米名門投信運用会社、フィデリティ投信の東京オフィスで、日本株、アジア株の株式調査部長、ファンドマネジャーとして活躍した後、40代でFIRE(早期リタイア)したポール・サイ氏。現在は、DFR(ダイヤモンド・フィナンシャル・リサーチ)アナリストとして、FIREするためのポートフォリオ作りや銘柄分析、推奨銘柄、投信の見極め方などを有料メルマガなどを通じて発信している。
このところ、投資にまつわることを中心として、私が幼い頃よりたどってきた道をご紹介しています。前回はフィデリティの日本株アナリスト時代に経験したことに基づき、海運株、化学株、銀行株のとらえ方について書きました。今回は中国株のことや私がFIREしてからのことについて書いてみたいと思います。
[参考記事]
●私の歩んできた道(1)ネットバブルに乗り、バブル崩壊前に株を売り切った! バブルを若いうちに実感できた方がいい理由とは?
●私の歩んできた道(2)9・11同時多発テロで株の暴落を経験し、株の絶好の買い時を学んだ。フィデリティ投信の入社試験でドン・キホーテを分析して合格!
●私の歩んできた道(3) アメリカの名門投信会社フィデリティで経験したシクリカル銘柄の見極め方。銀行株はもう追いかけない方がいい。その理由とは?
フィデリティ上海オフィスの立ち上げのため、上海へ赴任し、中国株調査部長に
フィデリティで日本株アナリストを務めたあと、2011年、ちょうど東日本大震災があった年、中国の上海に赴任しました。フィデリティ上海オフィス立ち上げのためです。この時は香港にいる中国株アナリストを管理する中国株調査部長になりました。
その時はちょうどフィデリティ・インターナショナルのアンソニー・ボルトンも香港に在籍していました。
彼は欧州で一番有名で、成績のいいファンドマネジャーです。欧州ではスペシャル・シチュエーションズ・ファンドを運用していました。中国に移った理由は、中国版のスペシャル・シチュエーションズ・ファンドの立ち上げ・運用のためでした。
私は中国にいる間、このアンソニー・ボルトンと密にいっしょに働きました。
(※編集部注:「スペシャル・シチュエーションズ」とは、かなりの業績不振銘柄、問題銘柄が何らかのイベントによって短期間に大きく上昇することを狙う運用戦略)
中国株には素人とプロの間に情報格差がかなりある
中国株には先進国株と違って、情報格差がまだかなりあります。
一方、米国株は情報開示のルールやさまざま規制が完備されていて、情報格差がかなり小さいと思います。なので、米国株は会社訪問などしなくても、英語さえできれば、他のプロの投資家と同じ土俵で投資できると思います。
日本株はその中間です。素人とプロの間の情報格差はまだ結構あります。たとえば、決算説明会の議事録はそこまで完備されていないです。説明資料はすべての投資家に開示されているわけでもないです。会社訪問で、会社は機関投資家だけに向けた情報を流すこともよくあります。
中国の場合、素人とプロの間の情報格差がもっとあります。
ただ、中国のIR担当者は日本のIR担当者のように、すごく細かい情報まで把握して、大きなフォルダを持って機関投資家とのミーティングに臨むようなことはありません。彼らは結構アバウトで、そこまで情報を把握していないのです。だから、中国は日本より情報の格差はありますが、素人が絶対に勝てないほどの格差でもないと思います。
中国株はガバナンスに注意! 怪しい会社がたくさんある!
ここで中国株投資をする時に注意するべき特徴的なポイントをいくつか紹介したいと思います。
(1)先ほど述べた情報格差の話ですが、中国の会社のガバナンスはかなりひどいです。アンソニー・ボルトンはある時、ガバナンスが怪しい会社を10社買いました。株価は全部安かったのです。彼は10社全部で不正があるわけでもなく、数社でも本当にいい会社があれば儲かるだろうと考えていました。しかし、なんとすべての会社が悪い会社だったのです。なので、中国株投資をするのに、ガバナンスや信用力はとても重要です。
(2)中国株は政策サイクルにすごく左右されます。中国株の直近の下落とリバウンドは政策サイクルに強く影響されています。
中国にいる間、株式分析、会社訪問以外に、採用活動やオフィスのマネジメントも結構やりました。私は日本の採用プロセスにも関わっていましたので、はっきりと違いがあることがわかりました。
フィデリティでは英語が公用語なので、英語と中国語、両方できる新卒の学生を採用したかったのです。日本では数十人の学生しか申し込んできせんでしたが、中国では1000人ほどの人たちが申し込んできました。国際競争がある中、就職についても日本の学生は負けてしまいます。
しかし、そうは言っても日本は経済大国です。労働市場の環境が悪いわけではありません。学生のみなさんに言いたいのは、英語力をつけ、海外経験を積めば、他の学生に大きな差をつけられるということです。逆に中国では、英語を話せるだけでは差別化にはならないです。
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