勝ち組トレーダーによる投資コラム集

ビットコインは「投資商品」としては成功したが「仮想通貨」としては失敗した! ビットコインの行き着く先である「デジタル・ゴールド」とは?吊られた男・連載コラム【第4回】

2018年1月12日公開(2022年3月29日更新)
ザイ・オンライン編集部
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2017年の後半に異常とも言える高騰を見せたビットコイン。IT技術の進歩によって誕生し、国を超えた「新しい通貨」として注目を浴びる仮想通貨の筆頭とも言える存在だが、吊られた男さんは「ビットコインは、結局“通貨”になることはできなかった」と冷静な目を向ける。それはどういう意味なのか? 連載第3回では、吊られた男さんが「個人投資家として、ビットコインをどう考えるべきなのか」を語る。

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ビットコインが高騰
わずか12日で価格が倍、約3カ月で4倍に!

 今回のテーマはビットコインです。

 最近はインターネット上ではビットコインに関するニュースが多く流れます。ビットコインを支える技術の話、技術上の問題を解決するための解決方法を巡った分裂、などもありますが、何と言ってもビットコインで注目なのは、その値動きです。

 ビットコインの値動きのすごさがわかりやすいように、50万円ごとの大台を突破した日を抜き出してみました。ビットコイン価格はものすごいスピードで上昇しており、100万円から200万円までわずか12日です。1BTC持っていれば、12日間で100万円もの利益ですからここでビットコインを持っていた人は笑いが止まらなかったでしょう。

【ビットコイン高騰の推移】
 ●2017年8月30日:  1BTC=50万円突破
 ●2017年11月26日: 1BTC=100万円突破
 ●2017年12月7日:  1BTC=150万円突破
 ●2017年12月8日:  1BTC=200万円突破

 上記のようにビットコインはもの凄いスピードで価格が上昇しましたが、連日右肩上がりに上昇しているわけではありません。11月30日深夜には、あっという間に30%程度も価格が下落しました。価格上昇はすごいのですが、下落する時もものすごいスピードで下落しています。しかし、この暴落もニュースになり、ビットコインがさらに注目を集める理由となっています。

 このような荒々しい値動きをするビットコインですが、新たな投資先として注目が集まっています。特に、FXのレバレッジが規制されて厳しくなって大きく勝負できなくなった人にとって、ビットコインの値動きは魅力的でしょう。

 さらに、ビットコインは、FXのようにレバレッジをかけることができます。レバレッジの倍率は取引所によって異なりますが、高いところだと最高25倍のレバレッジをかけることができます。

 25倍という数字はFXと同じですが、ビットコインは米ドルなどと違って、そもそもの値動きが違います。

 例えば、2016年6月24日、イギリスの国民投票でEU離脱が決まったことにより、為替は大変動を起こして大騒ぎになりましたが、そのときですら米ドル/円レートの変動幅は7%程度でした。それに対して、数時間で30%もの値動きをするのがビットコインです。そこに25倍のレバレッジをかけられるのですから、うまくいけば、30%×25倍=750%と、一晩で7倍以上の利益を出すことも可能です。逆に、読みを大きく外すと、数時間で強制ロスカットという憂き目にあいますが……

 いずれにしても、高いレバレッジをかけられる商品がこれだけ急激な価格上昇(乱高下)をしているのですから、注目を集めないはずはありません。

 このように盛り上がるビットコイン投資ですが、すでに過去に発生したオランダのチューリップバブルを超えたという話もあり、「ビットコインはバブルだ」「いや、ビットコインは本当にすごいものだ」とそれぞれの立場から主張する人たちもいます。

 ビットコインの値動きはバブルなのかもしれませんが、これだけ投資先として注目を集めていれば、投資商品として社会的に認知されたと言っていいでしょう

仮想通貨として誕生したビットコインは
本当の意味で「通貨」なのか?

 一方、「ビットコインとはそもそも何か?」を冷静に考えてみましょう。

 「ビットコインとは、何かすごい技術を使っていて、国やどこかの組織など発行体がいなくても勝手に信用が担保されるすごい仮想通貨」といったものが世間一般の認識でしょうか。

 ブロックチェーンやマイニングといった小難しい話は置いといて、「ビットコイン=仮想通貨」だったはずです。日本円や米ドルのように国が発行した法定通貨と違った“新たな通貨”として登場しました。

 しかし、現時点でもう仮想通貨として失敗に終わったと言ってよさそうです

 こう書くと、「ビットコインを使える店も出てきている。オンラインショップだけではなく、ビックカメラなど実店舗でも取り扱いを始めている」という声が聞こえてきそうです。

 では、本当の意味でビットコインで支払いできる店がどれだけあるでしょうか?

