足踏みする米国株式市場は、
二番底を確認しにゆく展開に
先週の米国株式市場はダウ工業株価平均指数が-2.2%、S&P500指数が-1.6%、ナスダック総合指数が-2.1%でした。
ダウ工業株価平均指数チャート/日足・6カ月(出典:SBI証券公式サイト)※画像をクリックすると最新のチャートへ飛びます
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今回の調整局面では、S&P500指数が10月29日に付けたザラバ安値2603.54をボトムとしてそこから切り返し、50日移動平均線のところまで戻ってきたところで再び売り物を浴び、いまは二番底を確認しにゆく展開となっています。
株式市場に対して強気派の根拠は
米国10年債利回りや原油価格の下落
ニューヨーク市場に強気派の意見としては、まず経験則として11月から1月にかけて株式市場が上昇しやすい時期にさしかかっているという意見があります。加えて、中間選挙を巡るアノマリーとしても、選挙後は相場が高いことが知られています。
また、10月に入り、米国10年債利回りが3.2%を超えたことで株式バリュエーションに対する下方プレッシャーが高まったという見方が台頭しましたが、現在は米国10年債利回りが3.06%まで下がって来ており、危険水域ではありません。
米国10年債利回りチャート/日足・6カ月(出典:SBI証券公式サイト)※画像をクリックすると最新のチャートへ飛びます
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さらに、債券利回りと歩調を合わせて上昇してきた原油価格がこのところ大きく売り込まれており、ガソリン価格の高騰が物価に及ぼす影響を心配する必要は無くなりました。
このように株式を巡る環境は、ひと月前に比べれば格段に改善したと言うべきでしょう。
一方、弱気派の根拠は
相場を先導してきた「FAANG」の凋落
それにもかかわらず株式市場の反発は弱々しいです。それに「一体、なにを買えばいいのかわからない」という投資家の気迷いもあります。
その理由として、今回発表された第3四半期決算では、これまで相場の先導役を果たしてきたFAANG、すなわちフェイスブック(ティッカーシンボル:FB)、アマゾン(ティッカーシンボル:AMZN)、アップル(ティッカーシンボル:AAPL)、ネットフリックス(ティッカーシンボル:NFLX)、アルファベット(ティッカーシンボル:GOOG)のすべてが、なにかしらケチのつく悪い決算を発表したからです。
これまでのFAANGの中で決算をとりこぼす例というのはありましたが、FAANGの全てが枕を並べて討ち死にしたのは今回が最初でした。
それに加えて、エヌビディア(ティッカーシンボル:NVDA)のような去年の出世株の決算も凋落をひしひしと感じさせるものでした。
去年の出世株である「エヌビディア」は
驚くほど悪い決算を発表
エヌビディアの第3四半期決算(10月期決算)は、EPSが予想1.92ドルに対し1.97ドル、売上高が予想32.4億ドルに対し31.8億ドル、売上高成長率は前年同期比+20.7%でした。グロスマージンは60.4%でした。前年同期は59.5%でした。
ゲーミング売上高は、エヌビディアの予想(19億ドル)を下回る17.6億ドルでした。これは、前年同期比わずか+13%でした。第4四半期のガイダンスを引き下げたのはそのためです。
ゲーム向けGPU「パスカル」が、卸市場で在庫のだぶつきを生じています。この過剰在庫の整理には、3カ月から半年かかると会社側では予想しています。それはつまり、次の決算と、その次の決算も悪くなるリスクがあることを示唆しています。
データセンター売上高は、予想8.2億ドルに対し7.92億ドルでした。これは前年同期比+58%でした。この+58%というのは立派な数字ですが、市場の期待には届きませんでした。つまり、ここでも勢いに陰りが見えているのです。
第4四半期のEPSは予想2.01ドルに対し、新ガイダンス1.32〜1.49ドルが、売上高は予想34億ドルに対し新ガイダンス26.46億〜27.54億ドルが提示されました。
これらの予想数字は、「はっ!」と息を呑むほど悪い数字でした。
世界最大の半導体製造装置メーカーである
「アプライド・マテリアルズ」の決算も悪化
世界最大の半導体製造装置メーカーであるアプライド・マテリアルズ(ティッカーシンボル:AMAT)の第4四半期決算(10月期)は、EPSが予想97セントに対し97セント、売上高が予想40.1億ドルに対して40.1億ドル、売上高成長率は前年同期比+1.0%でした。
これらの数字はアナリスト予想になんとか到達していますが、来期のガイダンスは悪かったです。
第1四半期のEPSは、予想93セントに対し新ガイダンス75〜83セントが提示されました。売上高は、予想39.6億ドルに対し新ガイダンス35.6億〜38.6億ドルが提示されました。
アプライド・マテリアルズの新ガイダンスが悪かった理由として、最近米中貿易戦争が激化しており、それと絡めて中国向けに半導体の技術を輸出してはいけないようなムードになっているため、商売がやりにくくなっていることが指摘されました。
また、先行き不透明な環境では、経営者が先行投資を絞り込む傾向があります。半導体は市況色の強いビジネスですので、「今回の半導体サイクルは、どうやら終焉した」と判断する投資家が多いようです。
企業業績の伸び率は今がピーク!
