【個人投資家】投資歴69年・資産18億円のレジェンド投資家のトレードの流儀とは?
発売中のダイヤモンド・ザイ5月号は、巻頭でデイトレーダー・シゲルさんのインタビューを掲載。2023年11月に『87歳、現役トレーダー シゲルさんの教え 資産18億円を築いた「投資術」』(ダイヤモンド社)を刊行し、一躍脚光を浴びているシゲルさん。このインタビューでは、そんなシゲルさんの”株漬け”の日々や、トレードの流儀などについて聞いている。
短期投資派の人はもちろん、長期投資派の人にとってもためになる話が多いので、ぜひ参考にしてほしい!
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「デイトレより稼げてオモロイもんはあらへん!」
資産18億円を築き上げたシゲルさんが語る、デイトレの魅力とは?
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神戸市内のマンションの一室。真剣な表情でモニターを見つめるのは“シゲルさん”こと藤本茂さん。御年87歳、現役のデイトレーダーだ。
「デイトレード、やったことないんか? じゃあ、どうやるかアンタに見せなあかんなあ。しょうがない、15円しか上がっとらんけど、君のために2000株売ったるわ!」
そう言って、迷いなくパソコンを操作するシゲルさん。この日4880円で買い付けていた竹内製作所(6432)の株を、4895円で売りに出した。記者へのサービスで約1000万円もの資金を動かしてくれたのだ。あっという間にすべて約定(注文成立)。3万円の利益になった。
「今日は2000万円くらいマイナスや。今日は日経平均もだいぶ下がったし、しゃあないな」
大損に見えるが、シゲルさんの資産は18億円なので、全体の1%ほど。ちなみに、前日は2500万円のプラスだったそうだ。
シゲルさんは、2023年11月に著書『87歳、現役トレーダー シゲルさんの教え 資産18億円を築いた「投資術」』を出版し、話題を呼んでいる。株を始めたのは19歳のとき。ペットショップや雀荘の経営者を経て専業投資家になり、投資歴は69年になる。デイトレード歴も20年以上だ。
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「デイトレのどこが楽しいって? 自分の予想が当たってオカネが入る、こんなオモロイことほかにないやんか。それに、競馬やったら25%くらい主催者に持っていかれるやろ? 今は手数料もほとんどないし、究極のギャンブルや、デイトレは。もちろん、どの銘柄も上がるか下がるか、どのくらいの株価までいきそうか考えるから、運任せとは違うよ」
「デイトレは危険」というイメージもあり、敬遠する人は少なくない。ザイ読者も、長期投資派のほうが多数だ。だが、シゲルさんはこう語る。
「長期保有にだってリスクはあるよ。急に大きく株価が下がることもある。デイトレみたいに短期で取引を終えたほうが安全という面もあるんや。ただ、デイトレは大変よ。ホンマに疲れてフラフラになる。重労働よ。2時間山に登るより、2時間デイトレするほうがよっぽど疲れるわ」
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毎日午前2時に起床するなど、シゲルさんの生活習慣は”株漬け”!
株の研究のほか、心・技・体を整えるために体力作りも欠かさない
そう忠告するシゲルさんだが、自身がデイトレを始めたのは66歳のとき。どうやって勝てるようになったのだろうか。
「デイトレは誰にも教わってない。自然とやりながら覚えたな。頭は若いころの6割くらいしか働いとらんけど、僕は全体としては進歩しとるよ、今も。技術や経験じゃプロのファンドマネジャーにも負けへん」
その自信は「株漬け」の日々に裏打ちされている。起床はなんと午前2時! 経済専門チャンネルの「日経CNBC」や日経新聞、ネットを駆使して市況や銘柄情報を確認する。
朝食後には散歩へ。平日は40~50分、休日は2時間歩くという。「株で大事なのは『心・技・体』。健康でなければ株も続けられないから、体力をつけないとね」
午前8時には板(売買注文の一覧)を確認。取引開始前から出ている注文の状況から、その日値動きがありそうな銘柄をピックアップする。9時の取引開始の前にどれだけ準備できるかが勝負なのだ。
そして、取引終了後にはその日の取引履歴をすべてノートに記入する。
「書き終わるまで2時間かかる。大変やけど、ほかの人がやらんことをやらなきゃ勝てへん。頭に半導体とメモリでも入っとってなんでもインプットしておけたら、書かんでもええのになあ(笑)」
事前準備に時間をかけ、取引の反省を欠かさない――こうしたストイックな生活が、揺るぎない自信と驚異的なトレード成績につながっているのだ。
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バブル崩壊のときは、10億円の資産が2億円まで減ったことも!
