1月17日前場の日経平均株価が一時1万8849.06円と、心理的節目の1万9000円大台を割り込むなど、足元の東京株式市場は調整色が強まっています。今週は、1月20日に、「米国第一」を掲げるトランプ次期大統領の就任式を控えているため、世界的に、多くの投資家は様子見スタンスを崩せないのでしょう。
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なぜなら、トランプ氏は1月11日の記者会見で、大幅な減税策やインフラ投資には全く触れませんでした。一方、貿易不均衡の相手先として、中国、メキシコ、日本を名指しして、米国の貿易赤字に強い不満を示したからです。
このため、トランプ氏が、就任演説で保護主義的な発言をするか否かに、市場は神経を尖らせています。
トランプ大統領就任後の不透明感から
世界中の投資家は様子見ムード
トランプ氏は、米通商代表部(USTR)代表に、米鉄鋼業界と近く、中国に対してダンピングの制裁措置を繰り返し求めてきた、ロバート・ライトハイザー氏を指名しました。また、ホワイトハウスに通商政策の司令塔となる「国家通商会議」を新設します。よって、米国の対中通商政策が強行になることは、ほぼ間違いなさそうです。
2015年の貿易赤字額は対中国が3670億ドルもあるのに対して、日本は689億ドル、メキシコは606億ドルにとどまっています。それでも、同盟国の日本も標的になる可能性があります。
ご存知の通り、1月11日の会見で、トランプ氏は、工場をメキシコに移転して米国に逆輸入する企業に対しては「極めて重い国境税を支払うことになる」と重ねて表明しました。現時点においては、トランプ氏のいう「国境税」の詳細は不明ですが、「米議会共和党は、輸入への課税を強化し、輸出は税を減免する『国境税』の導入を検討している」とも伝わっています。つまり、米国で「国境税」実現の確度が高まっています。
いずれにせよ、現時点において、トランプ次期政権の政策には不透明感が非常に強いです。就任演説に加え、例年2月初めまでに連邦議会に提出する、大統領自らが推し進めたい予算要求の「予算教書」の内容を見極めるまでは、引き続き、多くの投資家は様子見スタンスを崩すことはないでしょう。
無論、就任演説で不透明感が払拭されれば、その限りではありません。ただし、残念ながら、現時点では、その確率は高くはなさそうです。
日経平均株価の上昇トレンドは
「青信号」から「黄色信号」へ
なお、日経平均株価が本格的な調整入りする明確なサインは、株価指数先物・オプション16年12月物のSQ値1万8867.45円を終値で割り込むこととみています。終値でSQ値を割り込むまでは「強気」を継続し、割り込んだら「中立」または「弱気」にスタンスを引き下げるべきとの戦略に変更はありません。
ただし、テクニカル的にみて現状は、SQ値を割り込む確率は高いとみています。なぜなら、足元の日経平均株価は25日移動平均線(1月16日現在1万9262.57円)を割り込んで推移しているからです。よって、25日移動平均線を上回るまでは、SQ値を割り込む確率は低下しないでしょう。
(※編集部注:記事執筆後の1月17日終値は1万8813.53円で、SQ値を割り込みました)
ところで、25日移動平均線を下回っている理由は、「トランプリスク」以外に、メイ英首相が1月17日の演説で、EU単一市場からの撤退を表明すると複数の英メディアが報じたのをきっかけに、「英国のEU強硬離脱リスク」の高まったことが挙げられます。結果、外国為替市場では、リスク回避の円買いが加速しました。
このように、足元、外部環境の不透明感が強まったことで円高に振れているため、投資家心理が委縮しています。
前回当コラムで、「今回の上昇シリーズが終了したと感じたときは、迅速に買いポジションを縮小させるなど、リスク管理徹底してください。」と書きました。現時点では、日経平均株価は25日移動平均線を割り込んではいるものの、12月のSQ値は上回っています。このため、上昇トレンドは継続に関しては、「青信号」ではなく、「黄色信号」点灯中との認識です。
これは、1月11日のトランプ氏の会見を受け、「トランプノミクス」への期待が徐々に後退し、日米株式相場の下振れや、ドル安・円高を警戒するべき状況に変化しつつあることが主因と考えます。
日経平均がSQ値を割り込むと調整のサイン
押し目は浅そうだが外国人が売りに回ったら要注意
もし、日経平均株価がSQ値を割り込んだ場合、そのまま調整に入っていく可能性が高まります。気になるのは、どの程度の調整がくるのか、ということでしょう。
逆張り大好き個人は、日本株を一貫して売り上がっています。1月第1週(1月4日~6日)の投資部門別株式売買動向で、個人は9週連続で売り越しました。9週間の売越額は累計3兆1049億円に達しています。
また、1月第1週の新興企業向け株式市場で、個人投資家は2週連続で売り越しました。そして、個人投資家が日本株投信(追加型、上場投信を除く)の売却を進め、純資金流出入額は昨年12月、約4800億円の流出超と、14年11月以来、2年1カ月ぶりの大きさでした。
さらに、16年に日本株の最大の買い手となった日銀は、年6兆円のペースで、ETFを買い入れます。つまり、待機資金は潤沢です。
よって、調整があったとしても、押しは浅く済む可能性が高いとはみています。
ですが、外国人が継続的に売り越しに転じてきたら話は別です。ちなみに、1月第1週、外国人は2326億円買い越し、2週連続の買い越しです。
万が一、外国人が売り越しに転じてきたら、東京株式市場の下値不安が一気に高まるとみています。その場合は、日経平均株価の押しは深くなるとみておく必要があるでしょう。このため、外国人の売買動向には、これまで以上に注意を払っておくべきだと思います。
大型株より、円高の影響が少ない
内需系の指数非採用の小型株を狙え!
このように、1月11日のトランプ氏の会見以降、外部環境が悪化しているため、目先は日経平均株価に採用されているような大型株は避けるべきでしょう。
結論としては、円高の影響を受け難い、内需系の指数非採用の小型株を狙うべきだと思います。
もちろん、外国人が日本株を大幅に売り越すような状況になり、日経平均株価がナイアガラになったら、内需系小型株も無事では済まないでしょう。しかし、日経平均株価が多少調整したとしても、急落ではなく、軟調なもみあい程度なら、短期資金の買いの回転が効き、アクティブ個人の相場の体感温度が下がることはないと考えます。
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