ウォーレン・バフェットが、
自ら「死の罠」とまで言ったセクターへ投資を始める
「世界一の投資家」とも呼ばれるウォーレン・バフェットは、かつて航空会社の株を「死の罠だ」と言いました。
バフェットに限らず、多くのバリュー投資家が航空会社の株を避ける理由は、それが資本集約的、つまり莫大な先行投資が必要なビジネスであり、しかも「ジェット燃料コストが乱高下する」「旅客数が景気変動の影響を受けやすい」など、収益予想に影響を及ぼす変数が多すぎることによります。
ところが去年の後半から、バフェットは航空会社の株を買い集め始めています。
デルタ・エアラインズ(ティッカーシンボル:DAL)、サウスウエスト・エアラインズ(ティッカーシンボル:LUV)、アメリカン・エアラインズ(ティッカーシンボル:AAL)、ユナイテッド・コンチネンタル(ティッカーシンボル:UAL)などです。
先週公表された、米国証券取引委員会に対する「13-F届出書」によると、バフェットはデルタ・エアラインズの株式をさらに買い増し、6000万株、30.7億ドル相当のポジションを築いています。
つまり、色々な航空会社の株の中でも、とりわけデルタ・エアラインズに肩入れしているわけです。
デルタ・エアラインズは創業1924年
手堅い運行実績が高評価
デルタ・エアラインズは、1924年にジョージア州メイコンで創業されました。当初は旅客を運ぶのではなく、農地に空から農薬を撒く仕事をしていました。旅客を運び始めたのは1929年からです。
その後、同社は、パン・アメリカン・ワールド・エアウェイズ、ノースウエスト・エアラインズなどを買収し、大きくなりました。
同社は現在832機の旅客機を運航しており、そのうち自社所有は639機、残りはリースです。
同社は、グローバルな路線網を構築しています。ハブ空港はミネアポリス、デトロイト、ソルトレイク・シティなどにありますが、中でも本社が所在するアトランタのハーツフィールド・ジャクソン国際空港は、毎日、1038便のデルタ・エアラインズの便が離陸しています。なお、総売上高の70%を国内線が占めています。
また、飛行機が定刻通りに運行される割合、いわゆるオンタイム率が高いなど、手堅い運行実績で知られています。さらに、社員の職場に対する満足度が高いことでも知られています。
デルタ・エアラインズの業績は原油価格の下落のせい
年々増配も続く
さて、デルタ・エアラインズの業績ですが、座席稼働率は下のグラフのようになっています。
有効座席マイル当たり売上高は下のグラフの通りで、若干、下がっています。
業績の中でとりわけ目立つのは、ジェット燃料のコストが急減したことです。言うまでもなく、2014年夏以降の原油価格の下落がその原因です。
デルタ・エアラインズの売上高に占めるジェット燃料コストは、2014年の32%から2016年は15.7%に下がっています。
その関係で、デルタ・エアラインズの利益は、2015年、2016年と2年続いて高水準でした。
デルタ・エアラインズは、過去4年間に渡り、合計50億ドルの自社株買戻しのプログラムを実施してきました。このプログラムは今年の夏頃に終了します。
この自社株買戻しプログラムにより、同社の発行済み株式数は2014年の8.4億株から2016年には7.6億株に減りました。
一方、配当も年々増配しており、2016年は5億ドルを払い出しました。
自社株買戻し、ならびに配当により、フリー・キャッシュフローの7割近くを株主に還元するというのが同社の方針です。
デルタ・エアラインズは負債の圧縮にも努めており、2016年末の段階で負債対EBITDA比率は0.8倍でした。バランスシートがしっかりしているので、同社の社債は投資適格の格付けを得ています。
【今週のまとめ】
ウォーレン・バフェットが買い集めている
デルタ・エアラインズがおすすめ
ウォーレン・バフェットは航空会社の株を敬遠してきましたが、ここへきて片っ端から航空会社の株を買っています。これは異例です。とりわけデルタ・エアラインズの株を積極的に買い集めています。
デルタ・エアラインズは保守的に経営されており、運行実績も立派です。しかし業績に一番影響を与えるのはジェット燃料コストであり、それは昨今の原油安の関係で大幅に下がっています。
つまりバフェットの航空会社株への投資は、「今後も原油価格は安いだろう」ということに対する賭けに他ならないのです。
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