ファイナンシャル・プランナー(FP)の花輪陽子です。これまでも日本の皆さんに向けて、シンガポールにいながらFPの活動をしてきましたが、2018年からはシンガポール在住の方々に向けても、本業の活動を始める予定です。
その一環で、「IFA(アイエフエー)」と呼ばれる独立系ファイナンシャルアドバイザー、プライベートバンカー、金融機関の方などとミーティングをする機会も増えてきました。今回は、そんな出会いを通じて実感した、シンガポールや香港で取り扱う金融商品の魅力についてお伝えしたいと思います。
日本人の資産は大部分が現金・預金だが、
海外では株や投資信託、投資型の保険を保有する人も多い
日本銀行が発表している「家計の金融資産構成」(※データは2017年3月末時点)によると、日本人の資産構成は現金・預金が51.5%、債務証券1.4%、投資信託5.4%、株式10%、保険・年金・定型保証28.8%、その他2.9%となっています。
対して、米国は現金・預金が13.4%、債務証券5.6%、投資信託11%、株式35.8%、保険・年金・定型保証31.2%、その他2.9%。
ユーロエリアは現金・預金が33.2%、債務証券3.2%、投資信託9.2%、株式18.2%、保険・年金・定型保証34%、その他2.3%です。
このデータからわかるように、日本人の資産は圧倒的に現金・預金が多くなっています。対照的に、米国では株や投資信託を資産に組み入れている人も少なくありません。また、英国などでは保険の構成割合が非常に高くなっているのですが、保険といっても保障が主目的ではなく、日本の「変額年金保険」のような投資型の商品が一般的です。
ちなみに、シンガポールでも投資型の保険が人気です。予定利率が3%以上の商品が一般的ですが、これだと大体24年ほどで元本の倍になる計算です。
日本では保険の予定利率が低下し、保険で資産形成をするのが難しくなっているので、シンガポールで注目されている投資型の保険は、とても魅力的に映ると思います。しかし、日本に住んでいる人は、原則として外国の保険を買うことができません。ただし、海外で働いているなど、日本に居住していない期間は購入できるため、帰国が決まると余ったお金で保険を買う人もいます。
日本にいながら海外投資はできるが、
海外の金融機関にわざわざ口座を開設する投資家も!
それにしても、日本と異なり、海外では預金・現金以外の金融商品が積極的に買われているのはなぜでしょうか?
もちろん、「投資教育が日本より徹底されているから」といった理由もあるでしょうが、それに加えて「金融商品のラインナップが日本と異なっている」という事情も、背景にあるはずです。
先ほど例に挙げた、シンガポールの高利回りが期待できる投資型保険もそうですが、海外には日本にない金融商品がたくさんあります。日本の金融機関を通じて買える海外の金融商品(株や国債、海外ETFなど)もありますが、日本の投資家の中には、日本では買えない金融商品に魅力を感じている人も多いです。なかには、海外の金融商品を買うために、わざわざ海外(主に香港やシンガポールなど)にわたって、現地の金融機関で口座を開く人もいます。
ちなみに、香港やシンガポールの税制は日本よりも有利だと言われます。たとえば、株式投資の値上がり益や配当収入には税金がかかりません。とはいえ、海外の金融機関で口座開設し、投資をしても、日本に居住している場合は、日本の税制に従わなければならないので、税金のお得さを享受することはできません。
香港やシンガポールの金融機関は、日本で販売されていない
超大型グローバル企業の社債などを取り扱う
海外の金融商品を現地の口座で取引する場合、個別株に関しては、日本の証券口座を通じて投資しても、現地の口座から投資しても、それほどの差はありません。
日本の金融機関と、たとえば香港・シンガポールなどの金融機関で大きく異なるのは、外国債券や外国投資信託のラインナップです。日本の金融機関が取り扱う外国債券は、米国債など限られたものだけですが、たとえば香港の金融機関では、「マイクロソフト」や「アップル」の社債なども取り扱っています。
こうした超大型グローバル企業の社債は、購入単位が1000万円~などとなっていて、かなり必要投資金額が大きくなっています。しかし、富裕層はグローバル企業の社債をポートフォリオに組み入れることが多いです。社債の場合、会社が倒産しない限りは元本が保証され、利回りが最低でも3%程度は確保できるからです。日本の低金利な預金や国債に比べると、はるかに魅力的です。
それでは、なぜ日本の証券会社には、こうした外国債券の取り扱いが少ないのでしょうか? いくつもの理由があると考えられますが、その一つは手間やコストの問題です。
一般に、債券や投資信託を購入する場合、投資家は事前に目論見書を確認する必要があります。香港やシンガポールなどは英語圏なので、英語の目論見書があればよいのですが、日本だとそうは行きません。英語の開示資料を日本語に翻訳するには、手間やコストがかかります。
これはほんの一例ですが、こうした言葉の障壁や法制度の違いなどから、日本で取り扱いづらい金融商品も、香港やシンガポールにはたくさんあるのです。また、現地通貨だけでなく、米ドルなど外貨で運用することが可能なところも、魅力の一つと言えるでしょう。
シンガポールの金融機関は非居住者が口座開設しづらい!
これから狙うなら香港の金融機関に注目を
海外の金融商品に魅力を感じた場合、日本にいながら投資するには、やはり海外の金融機関に口座を開く必要が出てきます。
しかしながら、現在、シンガポールの金融機関は、非居住者が新規で口座開設をすることを厳しく制限しています。資産を預けて運用の助言をもらったり、運用を一任したりできるプライベートバンクは、非居住者でも利用できるものの、最低預入額が億単位など、かなりハードルが高く、一般の人が利用するのは難しくなっています。
それよりは比較的ハードルが低く、日本人にとって狙い目なのが「香港の金融機関」です。日本の個人投資家で、日本語での対応を希望する場合は、新生銀行などが出資している「Nippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank(NWB)」、英語でも問題のない人はHSBC香港などを利用していることが多いです。
もし、こうした金融機関に興味を持ち、口座を開設してみたいという方は、事前にサイトで必要書類を確認してから渡航することをおすすめします。
私自身も香港で行われるNWBのセミナーに行こうと思っています。旅行も兼ねて、海外でのセミナーや金融機関の視察をしてみるのも、面白いと思います。LCCを利用すれば安価ですし、頑張れば日帰りで帰れなくもない距離です。
前述のように、今、シンガポールの金融機関は口座開設などのハードルが高くなっていますが、今後も香港やシンガポールを含む海外の金融機関や金融商品で興味深い情報があれば、随時レポートしていきたいと思います。
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