビアの狙いでもあります。
経営破たんのニュースは将来の需給関係にとってプラスです。言い換えれば「倒産のニュースは、買い!」なのです。
◎投資戦略
このように、原油価格が反発する条件として、その前に体力の無い業者が倒産することが必要になるわけですから、我々が投資する際は、借金が多く、バランスシートがぜい弱な企業の株を避けなければいけません。
従って、原油価格反発を見込んだ先回り買いをする場合は、くれぐれも負債比率が低く、倒産リスクの無い銘柄を選ぶ必要があります。
その尺度で合格点の企業は、シュルンベルジェ(ティッカーシンボル:SLB)、ヘルマリッチ&ペイン(ティッカーシンボル:HP)、ヘス(ティッカーシンボル:HES)、エクソン・モービル(ティッカーシンボル:XOM)などです。
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