米国のトランプ大統領が中国を標的に鉄鋼アルミ関税の極端な引き上げに踏み切ってから約1カ月、中国の習近平国家主席が「対抗手段」に出ました。それは「国内市場のさらなる開放」と「輸入関税の引き下げ」というもの。世界の自由貿易を推し進める国は米国ではなくて中国!? その裏には習近平のしたたかな戦略が見えると、刺激的な金融メルマガ『闇株新聞プレミアム』が分析しています。
市場開放、関税引き下げ、人民元高で
外資を呼び込み人民元を国際通貨に!?
習近平国家主席は4月10日、国内市場を外資にさらに開放する方針を示しました。中国で証券や保険、自動車製造などを営む場合に、外資の過半出資を容認するようです。また自働車などの関税を下げて輸入を増やし、米国との通商戦争を回避する方針と見られます。
参考記事:米国の鉄鋼・アルミ高関税率導入の衝撃! トランプの俺様主義に世界が振り回される(2018年3月9日)
さらに、これはあまり報道されていないのですが、中国は人民元の対ドル相場をじりじりと上昇させています。10日現在のレートは1ドル=6.28元台。2016年11月が1ドル=6.96元、2018年初めが1ドル=6.50元ですから「元高政策」への転換は明らかです。
トランプ政権の対中(だけとは限りませんが)通商戦争は、中国企業の米国進出を実質的にストップし、輸入品には高率関税をかけて抑え込み(米国企業に代替させて景気回復を図るつもりのようです)、ドル安で貿易収支を改善させようというものです。
中国はこれを利用して投資資金を集め、関税を引き下げると同時に人民元高にして世界中から製品や資源を割安に輸入して経済を成長させようとしています。つまり米国と中国の通商戦略は、ほぼ全てにおいて正反対なのです。
平常であれば、さすがに中国も「外資の過半出資容認」「関税引き下げ」「人民元高への誘導」をいっぺんには踏み切れなかったでしょう。しかし、今回は米国(トランプ政権)が勝手に輸入制限を行い、さらにドル安政策にまで踏み切りました。中国にとってはまさに「渡りに船」だったかもしれません。
こうなると世界の企業・投資家は米国と中国のどちらに投資し、ビジネスを始めようと思うでしょうか? 為替市場だけを見ても米国はドル安政策、中国は元高政策ですから、普通の投資家であれば米国への投資を減らして中国への投資を増やそうと考えるでしょう。
もちろん、中国には政治体制に対するリスクもあるため、米国への投資が一気に中国に切り替わることはありません。それでも米国への投資が減り、中国への投資が増えることは間違いありません。中国はこの機会に「人民元の国際化」も一気に進めてしまおうと考えているはずです。
高率関税対象国でも危機感のない日本
金融緩和・量的緩和を続けていいのか!?
翻って日本はどうでしょう? 米国の高関税率(鉄鋼製品に25%、アルミニウムに10%)は今月から日本製品にも適用されていますが、政界も産業界も全く危機感がありません。
黒田総裁の基本政策も相変わらずで、2%の物価上昇目標を掲げたまま金融緩和・量的緩和を維持しています。仮に米国が「さらなるドル安政策」に踏み切れば、追加金融緩和で「さらなる円安政策」を強行してしまいそうです。
トランプ政権と真っ向から通商戦争ができないのであれば、せめて効き目がよくわからなくなった金融緩和・量的緩和などさっさとやめ、円高政策に切り変えるべきではないでしょうか。
日本の金融市場はさすがに中国の金融市場よりは進化しているため、世界から投資資金が集まるはずです。資源も政治力も乏しい日本は、少なくとも人民元より早く「円の国際化」を進め、「強い円」を武器に存在感を発揮していかなければなりません。
そこすら中国に先行されるのであれば、もうどうしようもありません。
選挙対策(中間選挙・2020年大統領選)で財政赤字が拡大しようが保護貿易だろうが後先考えずにやりたい放題のトランプと、それをしたたかに利用して世界の富を集めようと企む習近平。米中二大国の貿易戦争に乗じて存在感を発揮できるはずなのに、それができない日本……世界経済の潮流が大きく変わろうとしている今、われわれ投資家はどこに着目しどう動くべきなのか? 刺激的な金融メルマガ『闇株新聞プレミアム』は日々刻々と変わる情勢を解説しながら、読者の皆様と一緒に考えていくメディアです。
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