世界投資へのパスポート

米国の「IPOブーム」でモルガンスタンレーに妙味!
ドットコム・ブームでは2年で株価が5倍に上昇した
「IPO取扱実績ナンバー1」の投資銀行の実力とは?

2018年10月22日公開(2018年10月22日更新)
広瀬 隆雄
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米国のIPO市場が活況!
年初来で156件ものIPOが実施される

 米国の新規株式公開(IPO)市場が、1990年代後半のドットコム・ブームを想起させるような活況を呈しています。2018年第3四半期は112億ドルが調達され、過去4年間で最も活発な第3四半期になりました。

 年初来では、第3四半期までに156件のIPOが実施されました。こちらも過去4年で最高です。

 今年は単にIPO調達金額、IPO件数が多いだけでなくIPO後の株価の上昇も良いです。第3四半期のIPOは、平均して+34%上昇しました。

注目のユニコーン企業であるウーバーも
いよいよIPOを実施?

 先日、ライドシェアリングのリフト(Lyft)がIPOの主幹事にJPモルガン、クレディスイス、ジェフリーズの3社を選んだというニュースが入ってきました。

 また、上場予備軍の中では最大規模であるウーバー(Uber)のIPO引受け合戦も佳境に入っており、先日、モルガンスタンレーが1200億ドルという破格の評価で引き受けるという提案を行ったそうです。

 ウーバーは、これまでIPOをずっと先延ばしにしてきました。そのウーバーがいよいよIPOするとなると、他のユニコーン企業(*)もうかうかしていられないのです。パランティア、ポストメイツ、パックスなどのIPOも動き出す可能性があります。
(*)=時価評価で10億ドルを超える大型のスタートアップ企業

 もし、これらの企業が続々とIPOするならば、2019年も今年同様活況になると思われます。

ウォール街最大級の株式部を持つモルガンスタンレーは
IPOが活況になると売上げが上昇

 そこで注目されるのが、株式の新規公開で最も実績があるモルガンスタンレー(ティッカーシンボル:MS)ですモルガンスタンレーは、ウォール街で最大級の株式部を持っています。

 モルガンスタンレーの株式部は、単に「量」の面で大きいだけでなく、「質」の面でもウォール街で最高だという評判を誇っています。

 モルガンスタンレーの株式ビジネスは、IPO市場が活況になると大繁盛することで知られています。実際、ドットコム・ブームの最中の1998年9月から2000年8月にかけて株価は5倍になりました

モルガンスタンレーは、
もともとJPモルガンの証券部門だった

 モルガンスタンレーのルーツは、JPモルガンです。1929年の大暴落の後、米議会は「商業銀行の業務と証券業務を切り離した方が良い」と考え、グラス・スティーガル法を成立させました。これによりJPモルガンは、強制的に証券部門を切り離すよう指示されたのです。そうやって出来たのが、モルガンスタンレーです。

 モルガンスタンレーがJPモルガンから分離された際、JPモルガンの錚々たる顧客をそっくりモルガンスタンレーが引き継いだため、モルガンスタンレーは直ぐにトップクラスの投資銀行になりました。

 一例として、ゼネラル・モーターズ(ティッカーシンボル:GM)ゼネラル・ダイナミクス(ティッカーシンボル:GD)など、およそ会社名に「ゼネラル」がつく企業はことごとくモルガンスタンレーの顧客になりました。

 さらに、モルガンスタンレーAT&T(ティッカーシンボル:T)アップル(ティッカーシンボル:AAPL)など、重要なIPOを担当してきました。

 その後、1999年にグラス・スティーガル法は廃止され、ふたたび商業銀行が証券業務を兼営して良いことになりました。そこでJPモルガンは、自前の証券業務を社内育成することでモルガンスタンレーと競争しはじめたというわけです。

 このようにモルガンスタンレーはウォール街の王者として君臨してきたのですが、長年、いわゆるホールセール、すなわち機関投資家向けのビジネスだけを行っていました。

 しかし、ホールセールのビジネスだけだと景気サイクルの影響を受けやすいので、富裕層を相手にするディーンウィッターならびにスミスバーニーを傘下に入れ、現在ではおおまかに言って、機関投資家向けビジネスと富裕層向け資産運用のビジネスが半々になっています。

モルガンスタンレーは、リーマンショック以降
利益の少ない債券部を縮小

 リーマンショック以降、モルガンスタンレーは意図的に債券部を縮小しました。その理由は、浮き沈みの激しいビジネスの比重を下げ、安定した収益が見込める富裕層向け資産運用のビジネスの比重を高めた方が、株主の期待に応える経営が出来ると考えたためです。そのような理由から、モルガンスタンレーの債券部はメガバンク5行のうち一番規模が小さいです。

 最近は、ウォール街全般的に債券部のビジネスが儲からなくなってきています。それは高速トレーディングの導入で顧客注文の執行が自動化され、その結果、投資銀行の利ザヤが小さくなったこと、債券のボラティリティ(=価格のブレのこと)が漸減したことなどによります。

 いずれにせよ、モルガンスタンレーの「債券部を縮小する!」という決断を下したのは正しかったのです。

モルガンスタンレーの足下の業績は
堅調に推移

 先日発表されたモルガンスタンレーの第3四半期決算は、EPSが予想1.01ドルに対し1.17ドル、売上高が予想95.5億ドルに対し98.7億ドル、売上高成長率は前年同期比+7.3%でした。

 部門別売上高では、機関投資家を相手にするインスティチューショナル・セキュリティーズ部門売上高は、前年同期比+13%の49.3億ドルでした。

 一方、富裕層向け資産運用アドバイスをするウエルス・マネージメント部門売上高は、前年同期比+4%の43.99億ドルでした。なお、同部門の税引き前マージンは、27.1%という立派な数字でした。このビジネスは、顧客の預かり資産が増えると営業効率の改善からマージンが拡大しやすい特徴を持っています。

次に、業務内容別の売上高を見ると、投資銀行フィー売上高は前年同期比+14%の15.67億ドルでした。うちM&Aフィーは、-8%の5.1億ドルでした。株式引受けフィーは最近のIPOブームを反映し+62%の4.41億ドルでした。債券引受けフィーは+15%の5.08億ドルでした。

 トレーディング売上高は、前年同期比+2%の27.5億ドルでした。株式トレーディングは、+7%の20.2億ドルでした。債券トレーディングは、+1%の11.8億ドルでした。

 また、モルガンスタンレーの有形自己資本利益率(ROTCE)は13.2%でした。前年同期は11.0%でした。

 普通株式等ティアワン比率(CET1 capital ratio)は、16.7%で、自己資本は十分です。

 モルガンスタンレーの1株当たり利益(EPS)のアナリスト・コンセンサスは、今年が$4.94、来年が$5.21です。現在の株価は46.42ドルなので、来年のEPSに基づくと株価収益率(PER)は8.9倍になります。配当利回りは2.61%あります。

【今週のまとめ】
米国のIPOブームに乗るには
IPO引受実績ナンバーワンのモルガンスタンレーに注目!

 米国は、いまIPOブームに沸いています。来年はウーバー(Uber)のIPOも控えています。

 モルガンスタンレーはIPOでナンバーワンの実績を誇っており、1990年代のドットコム・ブーム当時、株価が5倍になったこともあります。いま再びウォール街はIPOで活況を呈しているので、再び同社に注目が集まる可能性があります。

■モルガンスタンレー(MS)チャート/日足・6カ月
モルガンスタンレー(MS)チャート/日足・6カ月モルガンスタンレー(MS)チャート/日足・6カ月(出典:SBI証券公式サイト)
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