勝ち組トレーダーによる投資コラム集

「アクティブファンドはインデックスに勝てない」という資産運用業界にとって不都合な事実。個人投資家はインデックスファンドのみでOK!吊られた男・連載コラム【第1回】

2017年6月20日公開(2022年3月29日更新)
吊られた男
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さまざまな有名個人投資家に連載コラムを書いてもらう新企画。その第一弾として、インデックス投資家の「吊られた男」さんに寄稿してもらいました。今回の内容は、インデックス投資家にとって最大のテーマとも言える「インデックス投資vsアクティブ投資」です。その結論は、知らなかった人にとってはかなり衝撃的かも?

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約10年前からインデックス投資を実践!

 皆さま、はじめまして。吊られた男と申します。

 民間企業に勤める1サラリーマンをする傍らで、資産形成として投資をしながら「吊られた男の投資ブログ(インデックス投資)」という投資ブログを書いています。

 ブログのタイトルにも入っていますが、投資のスタイルはインデックス投資と言われる方法で、それを中心に投資全般の話題を取り上げたりしています。そんなブログですが、2007年7月に始めたので、この連載開始時点ではブログを書き始めてから10年弱ということになります。

 投資手法のインデックス投資というやり方は、私にはあっていますし、「投資に労力をかけるつもりはないが資産形成としてやっておきたい」という人にはお勧めの投資方法の一つだと思います。

 本連載では、そんなインデックス投資を中心に置きつつ、その周辺情報やタイムリーな話題についても書いていきたいと思います。

 記念すべき第一回目に取り上げるのは、「アクティブファンドの大多数がインデックスに勝てない」という資産運用業界にとって不都合な事実です。

インデックス投資は、インデックスファンドを通して
世界中に分散投資する投資法

 今回の本題は「アクティブファンドの大多数がインデックスに勝てない」ですが、その前に私が実践している「インデックス投資」が何かということを書いておきましょう。一言でまとめると、インデックス投資とはインデックスファンドと言われる投資信託を使って世界の株式や債券などに分散して投資する方法です。

 インデックスとは、「TOPIX」や「日経平均株価」、「ダウ平均株価」など、計算で求められる数字です。

 例えば、日経平均株価は、日経新聞社が日本を代表する上場企業225社を選んで、その株価を使って計算されるもので、市場全体の値動きを代表するような数字です。TOPIXであれば、東証一部に上場している企業全ての株を各企業の時価総額の比率で組み入れる、という計算で求められています (本当はもう少し細かいのですが、ここでは詳細は割愛します)。

 外国の株式でも同様で、ダウ平均株価と呼ばれるアメリカ株のインデックスは、S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス社が代表的な30社を選んで計算しています。

 日本やアメリカのような国別だけではなく、先進国全体、日本を除く先進国、新興国全体、など複数の国の株を使ったインデックスもあります。また、株式のみではなく、債券、REIT、金、穀物といった様々な投資可能な商品に対してインデックスは存在します。

■主に使われているインデックス
投資対象 対象エリア 名称
株式 日本 日経平均株価
TOPIX(トピックス)
東証マザーズ指数
アメリカ ダウ平均株価(NYダウ)
S&P500指数
NASDAQ(ナスダック)指数
イギリス FTSETM100指数
ドイツ DAX30指数
先進国全体(日本を除く) MSCIコクサイ・インデックス
新興国全体 MSCIエマージング・インデックス
債券 日本 NOMURA-BPI総合指数
先進国全体 シティ世界国債インデックス
REIT 日本 東証REIT指数
先進国全体(日本を除く) S&P先進国REITインデックス

 そして、インデックスファンドという投資信託は、これらのインデックスに連動することを目指して運用されています。日経平均株価に連動することを目指すインデックスファンドは日経平均株価が5%上がると投資信託も5%値上がりし、日経平均が3%下がると投資信託も3%値下がりするように運用されます。

 インデックス投資とは、このようなインデックスファンドを買ってひたすら持ち続ける投資法です。

 この投資法では、インデックスに含まれる銘柄は全部保有するということになるので、「どの企業の株が儲かるか」などと考えずに全部買っておくことになります。世界の株式市場や債券市場などの全体の値動きに合わせて、儲かったり損したりするのがインデックス投資です。 儲かるか損するかは、インデックスが値上がりするか値下がりするか次第です。

個別に値上がりしそうな金融商品を予測するのは
すべて「アクティブ投資」

 一方、「インデックス投資」と対になる投資法として「アクティブ投資」があります。

 インデックス投資のように機械的に決められた銘柄を持っておくのではなく、自ら売買する銘柄を選んだり、売買タイミングを考えたりする投資を総称して「アクティブ投資」と呼びます。

 具体的には、割安な株を探す「バリュー投資」、成長しそうな成長株を見つけようとする「グロース投資」、チャートを見て買い時や売り時を見極めるテクニカル分析を使った投資、今年有望な国や地域への投資、景気などを総合的に判断して株や債券やREITなどの投資対象を変える投資、為替の値動きを予測して頻繁に売買を行うFXのデイトレーダー、などは全てアクティブ投資になります。

 また、投資信託を買って、自分では投資対象の銘柄や売買タイミングを考えていないとしても、ファンドマネージャが投資銘柄や売買タイミングを選ぶアクティブファンドであれば、それもアクティブ投資です。

 つまり、大きく分けてしまえば、インデックス投資以外はアクティブ投資であると言えます。

投資のプロが運用する「アクティブファンド」は
インデックス(市場全体の値動き)に勝てない?

