世界の株式市場を牽引してきた時価総額上位企業に、変調の兆しが見えます。なかでもアマゾン(世界時価総額4位)とフェイスブック(同8位)は不吉な悪材料に見舞われ、直近でも時価総額が8兆円ずつ目減りしています。「超勝ち組企業」であるはずの2社にいったい何が起こっているのか!? 刺激的な金融メルマガ『闇株新聞プレミアム』が解説します。
被害者面して無傷では済まされない
フェイスブックの個人情報流出事件
フェイスブックの利用者は世界に21億人もいると言われますが、日々タレ流される個人データ/行動データがどのように利用され、収益化されているかについてはほんど明らかにされていません。
個人データ/行動データの利用(流用)について、フェイスブックは「利用者の了解を得ている」と言っています。どこかで押した「同意する」のボタンのことですが、多くの利用者が漠然とした不安を持っていたところだと思います。
そうした中、英データ管理会社「ケンブリッジ・アナリティカ」によるフェイスブック利用者情報の不正取得疑惑が報じられました。
2016年11月の米国大統領選挙でトランプ陣のデータ分析会社「ケンブリッジ・アナリティカ」が、フェイスブックから利用者5000万人分の個人情報を不正に取得。利用者の行動パターンに基づき細分化された方法でヒラリー・クリントンの印象操作をしてトランプを当選させたと一部マスコミが報じた。
フェイスブックは「ケンブリッジ・アナリティカの関連会社と契約関係にあったアレクサンドル・コーガン博士に、研究目的としてただ同然で提供したデータが不正利用された。まさか大統領選に利用されるなどとは夢にも思っていなかった」と釈明しました。
あくまで被害者としての立場をアピールしたわけですが世論の批判は収まらず、ついにはザッカーバーグCEOが「軽率だった」と謝罪しました。とはいえ、被害者としての立場を覆したわけではありませんし、普段から利用者の行動データをどのように利用して収益に結びつけているかについても説明はありませんでした。
となれば、今後はフェイスブックの最大の収益源(つまり個人情報・行動データ)の利用規制/監視が強化されることになるはずです。またザッカーバーグは公聴会にも呼び出されるはずで、受け答え次第ではさらに問題は拡大するかもしれません。
株価は当然下落しており、事件が報道されてから時価総額は759億ドル(約8兆円)も目減りしました。収益は絶好調なのでPERは26倍程度ですが、実物資産は140億ドルほどしかありません。
これから世論がどう向かうかはわかりませんが、大統領選挙の結果に大きな影響を与えたことは明白で、事件はこのまま収束に向かうこともフェイスブックが無傷で済むこともないでしょう。
業績は好調、ビジネスにも問題はないが…
アマゾンは選挙対策の「標的」にされる!?
最近瞬間的にアルファベット(グーグル)を抜いて時価総額が世界第2位となったアマゾンにも、問題が降りかかろうとしています。
ビジネスや業績には何の問題もなく、潤沢なキャッシュフローを惜しげもなく設備投資や値下げに使う経営方針は顧客にも株式市場にも評価されています。本来なら全く問題がありません。
それでは何が問題なのか!? トランプ大統領は2016年の大統領選では、勢いを失っている米国の伝統的企業の売り上げと利益を、対米貿易黒字国から取り戻すと公約して勝利しています。来る中間選挙と2020年の大統領選挙では米国の伝統的小売企業の売り上げと利益を「税金もロクに支払っていない」アマゾンなどEC企業から取り戻すと公約するはずです。
アマゾンに限らず国際展開しているEC企業は、売り上げや収益の捕捉が難しく、結果的に大変に低い税率になっていると批判されています。トランプ政権はEC大手企業に対しては利益ではなく売り上げそのものに課税することを考えているようです。
また何かとトランプ政権に批判的なワシントン・ポストのオーナーが、アマゾンの創業者にしてCEOであるジェフ・ベソスであることも影響していないとは言えません。
アマゾンの株価は3月12日に1598ドルの高値を付けていますが、先週末は1447ドルに下落。時価総額にして約8兆円下落しています。もともとアマゾンのPERは300倍をこえており、株式市場が冷静になると「とんでもなく高すぎる」評価となり、さらに急落する恐れもあります。
世界の時価総額ランキングでアマゾンは4位、フェイスブックは8位に入っています(3月31日現在)。ここまで世界の株式市場を牽引してきた時価総額上位銘柄が低迷を始めると、相場のエネルギーは大きく損なわれてしまいます。刺激的な金融メルマガ『闇株新聞プレミアム』では今後も市場の雰囲気を注意深く見守っていきます。
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