株式市場の投資家は消極的に
下は、S&P500の四半期EPSが前年同期比どれだけ伸びたかを示すチャートです。
これを見ると、今回決算発表のあった2018年第3四半期は、前年比+27.6%という突出した成長率だったことがわかります。その反面、今後は前年比較が困難になると予想されています。
株式市場の投資家は、業績の変化率がどんどん伸びているときは強気で買い乗せするものですが、成長率が鈍化する局面では消極的になります。
実はFAANGの全ての銘柄が、このような成長率の鈍化の問題に直面しているのです。
飲料やヘルスケア、日用品のセクターが強いのは
この先、米国の景気が暗転するサイン?
さて、「相場は相場に聞け」という格言があります。つまり、株式市場の値動きをみれば次に経済で何が起こるかを予見できる、と考える投資家が多いのです。
このところの株式市場では、景気後退に強いディフェンシブ(防御型)銘柄がアウトパフォームしています。具体的には、飲料やヘルスケアや日用品などになります。これらの商品は、景気が悪い時でも売れ行きにさほど影響が出ないため、景気後退の入り口に立っている時に投資家が逃げ込み先として選ぶ銘柄です。
つまり、株式市場で人気化しているグループを見る限り、米国の景気はこれから暗転するということを語りかけて来ているわけです。
【今週のまとめ】
いつ景気後退が来ても良いように
ポートフォリオの中身を「守り型」に入れ替えておこう!
以上をまとめると、米国株式市場は二番底を固めにゆく展開であり、いまのところ「底抜け」になり、ガタガタに崩れるというシナリオは起こる可能性は低いと思われます。幸い、長期金利の低下や原油価格の下落も株式を支援しています。また経験則では11月から1月にかけては相場が強いことが多いので、「株式市場から一切足を洗う」というような戦略は思慮に欠けるように思います。
その反面、これまで「これさえ買っておけば大丈夫」と思われてきたフェイスブック、アマゾン、アップルなどの銘柄は、値動きに精彩がありません。エヌビディアのような大出世した株も過剰在庫の問題で急落を演じており、当分、出直ることは望み薄です。そんな感じで「一体、なにを買えば良いのか、わからない」という当惑が投資家の間に生じています。
企業業績伸び率がピークをつけるのであれば、いつ景気後退が来ても良いようにポートフォリオの中身をすこし「守り型」に入れ替えて見ることも良いかもしれません。
具体的には食品、飲料、日用品、ヘルスケアなどのグループになります。
銘柄でいえば、歯磨き粉のチャーチ&ドワイト(ティッカーシンボル:CHD)、低所得者向け医療保険のセンティーン(ティッカーシンボル:CNC)、医療機器のボストン・サイエンティフィック(ティッカーシンボル:BSX)、薬品のメルク(ティッカーシンボル:MRK)などに注目しています。
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