 さて、投資法が「インデックス投資」と「アクティブ投資」という2つがあるとして、どっちの投資法が優れているのでしょうか?

 今回は、ファンドマネージャの判断で売買するアクティブファンドをアクティブ投資の代表として、インデックスと比較してみます。これが、今回のテーマである運用業界が語りたがらない不都合な事実である「アクティブファンドの大多数がインデックスに勝てない」という話です。

 アクティブファンドでは、ファンドマネージャが投資銘柄を選んだり、よい売買タイミングを計ったりして利益を出そうとします。

 ファンドマネージャはそれを専門にして給与を得ている投資のプロです。彼らは、仕事として高い給料をもらって日々相場を分析しています。一般人ではアクセスできないようなアナリストの情報に、アクセスすることもできます。また、情報を得るにしても、年間利用料が200万円を超えるようなブルームバーグの端末なんてものを使って情報を得ることも可能です。

 そんなプロが運用するアクティブファンドですから、インデックスを凌駕する結果を出してほしいものです。 それを実現できなければ、ただの給料泥棒と言われてもしかたありません。

 しかし、世の中は残酷で、その期待は裏切られます。大多数のアクティブファンドはインデックスに負けているのです。

アメリカと日本、どちらのアクティブファンドも
大半がインデックスに敗北

 それを示すデータとして、今回はS&P ダウ・ジョーンズ・インデックスが発行している「SPIVA」スコアカードを紹介しましょう。「SPIVA」は、「S&P Indices Versus Active Funds」の略で、インデックスとアクティブファンドの比較をしています。本原稿執筆時点では2016年末までのデータを比べています。

 まず、「アメリカ大型株に投資するアメリカ国内のアクティブファンド」と、アメリカの大型株の代表的なインデックスである「S&P500」を比較した結果が、下の表です。表を見ると、2016年末までの5年間、10年間、15年間のどの期間でもアクティブファンドの9割前後がS&P500に負けています。

■「S&P500」に負けた大型株アクティブファンドの割合
期間 負けたアクティブファンドの割合 
5年間 88.30%
10年間 84.60%
15年間 92.15%
出典:「SPIVA®U.S.Scorecard」(2016) 注)クリックでPDFが開きます

 大型株以外を見ても、アメリカ株のほとんどの分野で、80%以上のアクティブファンドがインデックスに負けています。

 アクティブファンドはインデックスを上回ることが目標と掲げられている場合が多いですが、それを達成できているアクティブファンドは2割もいません。8割のファンドマネージャは給料をもらって一体何をやっているというのでしょうか。

 「日本のファンドマネージャはただのサラリーマンで二流や三流だが、海外のファンドマネージャは優秀」のような声もしばしば聞こえますが、金融先進国のアメリカにおけるファンドマネージャであってもこのような成績です。

「SPIVA」には、日本で販売されているアクティブファンドの成績も載っているので、それも表にまとめてみました。アメリカ同様に大型株での比較です。

■「S&P/TOPIX 150」に負けた大型株アクティブファンドの割合 ※1
期間 負けたアクティブファンドの割合 
5年間 73.72%
10年間 68.67%
出典:SPIVA®Japan Scorecard」(2016) 注)クリックでPDFが開きます
※1「S&P/TOPIX 150」は、S&P社が作成している日本の大型株インデックス

 日本で大型株に投資するアクティブファンドは、アメリカ国内のアクティブファンドよりは善戦していますが、それでも5年間の成績では73%がインデックスに負けています。日本のデータでは最長の10年でも、69%はインデックスに負けています。

新興国株式を見ても
アクティブファンドはインデックスに惨敗

 こういうことを書くと「アメリカは最も効率的な市場だから他人を出し抜いて儲けるのは難しい。だから9割のアクティブファンドが負ける。でも、アメリカより市場が非効率な日本ではアクティブ運用の勝率が少しは改善しているので、さらに市場の歪みが大きい新興国ならアクティブ運用が有利になるはずだ」という声も聞こえてきそうです。そこで現実のデータはどうなっているか見てみましょう。

「SPIVA」から、新興国株式に投資する日米両方のアクティブファンドを、インデックスと比較した結果をまとめたのが以下の表です。

■「S&P/IFCI Composite」に負けた新興国株アクティブファンドの割合 ※1
期間 負けた割合
アメリカで販売されているファンド 日本で販売されているファンド
1年間 63.90% 82.89%
3年間 83.56% 83.33%
5年間 74.73% 93.15%
10年間 85.71% 95.45%
15年間 89.89%
出典:「SPIVA®U.S.Scorecard」(2016)SPIVA®Japan Scorecard」(2016) 注)クリックでPDFが開きます
※1「S&P/IFCI Composite」は、S&P社が作成している新興国株式インデックス

