年明けの日経平均株価は、1万8948.58円を付けた昨年12月26日からはそれなりに回復し、落ち着いた動きなっています。
この最大の理由は、米国株式場が戻り相場に入ったことです。例えば、NYダウは1月10日まで5日続伸し、昨年12月14日以来ほぼ1カ月ぶりに終値で2万4000ドルを回復しました。
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米中貿易摩擦の後退と「パウエル・プット」の出現が
米国株にとって強い追い風に
この強い米国株の主因は大きく2つあります。一つ目は、米中貿易摩擦への懸念が後退したことです。そして、もう一つが、FRBの金融政策に柔軟性がみられたことです。つまり、「パウエル・プット」の出現です。
1月7~9日の米中次官級協議では、中国側から輸入拡大策の詳細に加え、知的財産や技術移転といった構造問題でも、米国側がある程度納得できる譲歩案を出してきたと報じられています、そして、1月中、または2月に、貿易問題を巡る閣僚協議を開く方向で最終調整に入ったとも伝わっています。実際、トランプ米大統領は「交渉は極めて順調だ」と表明していることもあり、両国間の貿易戦争休戦合意は期限内に成立するとの期待が高まっています。
一方、パウエルFRB議長は、1月10日、「我々は辛抱強く、柔軟に事態の進展を見極める状態にある」、「経済が想定外の動きをしたときに、FRBは非常に柔軟に対応できる」などと述べ、マーケットフレンドリーな柔軟な政策運営を強調しました。また、昨年12月18~19日開催のFOMCの議事要旨でも、多くの参加者が「インフレ圧力は落ち着いており、追加の政策判断を様子見する余地がある」と指摘しています。このFRBのスタンス転換は、年明けの米国株にとって「強い追い風」になりました。
「パウエル・プット」が効果を表すのは、米国市場のみ!
日本市場では、海外投資家の日本株売りが止まらない
ただし、米国の政策金利が上がらず、長期金利も低位安定するようだと、日米金利差の拡大が期待できないため、外国為替市場では対ドルでの円安が見込み難いため、対日経平均株価では、FRBのスタンス変更はそれほどポジティブな要因ではありません。あくまでも、「パウエル・プット」は米国株市場に対してのみ強力に機能します。
また、需給面では、海外投資家の日本株売りが一向に止まっていません。12月第4週(25~28日)の投資部門別株式売買動向では、海外投資家は7週連続で売り越しました。年間では2年ぶりの売り越しで、年間の売り越し額は5兆7448億円と、ブラックマンデーが発生して売り越し額が7兆円を超えた1987年以来、31年ぶりの大きさとなりました。
米国株が年明けから上昇基調なので、年明けから日本株も買い転換している可能性はあります。しかしながら、海外投資家が積極的且つ安定的に日本株を買い越してこないと、日経平均株価が力強く戻ることはないでしょう。
マクロ環境的には、中国景気が懸念材料です。1月14日に発表された昨年12月の貿易統計(米ドル建て)では、輸出額は前年同月比4%減、輸入額は同8%減でした、輸出、輸入ともに前年同月の水準を下回るのは、2016年10月以来、2年2カ月ぶりのことです。対米輸入は4カ月連続の前年割れで、駆け込み輸出が一巡し、対米輸出も9カ月ぶりにマイナスに転じました。
中国に関しては、11月の小売売上高は前年同月比8.1%増と、伸び率は前月の同8・6%増よりさらに縮小し、2003年5月以来15年半ぶりの低水準でした。内需の低迷も危惧されます。中国政策当局のさらなる内需拡大策の実行を期待したいものです。
今週、米国では決算発表シーズンがスタート!
株式市場は、主力企業の決算を見極めたいムード
さて、今後の米国株式市場ですが、主力企業の決算を見極めたいとのムードが強まる見通しです。米主要企業の四半期決算の発表が、今週から始まります。米中貿易摩擦が激化している影響や、トランプ大統領と議会との対立激化を受けた、経営者心理を確認したいとのムードが強まるでしょう。
このため、下方修正などが相次げば、米国株式市場のボラティリティーは上昇する可能性があります。そのケースでは、株価変動率が高まると自動的に持ち高を減らす「リスク・パリティ型ファンド」からの売り圧力が強まるでしょう。
逆に、ボラティリティーが上昇しないようなら、米国株式場は安定的に推移する見通しです。むろんそれは、日経平均株価にも追い風となります。
調整が続く日経平均株価に対し、
東証マザーズ指数は堅調に推移
テクニカル的に見ると、日経平均株価は25日移動平均線(1月15日前引け現在2万0733.65円)を下回っている限り、調整が続く見通しです。ただし、経験則上、25日移動平均線はけっこう簡単に上回り、結果として「ダマシ」になることが多いことには注意が必要です。
それでも、昨年10月以降、強力な抵抗として意識された10月26日の2万0971.93円付近(2万1000円アラウンド)では「売り目線」になる必要があるでしょう。この2万1000円ラインを明確に、且つ、安定的に上回るには、米中貿易戦争問題の抜本的な解決など、象徴的なイベントの発生が必要だとみています。
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一方、東証マザーズ指数の1月15日の前引けは、前日比23.09ポイント(2.59%)高の912.90ポイントと、5日移動平均線(15日前引け現在894.48ポイント)、25日移動平均線(同894.96ポイント)共に上回っています。これは25日移動平均線を下回っている日経平均株価とは対照的です。短期スタンスの個人の資金が新興市場に入っている証左でしょう。
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このようにマザーズが堅調に推移するようならば、仮に、日経平均株価の上値が重く、調整を継続したとしても、個人にとっての相場の体感温度は高い状況が継続する見通しです。
ただし、テクニカル的には、東証マザーズ指数は13週移動平均線(同914.60ポイント)、26週移動平均線(同965.78ポイント)共に下回っています。特に、ここ最近は26週移動平均線が強力な抵抗として機能していることを考慮すると、26週移動平均線付近までの戻りがあったとしたら、そこはいったん「売り目線」になる必要があるでしょう。
私は当面の日本株は調整局面とみていますので、大型株も小型株も「上がれば弱気・下げれば強気」という感じの「逆張り的な対応」を継続することが望ましいと思います。
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