楽天(4755)は12月14日「携帯電話事業に参入する」と、唐突に発表しました。国内の携帯電話市場は、NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクの大手三社による寡占状態が続いており、料金も高止まりしています。楽天は業界を活性化させ、価格競争を起こすことができるでしょうか? 刺激的な金融メルマガ「闇株新聞プレミアム」が解説します。
6000億円を調達1500万契約を目指すも
どんなサービスを提供するかは見えず…
楽天はこれまでも子会社の「楽天モバイル」が、NTTドコモから通信回線や設備を借り受けてサービスを提供する仮想移動体通信業者(MVNO)として、携帯電話事業に参画していました。
現在、日本にはMVNOが700社以上もありますが、楽天は11月に同じMVNOの「フリーテル」(プラスワン・マーケティングの通信事業部門)を5億円で買収して、約140万回線を抱える最大手になっていました。しかし、今回の発表は楽天が自前の周波数帯や設備を保有する「第4の通信キャリア」になるという話です。
楽天は通信規格「4G」の周波数帯割り当てを総務省に申請(これは比較的簡単に認められるはずです)して回線や基地局の整備を進め、2019年からサービスを開始するようです。楽天によると携帯電話基地局の設置工事等の設備投資のためにサービス開始時において2000億円、2025年までに最大6000億円を調達し、「1500万人以上のユーザー獲得」を目指すとしています(12月14日の適時開示文書より)。
ですが、発表後数日を経過してもわかっているのはこれだけ。大手三社の寡占状態にある携帯電話事業に参入してどのように収益化していくのか、どんなサービスを提供するのか、何よりもどれくらい電話料金が引き下げられるのかなどが、まったく伝わってきません。
楽天の2017年1月~9月期決算短信を見ると(楽天は12月決算)、営業利益が1200億円、9月末の現預金が6400億円、有利子負債が9600億円となっています。つまり、携帯電話事業を始めるにあたって「6000億円を借り入れるくらいのリスクだったら大丈夫」と考えたのかもしれません。
あるいは、三木谷社長のよくある「思いつき」なのか、楽天も「規制に守られた寡占企業になりたい」と考えたのか。いずれにせよ、用意周到に練り上げ満を持して発表した事業計画でないことは確かなようです。
凡庸な第4の携帯電話会社ができるだけか、
世界に名だたる「Rakuten」になるか!?
米国では携帯電話やケーブルテレビなど「通信インフラ企業」、放送や映画など「コンテンツ企業」、それにフェイスブックやグーグルなど「通信インフラにタダ乗りして巨額収益を稼いでいる企業」を巻き込んだ、新たな大型再編が始まっています。
AT&Tによるタイム・ワーナー買収は司法省に提訴されましたが、12月14日にはディズニーが21世紀フォックスの映画・テレビ事業の大半を負債込み661億ドル(7.4兆円)で買収すると発表しました。
どうせなら楽天も6000億円ぽっちの「携帯電話事業に参入」で終わらず、米国のような複合型情報通信メディア企業を目指したらいいのです。さしあたってはソニー・ピクチャーズを買収して、コンテンツ事業を手に入れるのはどうでしょう。
ソニー・ピクチャーズは、1989年にソニーが48億ドル(約5000億円)で買収した映画会社(旧コロンビア・ピクチャーズ)ですが、ソニーは減損を繰り返し現在の簿価は1145億円ほどになっているはずです。
2005-2009年にはTBSに敵対的買収を仕掛けてメディアを手に入れようとして失敗に終わった楽天ですが、ここで通信電話事業参入に続いてコンテンツ企業も買収すれば、大きく立ち遅れている日本の「通信・放送・メディアの大再編時代」の口火を切るプレーヤーとして世界に名を上げることでしょう。
ネイマールがいなくなったFCバルセロナに4年間で257億円も支払ってユニフォームに"Rakuten"と入れてもらうより、はるかに目立つし有意義だと思うのですが――。
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