8月8日の日経平均株価は前週末比396.12円(2.44%)高の1万6650.57円と、大幅反発しました。
5日発表の7月の米雇用統計の上振れを受け、米株高、円高一服となったことが好感されました。ちなみに7月の米雇用統計では、非農業部門の雇用者数が前月比25万5000人増と市場予想の18万人程度の増加を大きく上回り、賃金の伸びも緩やかに加速しました。これで、米国の年内利上げ期待が若干高まり、ドル高・円安になりました。
新興市場の低迷で信用取引の追証が急増
テーマ不在もあり個人投資家の投資意欲も急減
しかしながら、私が代表を務めるカブ知恵のホームページのアクセス件数は、7月19日をピークに、日経平均株価が大幅高した8月8日も含み、低迷中です。これは「ポケモン・ショック」後、物色の柱になるようなテーマが不在であることに加え、東証マザーズに代表される新興市場の人気が離散し、夏枯れになったことが主因でしょう。個人投資家の活性はメチャクチャ落ちている。本当にそう感じます。困ったものです。
特に心配なのは、東証マザーズ低迷による、信用取引を活用し短期売買を好むアクティブ個人の投資マインドの冷え込みです。8日の東証マザーズ指数は前週末比28.07ポイント(3.06%)安の889.22ポイントと、約5カ月ぶりの安値となっています。日経平均株価が同396.12円(2.44%)高となったのとは対照的な動きです。
この両株価指数の対照的な動きをみるかぎり、投資資金が新興市場から流出し、東証1部の主力株に加速度的に流入していることは明白です。しかしながら、その流れについていけず、新興市場に取り残され、評価損の増加に苦しんでいるアクティブ個人が相当数いると観測されます。
実際、市場関係者へのヒアリングベースでは、日経平均株価が大幅高した8日でさえ、個人信用口座では予想外に追証件数が急増したもようです。
小野薬品やカルナバイオサイエンスが急落
新興市場、小型株の不人気はしばらく続く
追証急増の主因のひとつは、小野薬品工業(4528)やカルナバイオサイエンス(4572)など、バイオ関連株の一角の急落とみられています。
小野薬品工業の株価急落のきっかけは、8月5日、ブリストル・マイヤーズスクイブが、がん免疫治療薬「オプジーボ」を肺がんの単剤療法として使用する臨床試験が失敗に終わったと明らかにしたことです。一方、カルナバイオサイエンスの株価急落の理由は、5日にヤンセン・バイオテック社とのライセンス契約の終了を発表をしたことです。
日経平均株価が底堅く、堅調に推移する中、このように個人信用に追証が急増するという、なんとも「ちぐはぐ」な相場になっているため、東京株式市場全体の体感温度は非常に低く感じられるのです。
これはボリューム面でも明確に表れています。8日のマザーズ市場の売買代金は612億円にしか過ぎず、7月20日から14営業日連続で活況の目安の1000億円を下回っています。この商い低迷をみる限り、東証マザーズに代表される小型株については、個人投資家の人気が完全に離散したといっても過言ではないでしょう。
なお、東証マザーズに代表される小型株の今後の人気の回復については、私は悲観的です。残念ながら、よほどの予想外の投資環境への劇的な変化が起こらない限り、東証マザーズに代表される新興市場銘柄、小型株の不人気は当分続く可能性が大きいとみています。
ご存知の通り、東証マザーズ指数は終値ベースで4月21日に1226.42ポイントと年初来高値を更新し、2007年1月22日の1235.15ポイント以来9年3カ月ぶりの高値を付け、天井を打ちました。その後、現在にいたるまで調整を続けています。そして、足元では8日まで4日続落し、約5カ月ぶりの安値に沈んでいます。
日経平均株価が堅調なのに新興市場銘柄は買われない
個人投資家は日銀のETF買いで買われる銘柄だけを狙うべきだ
普通なら、日経平均株価が堅調なら、相対的な出遅れ感から新興市場銘柄も買われてもおかしくありません。しかし、残念ながらそうはならないと考える理由は、今の日本株は「普通」ではないからです。なぜ「普通」ではなく「異常」なのか? それは、政策当局による「異常なまでの市場介入」が常態化し、かつ、今後も状況次第では、さらなる市場介入が見込まれる「世界に類をみない官製相場」になっているからです。
日銀は7月29日の金融政策決定会合で、上場投資信託(ETF)の買い入れ額を従来の年3.3兆円から年6兆円にほぼ倍増することを決めました。これだけの巨額の買い手が出現し、この買い手は、日本株のバリュエーションが上がろうが下がろうが、年6兆円という巨大な金額を粛々と、ある一定のルールに基づいて機械的に買ってくれるのです。
ちなみに、日銀のETF買い入れルールでは、「TOPIX、日経平均株価、JPX日経400に連動するように運用されるものであること」と定められています。このため、日銀は各ETFを上場時価総額に応じた比率で買い入れていくだけです。
そうなると日銀という、確固たる大口の買い手の存在する市場、銘柄は、多くの投資家にとって魅力的ですが、その買いの恩恵を享受できない市場、銘柄なんて、まったく魅力がなくなるのは当然の帰結でしょう。
つまり、TOPIX、日経平均株価、JPX日経400に採用され、それら株価指数との連動率の高い銘柄だけが、物色され人気者になる。それ以外の銘柄は、まさに「用なし」ということになると思います。
ズバリ言えば、7月29日以降、「TOPIX、日経平均株価、JPX日経400採用銘柄にあらずんば、日本株にあらず」となったと感じています。本来は、買い方と売り方はハンディキャップなしの勝負をして、買い方が勝てば相場は上がり、売り方が勝てば相場は下がるはずです。
しかし、ここ日本では違います。買い方が負けそうになると、日銀が出てきて、強烈な援護射撃をします。言い換えれば、子供の喧嘩に親が出てきて、勝負の結果を無理やり、ひっくり返そうとします。まあ、ある意味「八百長」ですね。正直、このような状況が、市場の正しい姿だとは思いません。
しかし、一市民、一投資家からすれば、お上が決めた所与の条件のもとで、投資収益の最大化を目指しかありません。すなわち、日銀様のETF買いでメリットを享受する銘柄だけを売買対象に、「安くなったら買い、高くなった売り」を繰り返すだけです。小市民は、こんなことをして成り上がるだけのことです。
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