今はテクニカル分析を駆使し、売買タイミングを決めるスタイル
ただ、昨今「デイトレードは儲からなくなった」という声も耳にする。AIやアルゴリズムによる「超高速取引」が市場を席巻しているからだ。
「僕らの注文と同時にコンピューターが注文を出してくるから、かなわんな。でも、中小型の株なら個人投資家にもつけ入るスキがある。機関投資家は時価総額が小さい株は扱わへんからな。それに、株は漬物と同じ。『浅漬け・中漬け・古漬け』がある。昨日漬けて今日食べごろの株もあれば、じっくり熟成されて食べごろになる株もあるわけや」
シゲルさんは1分1秒を争う「スキャルピング」という手法ではなく、数時間単位で取引する「デイトレード」が中心。数日間保有することも多い。常時1200銘柄を監視対象にし、その日に勝てる銘柄を選んで勝負する。臨機応変な戦い方で勝ち続けているのだ。
「僕もバブル崩壊のときには、10億円まで増やした資産を2億円まで減らした。七転び八起きどころか20回も30回も転んで起き上がっとるんや」
失敗を糧にトレード手法を確立していったシゲルさん。では、具体的な手法についても聞いてみよう。
「株は安いときに買って高いときに売る。それだけや。今の株価が高いのか安いのかは機械が教えてくれる。昔は『チャートブック』って本で見とったけど、今は勝手に更新されるから便利やで。チャートでよく見るのは『RSI』やね」
RSI(相対力指数)は、その株がいま買われすぎか、売られすぎかを判断できる指標だ。
「RSIが70を超えたら、そろそろ売ったほうがいい。逆にRSIが30以下になったら買い。特に下値の大商いは買いよ。株価が下がってるのにぎょうさん買う人がいるっていうのは、何か思惑があるんやろうからな。見る角度によって景色も変わってくるから、ひとつの指標だけで判断したらアカン。でも全部見ようと思ったら大変やから、どれかを重点的に見るようにせんとな」
デイトレードでも、決算や業績のチェックは欠かせない。
「決算にしても、いいニュースが出てからでは遅い。先に買っておかんと。それより悪いニュースのほうがオモロイ。下げすぎた株を買うんや。割安株を探すには、まず『パー』ね。PERや。あとはPBRと配当利回り。この3つが大事や」
一般的には、含み損の株は早めに手放すことが重要とされるが、シゲルさんは「損切りはしない」という。
「損切りを考えると売買の基準がブレるから『いくらに下がったら売る』みたいなルールは決めない。含み損は2億円あるけど、投資に回せる資金は十分あるからいいんや」
常識にとらわれず、シゲルさんは独自の投資スタイルを築いてきたのだ。
ところで、これだけの資産があると、詐欺まがいのオイシイ話が舞い込むことはないのだろうか?
「たまにあるけど、来たってええねん、だまされるわけないから。自分で稼げるんやから人に頼る必要がない。人の話に乗っかってしまうのは、自信のない人間やな。バフェットだって信用したらアカンで。ファンドをやっとるんやから、自分に都合の悪いことは言わん。孫正義も村上ファンド(の村上世彰氏)もバフェットも、みんな一癖も二癖もあるヤツばっかり。そういう人間が株の世界で生き残るんや」
そして「株は死ぬまでやめへんで」と語るシゲルさん。人の真似はせず、自分を信じて努力し続けることが生涯現役の秘訣なのだ。
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