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カリフォルニア北部の大規模山火事により急落したパシフィック・ガス&エレクトリックは、今が買い?世間の「悪者探し」の標的になり投げ売り状態に!

2017年10月16日公開(2022年3月29日更新)
広瀬 隆雄
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カリフォルニア北部で発生した大規模山火事は
パシフィック・ガス&エレクトリックが原因?

 カリフォルニア北部で大規模な山火事が続いています。山火事が発生している場所は、アメリカ屈指のワインの産地として有名なソノマ郡、ナパ郡です。サンフランシスコから北へ車で1時間ほど走った場所です。

 今回の山火事では、これまでに死者31名、行方不明数百人が出たほか、7万7千ヘクタールが焼失し、3500戸の住宅・商店が全焼しました。

 山火事は10月8日夜に始まりましたが、この夜は特に強風でした。

 今回、山火事のあったカリフォルニア北部地方は、5月から10月まで殆ど雨が降りません。だから草木は枯れてキツネ色をしています。カラカラに乾燥しているので、ちょっとのことで山火事が起きます。

 普通、山火事の原因はキャンプファイヤーやタバコの不始末、機械の発する火花などです。放火のいたずらによる山火事も多いです。しかし今回は、同地域に電力を供給しているパシフィック・ガス&エレクトリックの電線が強風で切れ、そのスパークが枯草に燃え移ったのが原因では、という観測が出ています。

火事の原因がはっきりと判明する前に
パシフィック・ガス&エレクトリックの株価は急落

 パシフィック・ガス&エレクトリック(ティッカーシンボル:PCG)はサンフランシスコを中心とした、北カリフォルニアに電力やガスを提供している公益事業会社です。

 同社株は9月11日に今年の最高値71ドル1セントを付け、安定的に推移していたのですが、「火事の原因では?」という観測が出始めた10月12日(木)から急に下げ始め、2日間で-11ドル42セント(-16.5%)を記録しました。これは同社株にとり、過去9年で最大の下げ幅です。

■パシフィック・ガス&エレクトリック(PCG)チャート/日足・1年
パシフィック・ガス&エレクトリック(PCG)チャート/日足・1年パシフィック・ガス&エレクトリック(PCG)チャート/日足・1年(出典:SBI証券公式サイト)※画像をクリックすると最新のチャートへ飛びます。
拡大画像表示

 10月8日の夜、「強風でソノマ郡の各地で電線が垂れている」と言う報告が消防署に入り、消防車が出動しました。

 火災の原因が本当に電線かどうかは未だわかりませんし、原因究明には半年くらい時間がかかる可能性もあります。

 カリフォルニア州の法律では、電力会社は日頃から電線の保全を行うことが義務付けられており、電線に木の枝がかかると、それを払うなどし、断線の予防を指導されています。もし電力会社の過失で山火事になったときは罰金、ならびに家や事業所を失った人たちへの補償が義務付けられています

 もちろん、電力会社側は「これは天災だった」という反論をすることが出来ます。最終的には、公益事業委員会とカリフォルニア森林消防省の考え方ひとつと言えるでしょう。

パシフィック・ガス&エレクトリックは
以前にも大事故を起こした前科が

 パシフィック・ガス&エレクトリックは、2010年に、サンフランシスコから少し南下したサンブルーノで老朽化したガス・パイプから漏れたガスが大爆発し、8人が死亡、38件の住宅が焼失する事故を起こしています。そのときの罰金は16億ドルでした。

 過去にそのような事件を起こしているので、北カリフォルニアの市民がパシフィック・ガス&エレクトリックに向ける目は厳しいです。

 ある意味、今回北カリフォルニアを襲った悲劇で、住民は「悪者探し」するムードになっており、そのスケープゴートとして、日頃から余り市民から愛されていないパシフィック・ガス&エレクトリックが都合のいいターゲットにされている面もあるのです

全ての責任がパシフィック・ガス&エレクトリックに
あるとする主張にはムリがある

 10月8日夜、「電線が切れている」という通報が入った経緯から考えて、パシフィック・ガス&エレクトリックが今回の山火事の一因を作ったことは、ほぼ間違いないと思われます。

 その反面、かなり広範囲にばらけた12か所から上がった火の手の全てがパシフィック・ガス&エレクトリック1社だけの責任であり、他は関係ないというのも、かなりムリのある主張のように思われます

火事のパシフィック・ガス&エレクトリックの経営への影響は?

 パシフィック・ガス&エレクトリックは、今回のような災害に絡む訴訟に備えるため、普段から8億ドルの保険をかけています。従って罰金や補償金の全てが「持ち出し」になるのではなく、その一部は保険金から支払われることになるでしょう。

 同社は電力事業、ガス事業という公益性の高いビジネスの性格上、業績は極めて安定しています。

 従って、多額の罰金、補償金を支払うことになっても、経営自体は傾かないと思います

 現在のパシフィック・ガス&エレクトリックの配当利回りは3.67%であり、これは魅力的です。ただし、罰金、補償金が嵩んだ場合は、一時的に減配を余儀なくさせられるリスクもあります。

【今週のまとめ】
急落したパシフィック・ガス&エレクトリックは
今が仕込みのチャンス!

 今回北カリフォルニアを襲った山火事は、過去最大規模のダメージを与えました。「山火事の原因は強風で断線した電線ではないか?」という観測が流れています。苛立つ住民はスケープゴート探しを始めており、日頃から地元民に余り信用されていないパシフィック・ガス&エレクトリックに厳しい目が向けられています。

 ただ、今回の惨事の責任を、すべて同社に押し付けるのは、すこし極端だと思います。感情に任せた投げ売りが出ている同社株は、仕込みのチャンスかもしれません

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