【今回のまとめ】
1.先週の米国株式市場は堅調だった
2.エネルギー、工業、素材株などが上昇した
3.その連想で、新興国株式も注目されている
4.引き締め的政策、景気後退、選挙の不透明感から、新興国はまだ買えない
米国株式市場は反発
先週の米国株式市場は、ダウ工業株価平均指数が+2.4%、S&P500指数が+2.7%、ナスダック総合指数が+2.0%でした。
セクター別のパフォーマンスを見ると石油・天然ガス、工業、素材などが強かったです。

新興国市場について
先週人気化したそれらのセクターは、新興国の株式市場で大きい比率を占めるグループでもあります。
このことから「いよいよ本格的に新興国株式が出直るのではないか?」という期待を持つ読者も多いと思います。
ただ私の考えでは新興国に本格出動するのは未だ早いと思います。
その理由ですが、まず新興国と先進国では政策金利の位置がぜんぜん違います。つまり新興国では政策金利が比較的高く設定されているということです。
下のグラフは各国の政策金利を示しています。

ブラジル、インド、インドネシア、トルコなどは去年の今頃に比べて金融が引き締められています。これはインフレの退治や通貨防衛の目的でそうなっているのです。
米国、EU、日本がゼロ金利に近い水準に政策金利をキープし、その上で更に量的緩和政策(=国債などの買い入れ)をやっているのとは大きな違いです。
また中国も比較的引き締め的な金利政策を取っており、様々な不動産バブル抑制策を行っています。
これらのことから新興国の景気はだんだん悪化しているのです。

上に掲げた全ての新興国のGDP成長率は減速しているし、予想数字は下がり続けています。
投資家はもう一年近くも新興国ファンドからお金を引き上げてきました。

つまり「ここへきて新興国にお金が入り始めている」というのは、そのような売り越しの反動の域を出ていないのです。
新興国の選挙と政策金利
興味深いことに、先進国では選挙がある年やその前年は金融緩和され、景気浮揚が試みられるというのが株式市場の常識となっています。ところが新興国の場合、有権者がインフレや貧富の差の拡大にとても敏感なので、逆に金融は引き締められる場合も多いのです。
これは新興国では株式が国民に広く保有されておらず、政府や外人の保有比率が高いことも関係しているのかもしれません。
今年、トルコは8月に大統領選挙を控えています。インドでは議会選挙が既に始まっており、各地での投票は5月まで続きます。インドネシアでは9月に大統領選挙があります。南アの総選挙は5月、ブラジルの大統領選挙や議会選挙は10月です。
このように新興国の中でも比較的大国で、なおかつ経済のファンダメンタルズの悪い国々が、こぞって選挙を迎えるわけです。
それは新興国の不確実性が一層高まることを意味しているのです。
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