闇株新聞[2018年]

富士フイルムが米ゼロックス買収で
米国の「物言う株主」と大バトル!?闇株新聞が助言する「物言う株主との戦い方」

2018年5月11日公開(2018年5月11日更新)
闇株新聞編集部
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富士フイルムホールディングスによる、米ゼロックス買収が行き詰まっています。ゼロックスの株主にはカール・アイカーン氏など名うての「物言う株主」がおり、他も大半は機関投資家です。彼らに共同歩調を取られると買収が頓挫したり、大幅な譲歩を迫られる可能性もあります。モメにモメている企業買収の裏側を、刺激的な金融メルマガ『闇株新聞プレミアム』が追っています。

富士フイルムが米ゼロックス買収で米国の「物言う株主」と大バトル!? 闇株新聞が助言する「物言う株主との戦い方」

富士フィルムとゼロックスの関係と
富士ゼロックスを介した買収案とは

 まず、富士フイルムホールディングス(以下、富士フイルム)、富士ゼロックス、ゼロックスの関係について「歴史」を振り返っておきましょう。

【1962年】ゼロックスの英国子会社ランク・ゼロックスと富士フイルムが「富士ゼロックス」を設立。資本金200億円は折半で、富士ゼロックスの株式は、富士フイルムとランク・ゼロックスが50%ずつ所有。

【1997年】ランク・ゼロックスはゼロックスと英ランク・オーガニゼーションの合弁会社だったが、1997年にゼロックスの100%子会社となることが決定。そのため富士ゼロックスは、富士フイルムとゼロックスの合弁会社になった。

【2001年】ゼロックスが経営不振に陥り、富士フイルムはゼロックスから富士ゼロックス株の25%を買い取った。これにより富士ゼロックスの出資比率はゼロックス25%:富士フイルム75%になった。

 さて、1月31日に発表された富士フイルムによるゼロックスの買収案とは、次のようなものでした。

【1】富士ゼロックスが金融機関から6710億円を借り入れ、富士フイルムの保有する自社株75%を買い取る。これにより富士ゼロックスはゼロックスの完全子会社となる。

【2】富士フイルムは富士ゼロックス株を売却して得た6710億円で、ゼロックスの第三者割当増資を引き受けゼロックス株の「50.1%」を取得する。これによりゼロックスは富士フイルムを傘下に収める

 富士フイルムは富士ゼロックスの企業価値を約9000億円と算定し、その75%から「6710億円」という数字を出したのでしょう。

 しかし、ゼロックスの時価総額は買収提案を発表した時点で約90億ドル(今年1月時点の為替レートで約1兆円)ありました。直前の急騰を見ると情報が「漏れていた」のかもしれませんが、50.1%を取得するにはプレミアムなども考慮して倍額以上が必要で、とても6710億円では足りません。

 そこで富士フイルムはゼロックスの株主に25億ドル(当時の為替で2700億円)の特別配当を支払うことでゼロックスの企業価値を引き下げ、何とか6710億円で収まるようにと考えたようです。

ゼロックス株主にメリットない買収案が
通ると思った富士フイルムのおめでたさ

 この買収案は一見すると、富士フイルムがゼロックスをタダで手に入れるように見えますが、ポイントはゼロックス株の取得が「50.1%」にとどまることです。買収された後もゼロックスはNY株式市場に上場を維持し、ジェイコブソンCEOをはじめ現経営陣もそのまま残留します。ゼロックスの一般株主もそのままです。

 もちろん、買収後は富士フイルムが何人かの役員(おそらく4人)を送り込むことになっているのでしょうが、これで富士フイルムが買収後にゼロックスをコントロールできるかといえば到底無理で、なんとも中途半端な買収案だったと言わざるを得ません。

 最大のネックは第三者割当増資によって保有比率が半分になってしまう一般株主たちが、すんなりと買収案に賛成しないだろうということです。

 彼らからすればプレミアムを一切受け取れないまま経営権を奪われてしまうことになるのですから、フェアではありません。25億ドルの特別配当が出るとはいっても原資はゼロックスの資産ですから(その分ゼロックスの企業価値は目減りするわけで)何のメリットもないのです。

 しかも5月に予定されているゼロックスの株主総会では、富士フイルムには議決権がありません(50.1%の第三者割当増資を含む買収案を承認するための株主総会だから)。これで富士フイルムは買収案が承認されると本気で考えていたのでしょうか? 大変に「おめでたい」というほかありません。

買収差し止め→和解→和解破棄!
混迷極める現経営陣と物言う株主の攻防

 4月27日、ゼロックスの「物言う株主」たちの申し立てを受けてNY州の裁判所は、富士フイルムのゼロックス買収を一時的に差し止めてしまいました。ここから事態は「奇怪」な展開になってきます。

 5月1日、買収された後も経営にあたることになっていたゼロックスの現経営陣が、「物言う株主」たちと電撃的に和解します。その内容とはジェイコブソンCEOを含む7名の現経営陣が辞任して、物言う株主が推薦する6名の取締役候補を受け入れると発表しました。

 富士フイルムが推薦する取締役候補は4名なので(取締役の定数は10名)、すでに過半数を押さえられてしまったことになります。

 富士フイルムの古森会長兼CEOも「経営陣が交代しても合意した買収案は有効で、新経営陣にも受け入れられるはずだ」と夢物語を語っていたため事前に知っていたようですが、それならやはり相当に「おめでたい」ことになります。

 ところがわずか2日後の5月3日、ジェイコブソンCEOを含む現経営陣が「大株主が期限内に提訴を取り下げなかった」として和解の撤回を発表しました。ただし、買収差し止めは上級裁判所に申し立てられるため、富士フイルムとしては何ら事態が好転していることにはなりません。

タフな戦いになることは必至
この先富士フイルムはどう立ち回るべきか

 さてここからどうなるかの予想は難しいのですが、どうも今回はアイカーン氏も腰が据わっており、富士フイルムを相手に大儲けしようと考えているようです。

 普通は買収合戦になると、買収される会社の株価は条件のつり上げを狙って上昇するものです。ところが、今回のゼロックスに関しては株価は逆に急落しています。先週末時点では「物言う株主」たちの大半がコスト割れになっていると推察されます。

 だとすれば富士フイルムも、長期戦を覚悟で「最悪やめてもいいんだよ」くらいの態度で臨むべきだと考えます。富士ゼロックスもまだ自社株買いを完了させていないはずで、本当に中止したとしても被害は最小限に収まるでしょう。

 ただし富士フイルムが自ら買収を中止してしまうと訴訟リスクが出るため、あくまでも「物言う株主」の無謀な要求で買収をつぶされたという体裁をとらなければなりません。相当に頭脳と体力を使ったタフな戦いになるのは必至です。今後の成り行きが注目されます。

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富士フイルムは利益の上がっている富士ゼロックスの75%と、業績が縮小しているゼロックス50.1%を交換して簡単に買収が完了するという「おめでたい発想」だったのかもしれませんが、事態はかなりややこしいことになってきました。刺激的な金融メルマガ『闇株新聞プレミアム』では、今後も富士フイルムによるゼロックス買収の行方を追っていく予定です。

 

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