 アメリカのレポートで新興国株式の対インデックス比較を見ると、15年間で89.9%のアクティブファンドがインデックスに負けています。同様に日本のレポートを見ても、最長の10年間で95.5%がインデックスに負けています。

 非効率的な新興国ならアクティブ運用が有利とまことしやかに言う人もいますが、このレポートからはそのような結果は確認できません。

 さらに「SPIVA」では、株だけでなく債券も同じ比較をされていますが、こちらでもアクティブファンドは惨敗です。結局、先進国だろうと新興国だろうと、株式だろうと債券だろうと、アクティブファンドはインデックスに惨敗しています。

「アクティブファンド」を買うくらいなら
「インデックスファンド」を買っておけばOK

 さて、インデックスファンドはわずかな手数料が引かれていますが、基本的にはインデックスにほぼ連動しています。つまり、アクティブファンドの多くがインデックスに惨敗しているということは、インデックスファンドに対しても負けていると言えます。

  アクティブファンド < インデックス ≒ インデックスファンド

 こうなってくると、「ボトムアップアプローチで割安な銘柄を発掘し……」、「景気循環の波をよんで機動的に現金比率を……」などのアクティブファンドのお題目が空々しく聞こえてきます。

 アクティブファンドは、その宣伝用のパンフレットや目論見書では偉そうなことを言っていますが、戯言です。 アクティブファンドを買わずに、インデックスファンドを買って持っておけば十分と言えます。

ほとんどのプロの投資家が勝てないなら、
個人投資家が取るべき道はインデックス投資一択?

アクティブファンドを運用するプロのファンドマネージャの大多数が、運用を任せるに値しないような成績でした。では、プロではない素人の個人投資家がアクティブ運用をすればどうなるでしょうか?

 プロが勝てない中で、「素人でも頑張れば勝てる」というのは楽観的過ぎる考え方でしょう。素人の個人投資家が、いろいろ考えてもインデックスを上回る成績を残すのは難しいと考えておくのが妥当な考え方です。これこそが、私がアクティブ投資せずにインデックス投資をしている理由です。

 この連載が載っているザイ・オンラインを含め、マネー誌や投資情報を載せるサイトには、投資に勝つためとして様々な情報が掲載されています。しかし。プロでもダメということを前提に置くと、それらの情報を使って本当に儲けることができるのかは疑問があります。素人投資家が儲けたい場合、そのような情報を使って投資するのではなく、インデックスファンドを買って、後は投資のことは忘れていた方が、良い結果になるかもしれません。

 こんなことを書くと、「世の中には大儲けしているアクティブ投資家はいるぞ」という反論がありそうですが、これも簡単に説明がつきます。

 ひとつは運です。厳選投資した銘柄が「運良く」値上がりすれば大儲けです。中には運悪く大きく値下がりして損を出す人もいるでしょうが、運が良かった人は儲けられます。たぶん、マネー誌に載っているような成功投資家事例の何割かは、これに該当するのではないでしょうか?

 もう一つのパターンは実力です。本当に実力で儲けている人もいるでしょう。しかし、プロのファンドマネージャでも大多数が負けている世界において、実力で勝てる、しかも何年も何十年も勝ち続けるという人は、ごく一部です。大多数の人はこのような才能は持っておらず、真似して同じようになろうとしてもうまくいくとは思えません。

 それでも「運にかけて大儲けを狙いたい」「私には天から与えられた才能があるはずだ」という人は止めませんが、才能がない凡人はインデックスファンドを買っておく方がマシということが多いでしょう。

【今回のまとめ】
まずは、インデックス投資に興味を持って欲しい

 さて、長々と書いてきましたが、最後にまとめると、

・プロが運用するアクティブファンドはインデックスに勝てない
・プロで勝てないんだから、個人投資家も勝つのはもっと難しい
・だから、おとなしくインデックス投資をするのが一番

となります

 もちろんこれは私の考えであり、アクティブ投資をしたいという人はいいと思います。ただ、このような考え方があるということは頭の片隅にでも置いておいていただけると嬉しいです。

 そして、今回の話を読んで、少しでもインデックス投資に興味を持った方は、次回以降の連載もぜひ読んでもらえればと思います。 

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著者:吊られた男さん
(『吊られた男の投資ブログ』:http://www.tsurao.com/)

大手外資系製薬会社でシステム系エンジニアとして働くかたわら、約10年前よりインデックス投資を開始し、その運用益1000万円以上に。『吊られた男の投資ブログ』は、運用銘柄から資産状況まで赤裸々に公開されており、インデックス投資家の間で広く読まれている。ちなみにHNは、タロットカードの「The Hanged Man」から。

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