 ビットコインで決済できると言っている店の原理は基本的に一緒で、実は日本円で決済しています。モノやサービスについている価格は、円建てです。

 例えば、ビックカメラはビットコインを使えるとしている店の一つですが、ビックカメラの商品の値段は円建てです。「Xperia XZ Premiumは○○BTC」のように、ビットコインで値段がついていることはありません。

 決済の瞬間、ビットコインを売って日本円に換え、その日本円の金額分の買い物をします。これは、漫画を古本屋に売って日本円を手に入れて、その日本円で買い物をしているのと同じです。漫画は、仮想通貨とは言いません。

「通貨とは何か」を考えると
ビットコインは当てはまらない

 少し、「通貨とは何か」という話をさせてください。一般的に、通貨に求められる基本的機能は以下の3つですが、ビットコインはこれを満たしていません。

 ●価値の尺度
 ●交換の手段
 ●価値の保存

 「価値の尺度」とは、「ハンバーガー 320円」のように、それでモノやサービスに値段をつけられることです。

 ビットコインが使えるビックカメラでもすべて日本円で価格がついており、残念ながらビットコインでいくらと表現されていません。ビットコインで決済できるというお店も、価格は法定通貨である円やドルで表現されています。

 ビットコインでは、あくまで決済の都度、その時の法定通貨との交換レートで交換して買い物をしているだけです。価値の尺度は日本円など法定通貨が行っています。これでは、ビットコインが通貨の基本機能である「価値の尺度」を持っているとは言えないでしょう。

 「交換の手段」も怪しいところです。

 確かに、決済時にビットコインを持っていればモノやサービスを買える店が増えています。しかし、ビットコイン単独で決済はできません。モノやサービスの価格は日本円や米ドルといった法定通貨でついているため、上でも書いたように交換時には法定通貨である円や米ドルへの換算が必要です。

 つまり、ビットコインは日本円や米ドルがあってこそ使えます。ビットコイン単体だと価値を表現できずに、相手側も何ビットコインで売っていいのかが分かりません。ビットコイン単独では交換の手段として成り立たないのです。ビットコインは「交換の手段」としては、半分YESで半分NOといったところでしょうか。

 最後の「価値の保存」に関しては、ビットコインは満たしていると思います。

 まとめると、ビットコインは、通貨に求められる3つの基本的機能のうち1つは持っておらず、1つは半分しか成り立たないという、非常に不思議な存在なのです。

 ビットコインは仮想通貨として、「国家に縛られない」というようなことが言われています。しかし、ビットコインを使うにも、ビットコイン自体の価値の表現にも、法定通貨である日本円や米ドルに依存しています。国家が発行している法定通貨無くして成立していないのが、ビットコインの現状です

 このように、ビットコインは通貨と呼べた代物ではないでしょう。通貨になりたくてなれない何者かといったところです。

ビットコインの将来像は
「通貨」ではなく「金」?

 仮想通貨ということで市場に出てきたビットコインですが、人気の投資商品にはなったものの、実際には仮想通貨ではないのが現状です。しかし、これは現時点での話です。将来的にビットコインがさらに発展して通貨となる時代がやってくるのでしょうか?

 個人的な答えはNoです。

『デジタル・ゴールド--ビットコイン、その知られざる物語』(日本経済新聞出版社)という本も出版されていますが、まさにこの「デジタル・ゴールド」という言葉がビットコインの着地点ではないでしょうか。

 ゴールドは、現金や株や債券などの代わりに資産を保全しておく手段の一つとして活用されています。

 ゴールドは、日々値付けがされていて高い換金性があります。また、先物などいろいろな手段で投資商品の一つとして広く世間で認知されています。特定の国家が破たんしてもゴールドの価値は急に失われません。

 先ほど、ビットコインは「価値の保存」の機能を持っていると書きしたが、これらのゴールドが持つ特徴こそ、まさにビットコインが備えている特徴です。デジタル化されたゴールドというのが、ビットコインの将来像でしょう

結局のところ、吊られた男は
ビットコイン投資をしているのか

 最後になりますが、ここまでビットコインについて書いていると、「この吊られた男なる人物はビットコイン投資をしているのだろうか?」ということが気になる人がいるかもしれません。

 結論を言えば、ビットコインへの投資は一切していません。この値上がりをただ傍観しているだけでした。遊びとしてほんの少しだけでも買っておけば、海外旅行に行くお金くらいは作れていたかもしれないと思うと少し残念です。

 しかし、このような不確実な商品に投資していると資産を失っていた可能性もあるわけで、「買っておけばよかった!」というのは結果論でしょう。

 私の場合、「他人よりも有利に儲けられる商品を見つけることが難しい」と考えるからこそインデックス投資をしているわけで、このような“儲け損ね”は諦めています。

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著者:吊られた男
(『吊られた男の投資ブログ』:http://www.tsurao.com/)

大手外資系製薬会社でシステム系エンジニアとして働くかたわら、約10年前よりインデックス投資を開始し、その運用益1000万円以上に。『吊られた男の投資ブログ』は、運用銘柄から資産状況まで赤裸々に公開されており、インデックス投資家の間で広く読まれている。ちなみにHNは、タロットカードの「The Hanged Man」から。

2017年7月には、初の著書となる『毎月10分のチェックで1000万増やす!  庶民のためのズボラ投資』(ぱる出版)を上梓。

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【第3回】「つみたてNISA」と「iDeCo」は、投資の常識を大きく変える! 金融庁の思惑は「個別株の短期売買」から「インデックスによる長期分散投資」への転換か
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