世界投資へのパスポート

トランプの大統領就任により、米中の貿易摩擦は
より一層エスカレート! 中国からの輸入減少で
恩恵を被る業界と、注目すべき銘柄はコレだ!

2016年12月5日公開(2017年11月29日更新)
広瀬 隆雄
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トランプが大統領に就任することで
米中の貿易摩擦がエスカレート。焦点は鉄鋼

 先の大統領選挙で次期大統領になることが決まったドナルド・トランプは、貿易問題に積極的に取り組んでゆくと公約しています。

 米中の貿易摩擦は、先週金曜日にドナルド・トランプが台湾の蔡英文(さいえいぶん)総統と電話で話をしたことをキッカケに、エスカレートすることが考えられます。

 とりわけ鉄鋼を巡る問題は、アメリカが強い不満を持っている争点です。

中国政府系企業による鉄鋼のダンピングに
米国内のメーカーが悲鳴

 近年の中国経済の鈍化で、中国の政府系企業によって生産された鉄鋼が国内市場で余っています。このため、中国は余剰の鉄鋼を輸出に回しています。

 その少なからぬ部分が米国市場に流れ込み、需給関係を悪化させています。米国内のメーカーの価格より中国からの輸入品の方が価格が安いため、米国勢はシェアを奪われているのです。

 鉄鋼の生産能力は世界的に過剰となっており、世界で7億トンもの生産能力過剰となっています。そのうち3.7億トンは中国です。この中国の余剰キャパシティだけで、アメリカの年間需要の3倍にも相当します。そのような大量の鉄鋼が、アメリカ市場に流れ込んだら、国内勢はひとたまりもないわけです。

 さらに中国の政府系鉄鋼メーカーは、中国政府の人民元安政策で恩恵をこうむっています。アメリカは「これは為替操作ではないか?」という深い疑念を持っています。

 米国市場における輸入鉄鋼のマーケット・シェアは、2015年第1四半期には33%にも達しました。

 近年、米国内の鉄鋼メーカーがバタバタと倒産したにもかかわらず、需給関係が一向に改善していないのは、輸入品のためです。

 オバマ政権は、中国産の冷間圧延製品に522%の関税を課すことで、中国製品のダンピングを阻止しています。

トランプは商務長官に指名したウィルバー・ロスには
鉄鋼会社の経営再建した実績が

 ドナルド・トランプは、ウィルバー・ロス氏を商務長官に指名しました。彼はバイアウト・ファンドを通じ、ベツレヘム・スチールやLTVなどの経営危機に陥った鉄鋼会社に投資し、経営再建を行った実績があります。

 この経験から、商務長官に就任した後、米国の鉄鋼業界を強力に支援する政策を打ち出すものと思われます。

 ドナルド・トランプは、1兆ドルのインフラストラクチャ投資を行うことを公約しています。

トランプの進める人事や公共投資が
鉄鋼メーカーなどにとって大きなプラス要因に

 米国で消費される鉄鋼のうち、42%は建設関連です。したがって建設工事の増加は、鉄鋼メーカーにとって大きなプラス要因です。

 米国で消費される鉄鋼の60%は、電気炉(EAF)で生産されています。電気炉はスクラップを原料としており、スケールは小さいですが営業キャッシュフローは一般に高炉よりも多いです。

 そのためトランプの公約は、電気炉を生産する企業にとっても強力な追い風となります。

 代表的な電気炉メーカーは、ニューコア(ティッカーシンボル:NUE)になります。

「ニューコア」は中国の影響で売上げを落とすものの
キャッシュフローは問題なし

ニューコアは米国最大の電気炉の会社で、全米13カ所に棒鋼の工場を持っています。また、5カ所に鋼板の工場、2カ所にH型鋼などの構造物向け工場を持っています。2015年の生産高は1930万トンで、前年比-9%でした。

ニューコアの製品内訳は、下のようになっています。電気炉の会社の中では、建設市場向けの比率が高くなっています。

ニューコアの業績ですが、2015年は上で述べた中国からの輸入品の増加の関係で、売上高を落としました。

 しかしニューコアの場合、営業キャッシュフローはまずまずです。2015年は配当より利益の方が少なくなってしまっていますが、営業キャッシュフローを見れば現在の配当水準は楽々と維持できることがわかります。

 またニューコアは、米国の鉄鋼メーカーの中でもっともバランスシートが強固です。

【今週のまとめ】
予測される米中貿易摩擦の波に上手に乗っていこう!

 1月にトランプが大統領に就任すると、米中の貿易摩擦はエスカレートすることが予想されます。トランプ政権で新しく商務長官を務めるウィルバー・ロスは、鉄鋼業界に詳しい人です。従って保護関税を一層引き上げるなどの方法で、アメリカの鉄鋼業界を支援すると思われます。

 さらに、トランプが公約した1兆ドルのインフラストラクチャ投資も、鉄鋼業界にとってフォローの風となります。

 個人投資家としても、こうした流れにうまく乗っていきたいところです。

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